2021年6月19日 (No.21080)

アルジャジーラ・モニタリング

<ニュース・ヘッドライン>

19日0600JST「ミッドナイト・ニュース」

■ イラン、大統領選挙の投票時間を延長。政府の「国家監視センター」は、有権者の参加状況を「良好」と評する

■ 米高官、「イランの新大統領が就任する前に、核合意復帰の合意を成立させたい」と述べる

■ アフガン政府、ナンガルハール州での空爆でタリバンの35人を死亡させたと発表。カタール外相は「敵対行為停止と政治プロセスへの信念が和平実現を助ける」と指摘

■ 米高官、WSJ紙に「バイデン政権は中東の防空システム配備を大幅に削減する」と明かす

<特定関心項目報道ぶり>

○ 日本関連報道

―特になし

○ イラン・イラク・シリア情勢

―イラン内務省は、大統領選挙の投票時間を2時間延長し、19日午前2時までとした。一方、護憲評議会の報道官は「投票を望む有権者がいる限り、投票所は開いているべきだ」と述べた。今回の選挙の候補者は、イブラヒーム・ライシ師(保守強硬派)、アブドルナーセル・ヘンマティ氏(穏健派)、モフセン・レザーイー氏(保守強硬派)、カージーザーデ・ハーシミー氏(保守強硬派)の4人。このうちライシ、ヘンマティ、ハーシミーの各陣営は投票時間の延長を求めていた。

―今回のイラン大統領選挙では、投票率が最大の課題となっている。政府機関「国家監視センター」所長は、投票率について「良好だ」と述べたが、具体的な数字は示さなかった。一方、護憲評議会は「投票率をめぐる非公式な数字は不正確なものだ」とし、公的機関の報告に依るべきだと声明。

―イランの複数メディアは、ライシ師の当選可能性が高いと予想し、「イラン革命防衛隊の支持を得ている」ことを理由に挙げている。一方、AFP通信は「ライシ師の勝利は政府機関への保守派の掌握を強めることになるだろう」と指摘した。

アルジャジーラ研究センター主任研究員(イラン問題専門)のファーティマ・サマーディ氏(ドーハ)の話:投票時間の延長は「投票率を50%以下にしてはならない」との政治判断からなされた。投票率53~55%だった1985、89、93年選挙の水準に近づけようとしているようだ。(有権者の本人確認を行う)機器の故障や新型コロナ感染拡大の影響で、一部投票所の受付作業に遅れが出たため、というのは副次的な理由に過ぎない。投票時間の延長によって(特定の政治指向を持たない)「灰色の有権者」が大挙して投票所に向かった場合の影響を見定めるには、まだ判断材料に乏しい。ただ、例えば2017年の前回選挙では「政治の場から排除されないよう、私たちは投票に行くべきだ」というスローガンの下で、「排除への恐れ」が灰色の有権者に投票を促した。一方、今回の選挙では、灰色の有権者の動向が、「特定の層が思い描いた通りの選挙結果」を覆えすか否かが焦点だ。灰色の有権者が投票すれば、そうした「特定の層」の意に反する候補を浮上させ、決選投票にもつれる可能性もある。

―米ニュースサイト「アクシオス」は、米高官の話として「バイデン政権はイラン核合意に復帰するための取引を6週間以内、即ちイランの新大統領が就任する前に成立させたいと望んでいる」と報道。この米高官は「イランの新政権発足前に合意できなければ、合意実現への真の疑念が生じる」「状況の打開なく交渉が長引くほど、合意成功の機はしぼむ」とみている由。また「イラン側は『大統領選挙の結果は交渉に影響しない』と言っている」とのこと。

―イラン核合意をめぐる当事国交渉で、露米の代表団がウィーンで会合した。会合後、ウリヤノフ在ウィーン国際機関露常駐代表は「難しい課題があり、まだ協議中だ」「交渉を終えるには時間が必要」と述べた。

―ガリーブアバーディ在ウィーン国際機関イラン常駐代表によると、イランの交渉責任者アラグチ外務次官とグロッシIAEA事務局長が会談、「核合意をめぐる交渉の進展状況や、この交渉にIAEAが提供し得る支援」について協議した。IAEAとイランは先に、イランの核施設への査察を行える期間を今月24日まで延長することで合意している。

○ サウジ・イエメン・湾岸情勢

―米紙WSJは、国防総省高官の話をもとに、米はイラク、クウェート、サウジ、ヨルダンなどの中東諸国から防空システム「パトリオット」8基を撤収すると報じた。また、サウジから高高度防衛ミサイル(THAAD)を引き上げ、中東地域に配備する戦闘機数を削減し、これらの運用に関わる兵員数百人の再配置を行う由。この軍事装備の引き上げの大半はサウジが対象で、中露への対応のために他地域に再配備されるといい、その旨は今月2日の電話会談で米国防長官がサウジ皇太子に伝えたという。

○ エジプト情勢

―マフディ・スーダン外相は、「スーダンとエジプトは、ルネッサンス・ダムの貯水と運用について、包括的で法的拘束力のある合意が必要だとの見解で一致した」と述べた。また外相は(エチオピア、スーダン、エジプト)3か国それぞれの立場に触れつつ「ダム問題での軍事的選択は拒否する。政治的解決が望ましい」とした。

―メコネン・エチオピア副首相兼外相は、「エジプトは現状、公正さと事実の受け入れを拒み、何としてもルネッサンス・ダムの建設を止めようとしている」「エチオピアの敵は、虚偽のニュースや憶測を流し、ダムを完成させまいと努めている」と述べた。

○ 中東和平(占領地情勢)

―イスラエル軍は18日、エスサレムのアルアクサー・モスク敷地に侵入し、礼拝者に発砲する等してパレスチナ人複数を負傷させた。また、モスク敷地から出ようとした若者複数を拘束。この侵入と弾圧は、15日の「旗の行進」の際に入植者がイスラム教の預言者ムハンマドを侮辱したことへの抗議の行進がモスク敷地を起点として始まった直後に起きた。この抗議の行進が呼びかけられたため、イスラエル軍は警戒を強め、エルサレムで部隊を増強していた。

―「紛争地で子供の権利を侵害している国・組織」についての国連の最新報告は、西岸、東エルサレム、ガザ両地区での2020年の子供の人権侵害の大半がイスラエル軍によるものだった指摘。イスラエルに「過剰な武力行使を防ぐ措置を講じるべき」「子供の行政拘禁を止めるべき」と促した。それにも拘わらずグテーレス事務総長は、イスラエルをこの問題で「ブラックリスト」に掲載しないと判断。一方、「子供250人を死傷させた」イエメンのホウシー派、ミャンマー軍、シリア軍などはリストに掲載される。

○ 国際テロ・過激主義情勢

―アフガニスタン軍は18日、東部ナンガルハール州で行った空爆でタリバンの幹部・戦闘員35人を死亡させたと発表、映像を公開した。「戦闘員の潜伏先、大量の武器を破壊した」という。タリバンはコメントしていない。この3週間で、タリバンは国内北・西部の数十地域を制圧。政府はここ数日で4地域を奪還した。両者の戦闘は、米軍等の外国部隊の撤退開始後、激化している。

―ムハンマド・カタール外相は、「アフガン危機における我が国の仲介目標は、停戦、アフガンの将来をめぐる当事勢力の合意、権力の分有の実現だ」とし、「敵対行為の停止、政治プロセスへの信念が和平実現に資する」と呼びかけた。また「不幸なことに現時点では大きな進展はない」と語った。

○ マグレブ情勢

―特になし

○ トルコ情勢

―特になし

<その他の重要ニュース要旨>

―特になし

エリコの目

―イランのアフマディネジャド元大統領と最高指導者ハメネイ師の間の「論戦」が注目されている。護憲評議会によって立候補を却下された元大統領は、「選挙は信頼性を欠いており、国家を弱体化させる、投票には行かない」と述べた。英デイリーテレグラフ紙が報じた。これに対し、ハメネイ師は「棄権は裏切り」であり、「不投票を煽る者はイスラム政府を弱体化しようとしており、国をテロリストの広場にする」と反論した。(アラビー21)

أحمدي نجاد يهاجم الانتخابات الإيرانية.. وخامنئي يرد - عربي21
في تبادل كلامي بين الرئيس الإيراني السابق محمود أحمدي نجاد والمرشد علي خامنئي، بسبب موقف الرئيس السابق من الانتخابات التي بدأت اليوم الجمعة، نقلت صحيفة "ديلي تل...

中東の新型コロナ動向

―アブダビ政府は17日、新型コロナの早期段階における治療薬であるソトロビマブが入荷したと発表した。ソトロビマブは、新型コロナウイルスのヒト細胞への結合と侵入をブロックする効能のあるモノクローナル抗体薬で、初期のステージにある患者の入院・死亡を85%以上防ぐ治験結果が得られている。アブダビは、米食品医薬局がGSK社の同薬を緊急承認した後、独自の承認手続きを経て契約した。UAEの患者は、世界でも最も早く、この薬による治療を受けることが可能となる。(アッシャルク・アルアウサト紙)

أبوظبي تتسلم «سوتروفيماب» لعلاج «كوفيد ـ 19»
أعلنت أبوظبي، أمس، تسلم عقار «سوتروفيماب» لعلاج حالات معينة من الإصابة بفيروس «كورونا» في مرحلة مبكرة.
<特記事項・気付きの点>

―特になし

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