2021年6月24日 (No.21085)

アルジャジーラ・モニタリング

<ニュース・ヘッドライン>

24日0600JST「ミッドナイト・ニュース」

■ リビアをめぐる国際会議で、独とリビアは「外国部隊・傭兵の撤退問題での進展」を強調。リビア首相、「国内の対立が選挙実施の妨げになる」と警告

■ タリバン、アフガンの郡レベルで20%を制圧。米情報機関は「米軍撤退後6か月でアフガン政府崩壊の可能性がある」と評価

■ イラン核合意再建をめぐり、仏は「困難な決定」に言及。露は「数日内の状況打開があり得る」と楽観

<特定関心項目報道ぶり>

○ 日本関連報道

―特になし

○ イラン・イラク・シリア情勢

―バエジ・イラン大統領首席補佐官は、24日に期限を迎えるIAEAとの暫定査察受け入れ協定について「イラン国家安全保障最高評議会が延長の可否を判断する」と述べた。一方、リステール仏対外貿易担当相は「(核合意再建を目指す)ウィーン交渉で近く結果が出なければ、仏は難しい決定をすることになる」と述べた。リャブコフ露外務次官は「(ウィーン交渉の妥結までの)プロセスに要するのは、数か月ではなく数週間だ」「必要な決定が全て下され、最後の飛躍が実現すれば、技術的には数日内に全てを終わらせることが可能」と述べた。

○ サウジ・イエメン・湾岸情勢

―UAEが支援するイエメンの「南部移行評議会(STC)」に属する治安部隊同士がアデンのシェイク・オスマーンで衝突し、兵員2人が死亡、民間人を含む5人が負傷した。中程度の火器が用いられ、軍事車両が炎上、周辺の建物にも被害が出た。消息筋によれば、「第3旅団」が、「治安ベルト部隊」の拠点で拘束されている兵員の解放を図ったのが衝突のきっかけ。

―サウジ率いる「アラブ同盟軍」は、「ホウシー派がサウジ南部に向けて放った爆弾搭載ドローン4機を撃墜した」と発表した。一方、ホウシー派は「同盟軍がジャウフ県とマアリブ県で計15回の空爆を行った」と発表。

○ エジプト情勢

―シーシー大統領は23日、ウマル・シャルビーニー氏を在カタール特命全権大使に任命した。エジプトの在カタール大使任命は、2017年6月にエジプト、サウジ、UAE、バーレーンがカタールと断交して始まった湾岸危機以来。湾岸危機は、今年1月のサウジ・ウラーでの湾岸首脳会議でカタール封鎖を終わらせる和解協定によって幕が引かれた。以降、エジプト・カタール関係では前向きな動きが続いていた。

○ 中東和平(占領地情勢)

―特になし

○ 国際テロ・過激主義情勢

―オースティン米国防長官は下院軍事委員会で、「タリバンの攻撃が米軍のアフガン完全撤退を脅かすことはない。安全で秩序立った責任ある撤退に集中する」と述べた。また「タリバンは(州に次ぐ行政単位である)郡の20%を支配しているが、大都市は抑えていない」としつつ、「タリバンは最近アフガン各地で更に大きな戦果をあげた」とした。

―ミリー米統合参謀本部議長は上記委員会で、「米軍のアフガン撤退後の最も悪いシナリオに、内戦が勃発し、アフガン政府が崩壊し、政府や軍が分裂することがある」と述べた。また、タリバンによる一部地域の制圧に懸念を示し、「米軍は状況を注視している」「アフガン防衛の任はアフガンの軍と警察にある。彼らは30万の兵員を擁している」と語った。

―米紙WSJは、米情報機関の評価として、「米軍のアフガン撤退完了後6か月や1年でアフガン政府が崩壊する可能性がある」と報じた。この評価は「先週タリバンがアフガン北部で数十地域を制圧し、複数の都市を包囲したのを受けて情勢の見直しを行った結果」だという。それによるとタリバンは現在、北部のタジキスタンとの主要国境を掌握、マザリシャリフ市近郊に迫り、クンドゥズ市で政府軍と対峙。「タリバンの攻勢に懸念を持った米大統領府は、米軍に撤退ペースを遅らせるよう求めた」という。

―サキ米大統領報道官は、「アフガン政府軍が米軍撤退後6か月で崩壊し得る」とのWSJ紙報道へのコメントを拒否。「米軍の撤退期限が変わるとは予想していない」とし、「それは米とアフガンの両大統領間での検討事項になるだろう」と述べた。また「米軍はアフガン撤退を始めていなければ攻撃に晒されていた、というのが米政府の見立てだ」と語った。

―米中央軍は、アフガンの軍事施設6か所をアフガン国防省に引き渡したと発表した。「米軍はアフガン撤収プロセスの50%を完了した」「アフガン軍による国の安定実現と防衛を支援すべく、今後さらに基地や軍事装備の引き渡しを行う見通しだ」という。

―ペスコフ露大統領報道官は、アフガンからの外国部隊の撤退に伴う緊張の高まりに懸念を表明。「露はアフガンの展開を注視している」「アフガンに新たな緊張地点が表れ、露と同盟諸国は懸念を有している」と述べた。また、ショイグ露国防相は「NATOの撤退後、アフガンで内戦が再発する恐れがある」と指摘した。

元米国防長官補佐官ハーラン・アルマン氏(ワシントン)の話:米とNATOには(撤退の)他に選択肢は一切ない。たとえ最小限の部隊をアフガンに残しても、アフガン政府の安定を維持できるかはわからない。ガニ政権は分裂状態であり、ガニ大統領はアブドラ(国家和解高等評議会議長)との間で、諸事をうまく管理できていない。また、カルザイ元大統領も政治力を維持している。ガニ=アブドラ体制は今後半年から1年で崩壊し得る。この中央政府の失敗に伴い、各地の権力者が独自行動を始めれば、統治は困難になる。その一方、タリバンも一枚岩ではない。もともと各地域や部族の自立性が強いアフガンでは、タリバンが広範囲を軍事制圧しても、直ちに国が統一されることはなく、内戦に至る可能性もある。米は、20年前にアルカイダを駆逐してビンラディンを司法の場に引き出そうと介入し、アフガンでの「共同体の構築」に踏み込んだ。米はアフガンの社会や文化、政治を理解しておらず、アフガンに存在したことのない強力な中央政府を打ち建てることができると考えたからだ。その結果、ベトナムと同程度の時間を費やしたあげく事態は悪化した。前提が間違っていた米の戦略は変化し、アフガン人は今も悲劇の渦中にある、との認識だ。

○ マグレブ情勢

―リビアをめぐる国際会議「ベルリン2」が23日に開かれ、15か国と4つの地域・国際機関が参加した。マース独外相は会議後の記者会見で、「(リビアで対立勢力をそれぞれ軍事支援する)トルコと露の間には、均衡を維持しつつ段階的に部隊を撤収するという共通認識がある」「外国部隊の撤退は一朝一夕には成就しない。一歩ずつ実現する他ない」と述べた。一方、マングーシュ・リビア外相は「外国傭兵の問題では、進展がある。近く、争い合う双方が撤退すると期待している」と述べた。

―ドゥベイバ・リビア首相は「ベルリン2」の冒頭、「国内の対立や目先の利益が(大統領・議会)選挙に向けた歩みを妨げている」としつつ、「政府としては、最良の状況で年末に予定通り選挙を実施したい」と強調した。

―「ベルリン2」は(2020年11月にチュニジアでのリビア政治対話フォーラムで合意された)「ロードマップを順守する必要がある」との閉会声明を発表。「今年12月24日に選挙を実施して全勢力がその結果を受け入れること」「チュニジアで合意した制憲・立法の手続きの適用」「全ての外国部隊と傭兵の遅滞なき撤収」「複数ある治安部隊の統合」「リビア全土への公正かつ透明な富の分配」「人権に基礎を置いた移行期正義と国民的和解への歩みを始めること」を呼びかけた。

○ トルコ情勢

―米国防総省筋は、「国防総省と国務省の高官からなる代表団がカブール国際空港の警備に関して、24日にトルコで協議を行う」と明らかにした。「米・トルコ大統領のカブール空港をめぐる原則的な合意や、後者による『トルコ軍が米・NATO撤退後にカブール空港の安全を提供する』との約束について、細部を協議する」「トルコ軍によるカブール空港警備のために米が提供できる支援について議論する」という。

ワシントン特派員の話:米・トルコ大統領が、「トルコによるカブール空港の警備」で合意した後、両国の国防相がこの問題を協議していた。今回の米代表団のトルコ訪問では、合意履行に向けた具体的な手続きを詰める。トルコによるカブール空港警備に際しての米からの支援については、資金提供を含む10以上の項目が検討課題にあがっている。米は「外交団を守るための部隊を除いて、米とNATOは全ての部隊をアフガンから引き上げる」と繰り返している。その外交団の維持や警備に不可欠となるのが、カブール空港で、その警備をトルコが担うという。米側では「25日にも空港警備をめぐる具体的な合意を発表できる」との楽観がある。

<その他の重要ニュース要旨>

―特になし

エリコの目

―イランのライシ新大統領は経済危機とこれに伴う市民の抗議・社会混乱に直面する可能性が高い。米国による制裁の解除は最大の急務であるので、核合意復帰への交渉には(強硬姿勢とは裏腹に)前向きに取り組むだろう。最高指導者ハメネイ師の後継者と目されるが、経済危機からイランを救えない限り、将来は暗い。(アルアラブ紙)

Just a moment...

中東の新型コロナ動向

―サウジアラビアでは、新型コロナ新規感染者数が増加傾向にある中、年末までに全人口の70%のワクチン接種率を達成すべく、全国500カ所を超える接種センターを通じたワクチン接種に力を入れている。22日、新規感染者数は1,487人と、前日より18%増加した。同国では年初の数値は100人前後であったが、その後漸増を続けている。現在感染者数(アクティブ・ケース)も漸増している。(アッシャルク・アルアウサト紙)

ارتفاع إصابات «كورونا» في السعودية 18% خلال 24 ساعة
وسط التزايد المتصاعد لأعداد المصابين بكورونا «كوفيد - 19» في السعودية، تعمل وزارة الصحة على زيادة عدد الجرعات المعطاة عبر أكثر من 500 مركز للقاح في المناطق كافة...
Saudi Arabia COVID - Coronavirus Statistics - Worldometer
Saudi Arabia Coronavirus update with statistics and graphs: total and new cases, deaths per day, mortality and recovery rates, current active cases, recoveries,...
<特記事項・気付きの点>

―特になし

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