アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
30日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ イラク国家安全保障補佐官、「外国の戦闘部隊は必要ない」と述べる。米は「イラク政府の要請に基づく駐留」を改めて強調
■ レバノンの危機が深まる。燃料が著しく不足し、35%の価格引き上げを実施。最高国防会議は、道路封鎖などの「不安定化行動」に警告
■ イスラエル、UAEに大使館を開設。パレスチナ大統領は「正常化合意は幻想であり、成功しない」と述べる
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―イラクのアアラジー国家安全保障補佐官は(シリアとの国境地帯で今月27日に)米軍の空爆で死亡したイラクの武装組織の隊員たちのためのバグダッドでの葬列に参加し、「政府は、駐留外国軍の撤退日程の設定を求めた国会決議を堅持する。我々に外国軍の攻撃部隊は必要ない」と述べた。米は、この武装組織が「親イラン」で、「イラク駐留米軍に対する攻撃に関与した」としている。葬列では「米国への復讐」を求める怒りの声が上がった。イラク政府は「主権侵害」だと非難した今回の空爆につき調査を行うと決定。
―カージミー首相の指示で設置された、米軍の上記空爆についての調査委員会が、シリアとの国境の町カーイムに向かった。空爆を受けた人民結集部隊(PMF)の隊員たちが、イラク領内で死亡したのか、シリア側だったのかを調べる。
―米国防総省は、「米軍はイラク政府の要請に基づき駐留している。その目的は一つで、IS(イスラム国)排除のためのイラク軍支援だ」と声明。また「米大統領は、イランが支援する組織によるイラクでの対米攻撃を抑止すべく、さらなる軍事作戦の実施を指示した」とした。
関連レポート要旨:27日の米軍の空爆による死者の葬列は、PMFの隊員や支持者に加え、政治家や政府高官ら数千人が参加。「対米報復」が叫ばれ、昨年1月のソレイマニ(イラン革命防衛隊コッズ部隊司令官)殺害事件の当時を思い起こさせた。参加者は、「手をこまねいてはいない」と繰り返す一方、「繰り返される米国の逸脱、犯罪行為に対する国際社会の介入」(今回空爆されたPMF第14旅団の司令官)も求めた。ただ、空爆の直後に「明らかな主権侵害だ」と批判したイラク政府は、事態をエスカレートさせないよう呼びかけ、「再発を防ぐために調査、連絡を行う」としている。米軍の空爆への反発が止まない中、イラク政府高官は「首相は近く行う訪米で、米軍撤退の日程設定について改めて協議する。この問題で米イラクの対話は進展している」と述べた。
―レバノン・エネルギー省は、著しい燃料不足が続く中、価格を35%引き上げた。一方、最高国防会議は、暮らしの悪化を受けた(抗議の道路寸断など)「不安定化行動」を容認しないよう治安機関に求めた。アウン大統領は「意見表明の権利は皆に保証されるが、それが混乱や暴動に転化してはならない」と述べた。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―イエメンのホウシー派の軍事報道官は、「マアリブ県の政府軍のサハン・ジン駐屯地と(マアリブを含む)第3軍管区に対して弾道ミサイル2発による攻撃を実施した」と述べた。
○ エジプト情勢
―エジプト議会は、「テロ組織であるムスリム同胞団に所属する者を公職から追放する」ことを認める法案に原則同意した。「大統領または大統領に委任された者が、職員の解雇の可否を最終決定する」という。法案成立には、司法機関「国家評議会」の違憲審査を経て、議会が再度可決し、大統領が承認することが必要。
○ 中東和平(占領地情勢)
―イスラエル軍は、エルサレムのシルワーン(シロアム、旧市街の南にある町)で、パレスチナ人の抗議参加者をゴム弾や音響弾を用いて排除した。シルワーンのブスターン地区のパレスチナ人の住宅20軒超に「無許可建築」だとして取り壊し命令が出て、これに抗議する住民や支持者数十人が座り込んでいた。
―上記に先立ち、イスラエル軍はシルワーンのスウェイヤハ地区で、パレスチナ人男性が所有するアパートを「無許可建築」だとして取り壊した。その際、住人にゴム弾を使用した上、殴って6人を負傷させ、近親者の4人を拘束した。また、ブスターン地区でもパレスチナ人男性所有の商店を重機で取り壊した。
「住宅取り壊し命令」を受けたシルワーンの住民男性クタイバ・アウダさんの話:1967年の占領以来、多数のパレスチナ人が受け取った「警告書」が、イスラエルのエルサレム市当局から自分にも届いた。シルワーンは今も、人道に反する強制退去・民族的浄化の危機にある。市当局は「無許可建築」を取り壊せというが、パレスチナ人には何らの(建築許可)割り当ても与えないで、ユダヤ人には倍以上の割り当てを与えて入植させている。
シルワーンの町は、アルアクサー・モスクに至る旧市街マガーリバ門(糞門)のすぐ南という極めて重要な場所にあり、パレスチナ住民約7千人が住む。その町のブスターン地区や、アルアクサー・モスクに至る地下トンネルが通るワーディ・ヘルワ地区(イスラエルは、かつて「ダビデの町」があったとみなす)などで、住民を追い出そうとしている。
ブスターン地区では2004年以来、124家族・約1,500人のパレスチナ住民が強制退去に脅かされてきた。家屋取り壊しの口実は(ユダヤ人にまつわる遺構などを保存する)「トーラー公園」とも呼ばれる公園整備のため、というものだ。「21世紀も『ナクバ』は続いている。我々が土地の持ち主だ、ここで生きるために抵抗する、自らの手で住宅を取り壊すことはしない」というのが我々の訴えだ。(家屋取り壊しの対象とされた住民2人とドーハのスタジオをつなぎ、中継で10分にわたり訴えを聞いた)
―在UAEイスラエル大使館がアブダビに開設された。2日間のUAE訪問中のラピド外相は、大使館の開設式で「歴史的瞬間だ。民衆こそが歴史をつくることを思い起こさせる。イスラエルは全ての隣国との和平を意図する」と述べた。外相はドバイのイスラエル領事館の開設式にも出席し、経済協力協定に署名する予定。
―アッバース・パレスチナ大統領は、録画演説で「(イスラエルと複数のアラブの国が結んだ)正常化合意は幻想であり、成功しない。平和や安全は、イスラエルの占領終結によってしか実現しない」と述べた。また「パレスチナ人はいわゆる『世紀の取引』を失敗させた」と語った。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―ムハンマディ・アフガニスタン国防相は、治安状況の評価のためにワルダク州を訪れた際、「交渉こそが理想的な解決だ」と述べた。「タリバンは武力でアフガンを支配できない。各地で民衆蜂起に直面するだろう」と述べた。政府軍報道官は「駐留外国軍の撤退開始後、大きな治安上の穴が生じた」としつつ、「政府軍はタリバンに立ち向かえる」と述べた。一方、タリバン政治事務所のナイーム広報担当は、「政府側の交渉団は、一部がアフガン北部の戦闘現場に行ったために人員が揃わず、会議に参加して来ない」と述べた。
―タリバンは29日、中部ガズニ市(カンダハルとカブールの間に位置)に複数の方面から攻撃を仕掛け、政府軍と交戦した。政府高官は「軍は失地回復を試みている」と述べた。国防省報道官は「ガズニの若者は武器を取って対タリバン戦に加わった。武器を取ることを望むアフガン人は、軍の地方部隊に組み込まれる」と述べた。ガズニの一帯でタリバンは数年来、強い勢力を有する。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―新彊地区でウイグル族を弾圧し、中央アジアに一帯一路政策を進める中国は、今後、イスラム聖戦主義者の「第一の敵」と認識され、国内外で中国権益がテロ攻撃の目標となる可能性がある。(アルアラブ紙)
中東の新型コロナ動向
―サウジアラビア保健省は、年齢12-18歳のグループに対し、ファイザー社製ワクチンの接種を開始すると発表した。同国では成人人口の70%が新型コロナ・ワクチンの接種を済ませており、接種者割合を拡大することで社会的な免疫達成を狙う。また、同国では8月1日から2年ぶりに学校が「登校授業」となるため、生徒の間での感染拡大を防ぐ狙い。(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―特になし