アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
2日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ エジプトが国連安保理にルネッサンス・ダムに関する緊急会合の開催を要請したことを受け、エチオピアは「同問題の付託は国連憲章に反する」と指摘。仏国連大使は「安保理は同紛争解決に最適な場所ではない」と述べる
■ EU、イラン核合意をめぐるウィーン協議が失敗する可能性を警告。露は「イランと米の同合意への復帰を調整する可能性をめぐり大きな進展があった」と強調
■ 米国務省、「米はアフガニスタンでの責任を放棄するつもりはない」とし、「力によって樹立される政府は受け入れられず、正統とはみなされない」と指摘
■ 国連、ジュネーブでのリビア政治対話フォーラムを1日延長し、「12月の選挙実施以外にリビアの統一と安定を実現する手段はない」と強調
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―EU国連大使がイラン核合意をめぐるウィーン協議の時間切れと失敗の可能性を警告したのに対し、露は、同協議でこれまでに実現した成果に満足を示しつつ、「米バイデン政権がイランに対する圧力政策を止めていない」と非難した。露外務省は、「イランの核開発をめぐる包括的共同行動計画の実施が、署名から6年となる今月14日までに再開されることを期待する」と表明。ザハロワ同省報道官は「ウィーンでの3か月にわたる協議で大きな進展があった」と強調した。
米国務省諮問委員会メンバーのジョセフ・シリンシオーネ氏の話(ワシントンから):(イランはバイデン政権に「今後結ぶいかなる合意からも離脱しない」という保証を求めているが、米にはこうした保証をする用意があるか、との質問を受け)イランが保証を求めるのは非常に妥当なことだが、米側にはこうした保証を提供する手段はない。なぜなら新たな政権が発足すれば、その政権には常に前大統領が結んだ合意から離脱するという選択肢があるからだ。これは残念なことであり、協議における難しい問題となる可能性もあるが、米がこうした保証を提供することはできない。これがウィーン協議が失敗する可能性がある1つの理由だ。もう1つの理由は、イラン新政権の明確な立場だ。同政権は「今回の合意がイランと米の間の最後の合意となる」としている。ライシ新大統領は「ミサイル問題や地域の民兵組織への支援については交渉しない」と断言しており、これが米にとって単一の核合意への復帰を魅力に乏しいものにしている。
―ロイター通信が欧米外交官の話として伝えたところによると、イランは、IAEAの査察官らがナタンズの主要なウラン濃縮プラントに入ることを制限した。今年4月の施設攻撃を受けての「安全上の理由」としている。外交官らは、「数週間前から対立が続いているが解消に向かっており、来週には完全な形で入ることができるようになるだろう」との見通しを示した。同通信は、「核合意の復活に向けたイランと米の間接協議が再開の日程も定めずに延期されたことと共に、この対立が欧米諸国との間の緊張を高めた」と報じた。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―エジプトは、国連安保理にエチオピアのルネッサンス・ダムをめぐる問題について協議する緊急会合の開催を要請し、「エチオピアのはぐらかしと一方的な措置」の深刻な影響を警告した。エジプト外務省は安保理に宛てた書簡(先月25日に送り、今回内容を明らかにした)の中で「国際的な平和と安全に対する差し迫った脅威をもたらす状況となっており、安保理はこの問題を直ちに協議する必要がある」として、安保理に「この問題の公平な解決を保証する適切な措置を検討するよう」促した。
―上記を受け、7月の安保理議長国である仏の国連大使は「同ダムの問題はエチオピア・エジプト・スーダンの間の問題であり、3か国間の協議を再開させるべきだ」と述べた。同大使は「安保理にできることは、3か国に交渉の席に戻るよう呼びかけることだけだ。安保理には各国が得るべき水量を決めるための経験がないと思われる」とした上で、「来週に同ダムをめぐる安保理会合が開かれる可能性が非常に高い。これには関係閣僚が出席するだろう」との見通しを示した。
―ラブロフ露外相は、「露は、ルネッサンス・ダムをめぐる対立を友好的に解決し、全当事者を納得させる合意に至ることを支持する」と確認した。これより先に、マハディ・スーダン外相は、露外相との電話会談で「スーダンは、一方的に同ダムの貯水を進めないようエチオピアを促すために、安保理での露の支援を期待する」と述べ、同ダムをめぐる交渉に対するスーダンの立場や緊急安保理会合開催要請の理由について説明していた。
―エチオピア外務省は、「ルネッサンス・ダムをめぐる問題を安保理に付託することは、エジプトとスーダンが引き合いに出した国連憲章に反する」とし、「同ダムをめぐる両国との対立は、現在行われている交渉を通じて解決することができる」との見方を示した。
―ディナ・エチオピア外務省報道官は、「エチオピア軍のティグレ州からの撤収は、ルネッサンス・ダムを狙った外国の脅威に対処するための行動の一環だ」「エチオピア政府は、同ダムの安全確保に努力を向けると決定した」と述べ、「同ダムの貯水の第2段階を妨害しようとする外国の動きがある」と指摘した。
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―プライス米国務省報道官は、「アフガニスタンで力によって樹立される政府は受け入れられず、正統とはみなされず、国際社会からの支援を得られないだろう」とし、「米はアフガン国防軍と治安部隊に対する支援を継続するつもりだ」と表明した。また、「トルコはアフガニスタンに関しては非常に建設的で有益なパートナーだった。また同国はNATOの重要な同盟国だ」とし、「バイデン大統領は先にエルドアン・トルコ大統領と会談する機会を得て、アフガニスタンにおけるトルコの役割について協議した」と述べた。更に「アフガニスタンに駐在する米国人外交官らを守るために、米兵の残留は不可欠だ」「米はアフガニスタンでの責任を放棄するつもりは決してない」と強調した。
―露外務省は、「露は、アフガニスタンでのタリバンによる攻撃の深刻さを誇張するつもりはない」と確認した。ザハロワ同省報道官は「アフガニスタンでの戦闘の季節は終わるだろう。その後には、当事者らは同国の将来に関する前向きな真の対話を開始する準備ができているだろう」と述べた。
○ マグレブ情勢
―クビシュ国連リビア特使は、ジュネーブで開かれているリビア政治対話フォーラムを(2日まで)1日延長すると発表した。今年末に予定される選挙(総選挙と大統領選挙)や同選挙実施のための憲法上の根拠などをめぐる意見の対立を解消する機会を与えるため。同特使は「国際社会は、今年12月に予定される選挙の実施を通じて以外にリビアの統一と安定を実現する選択肢はないと見ている」と述べ、「それを可能にする憲法上の根拠をめぐる合意に至ることに重点を置くよう」呼びかけた。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―イスラエル警察の匿名の高官がイスラエルTV「12チャンネル」に述べたところによると、(今年に入って現在まで46人のイスラエル・アラブが殺害されているが)アラブ人犯罪組織・暴力団のほとんどは情報機関「シンベト」に協力している。協力することで、彼らの犯罪がイ当局に摘発されることを防いでいる由。アラブ側によると、イ警視総監は先日も「アラブ人が民族的動機で犯す犯罪を取り締まる手段が限られている」と述べたが、累計46人の死亡について、ほとんどきちんとした捜査が行われていない。(アラビー21)
中東の新型コロナ動向
―トルコでは、デルタ型等変異株の感染が拡大しているが、1日よりこれまでの生活上の制限措置(ロックダウン)が解除される。トルコでワクチンの2回接種を済ませた人数は150万人を超えた程度であるが、政府は犠牲祭(7月20日)までに人口の7割が少なくとも1回のワクチン接種を受けることを目指している。制限解除で、映画館・劇場等の営業が許され、飲食店も深夜12時まで営業できる。また、都市間の移動も事前許可が不要となる。(アッシャルク・アルアウサト紙/エリコ注:1日の新規感染者数が6万人を超えていた4月中旬のピークからは相当に改善したものの、依然5,000人を超える新規感染者を記録している上、これが下げ止まって上昇に転じる危険がある中での政府決定。)
<特記事項・気付きの点>
―特になし