アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
1日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ 国連リビア調整官、「政治対話フォーラムは、選挙実施のための憲法上の根拠について合意できなかった」と述べる
■ アフガンの米・NATO部隊、20年間のバグラム基地駐留を終える。タリバンは歓迎
■ 露、「米は、イランに新たな義務を課そうとしている」と非難。米財務省は、「ウィーン協議とは関係なく」イラン人3人の制裁を解除
■ エジプト、「ルネッサンス・ダムの危機が続き、水資源が不足すれば、欧州に移民の波が押し寄せる」と警告
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―ラブロフ露外相は、イラン核合意の再生を目指すウィーンでの協議について、「多くの点で合意した。前向きに評価している」と述べた。また「ウィーンで交渉している西欧諸国は、現在の状況に乗じて核合意の項目を変更しようとしている。核開発だけでなく別の問題でも、新たな義務をイランに課すためだ」と指摘。「変更を加えることなく従来の核合意に戻るべきだ」と語った。
―米財務省は、対イラン制裁の対象からイラン人3人を除外したと発表。「核合意をめぐるウィーンでの交渉とは無関係で、イランに対する制裁方針に変更はない」としている。これに関して米大統領府は2日の声明で、
―サキ米大統領報道官は、「イランとの合意に至るまでに困難な交渉があることは承知している」とし、「これを我々は以前に経験した」と述べた。また「米がイランとの外交の取組みを続けるのは、イランが核合意の義務を果たすとの期待からだ」とした。
―イラク・アンバール県ハディーサに近い地域で「イスラム国」(IS)の攻撃があり、4人が死亡した。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―アブドルアーティ・エジプト灌漑相は、「ルネッサンス・ダムのためにエジプトで水資源が不足すれば、多数の国民に甚大な悪影響が出る」と指摘。「農業が損害を被り、雇用が失われ、社会が不安定化すれば、欧州その他への大規模な移民の波の発生や、若者のテロ組織加入につながるだろう」と述べた。その上で「エチオピアによる一方的なダムの貯水・稼働は容認しない」「ダムをめぐる交渉は膠着している。エジプトの柔軟な姿勢に対して、エチオピアが自国の立場に固執したためだ」とした。
○ 中東和平(占領地情勢)
―西岸地区ナブルス南方バイターのパレスチナ住民は2日、近郊のサビーハ山でのユダヤ人の前哨基地(無許可の入植地)建設継続に抗議するデモを実施。イスラエル軍はこれを音響弾や催涙ガスを使って弾圧した。一方、イスラエル当局は、サビーハ山の入植活動を停止して退去させる見返りに、同じ場所に宗教学校と軍事拠点を建設することで、入植者のリーダーと解決を図った由。
―エルサレムのシルワーンで2日、イスラエルによるパレスチナ人の住宅取壊しに抗議する座り込みが行われた。現在、17家族が自らの手で住宅を取り壊すよう命令を受け、既にその期限が切れており、当局による取り壊し実施を警戒している。シルワーンの町はアルアクサー・モスクのすぐ南にあり、パレスチナ人は家屋取壊しについて、「入植者に町の不動産を取得させ、モスク周囲を『ユダヤ化』する計画だ」と非難している。
―イスラエル軍は、ガザ市南方の抵抗運動の拠点を戦闘機からミサイル攻撃した。「発火物を取り付けた風船をガザ地区からイスラエルに飛ばしていることに報復し、ハマースの武器製造所を空爆した」としている。この攻撃による負傷者はなし。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタン駐留米軍とNATO部隊は、アフガン侵攻以来20年使用した重要拠点のバグラム基地を、アフガン政府軍に引き渡した。アフガン撤退に伴う米軍の基地引き渡しは7か所目。これで米軍は、カブールの米大使館に近い駐留軍司令部を除く全ての拠点から撤収した。タリバンの軍事的な前進が続く中で、アフガン政府軍への重圧は増すとみられる。
―バイデン米大統領は、「米軍のアフガン撤収は、設定した日程に従って進んでいる」としつつ「撤収の完了後も、米は一部の部隊を残す」と述べた。一方、オースティン国防長官はムハンマディ・アフガン国防相に、「米はアフガンの安全、戦争を終結させる政治的解決に努力する」と伝えた。また「米軍が撤収する一方で、アフガンの軍と治安部隊を支援する義務を果たす」と強調。
―タリバンのナイーム広報担当は、米軍のバグラム基地からの撤退を「歴史的な一歩」と歓迎。「外国軍の存在がアフガンの問題を悪化させていた。撤退は安定と平和をもたらす良い行動だ」とした。
―アマーン・アフガン国防省報道官は、「米軍撤収は、アフガン軍に対する米軍の支援の終わりを意味しない」「米軍は、情報任務や装備面、テロとの戦いで今後も我々を支援する」と述べた。
ワシントン特派員の話:米は、規模を縮小した部隊をカブールに残し、新たに「治安・軍事協力」部門をカタールに置いて、在カブール部隊の指揮や、アフガン軍への資金提供の管理を行う見通し。これに伴い、駐アフガン米・NATO連合軍のミラー司令官からマッケンジー米中央軍司令官に権限が移る。米は、バグラム基地から撤退した部隊をタジキスタン、ウズベキスタンに再展開するとされるが、国防総省報道官は展開先を明かさなかった。バイデン大統領は、米軍撤退後もアフガン軍に航空機による支援を提供するかと問われ、「米軍にその能力はあるが、米から装備提供を受けたアフガン軍が主導することを望む」と述べた。
―米軍のアフガン撤退が進み、アフガン北部の軍事・政治情勢が悪化する中、ムヘッブ・アフガン国家安全保障補佐官が訪露し、パトロルシェフ露安全保障会議書記と会談。アフガンの治安、軍事・治安・貿易・経済の各分野の協力について協議した。
○ マグレブ情勢
―ジュネーブで行われた「リビア政治対話フォーラム」が終了。ゼネンガ国連リビア担当調整官は、「(年末に実施予定の選挙に向けた)憲法上の根拠について、フォーラム参加者は合意できなかった。良い兆候ではない」と述べた。また、リビアの各政治勢力に「結束を可能にする妥協案を見出す」よう呼びかけ、「次の対話フォーラムでの議論のための共通の基盤をつくるため、選択肢を用意すべくリビア各勢力と共に努力を続ける」と語った。
―様々な意見対立をみた「政治対話フォーラム」は、当初の日程を延長して実施。小委員会を選出して3案を作成し、全体会議に諮ったが、どれも賛同を得られず。採決投票も行われなかった。示された3案は、①大統領選と議会選を同時実施し、軍人や外国籍保有者の立候補を制限しない、②暫定的に憲法上の根拠を認めた上で、それに基づきまず議会選を実施。選出された議会が憲法を制定し、その上で大統領選を行う、③まず憲法の可否を国民投票で問い、これが認められてから選挙に進む。憲法案が拒否された場合、これを選挙の根拠としてのみ用いる、というもの。
ジュネーブ特派員の話:政治対話フォーラムは、参加した各政治勢力の間で見解の隔たりが大きく、総意による問題解決は困難との予想通りの結果となった。まず、選挙実施の憲法上の根拠そのものをめぐって意見が対立。「暫定憲法による選挙実施では、移行期が不安定なものとなる」として、先に憲法国民投票を行うべきとの主張が出た。また、選挙を予定通り実施する場合でも、大統領選挙と議会選挙をそれぞれ単独で行うか、同時実施とするかで対立。議会の形をめぐっても、ベンガジ拠点の一院制とする提案に対し、多くの参加者がトリポリかセブハに第二院を置くよう主張した。立候補要件では、ハフタル元少将擁立のために軍人の立候補を可能にしようとする者がいて、ここでも立場が割れた。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―中央アフリカから西アフリカに至る地域で「イスラム国」(IS)が影響力を強めている。ISは「7か国で20日間に40回の攻撃を実行した。この結果、仏人3人を含む政府軍要員170人以上を殺害した」と発表している。ISのこの勢力拡大は、地元武装組織との「同盟関係」によって支えられている。(アラビー21)
中東の新型コロナ動向
―イスラエルの保健当局者は、同国では「新型コロナウイルスの第4波の感染拡大が始まっていることが明らかである」、と公表した。同国では新規感染者数が300人を超え、現在感染者数は2000人、そのうちの26人が重篤な状態にある。当局者は、次のように警戒する。「国民に正しいメッセージを伝えなければならない。室内でのマスク着用や社会的距離の保持等、必要な予防措置を緩めたり、無視することを続けたら、我々は何カ月も前の状態に戻ってしまうだろう。ワクチン接種をしていたとしても。」
(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―特になし