2021年7月8日 (No.21099)

アルジャジーラ・モニタリング

<ニュース・ヘッドライン>

8日0600JST「ミッドナイト・ニュース」

(ドバイのジャバル・アリー港の爆発について特別体制で報じたため、「ミッドナイト・ニュース」のヘッドラインはなし)

<特定関心項目報道ぶり>

○ 日本関連報道

―特になし

○ イラン・イラク・シリア情勢

―イラクとシリアで駐留米軍の複数拠点(イラクのアルビール国際空港、アイン・アルアサド空軍基地、シリアのオマル油田)が24時間内に相次ぎ攻撃された。これに先立ち、イラクの親イラン武装組織「サイイド・ショハダー大隊」が、「先月27日に米軍がシリア・イラク国境地帯で(親イラン組織に対して)行った攻撃に復讐する」と公言していた。

関連レポート要旨:最初の攻撃は6日夜に発生。イラク・クルド地方のアルビール国際空港が、爆弾を装填した無人機による攻撃を受けた。損害はなく、航空便の運航にも影響は出なかった。

その後、7日正午頃、イラク最大の米軍拠点アイン・アルアサド空軍基地が、ロケット弾14発の攻撃に晒された。基地から数キロの場所に停車したトラックから発射され、基地の周辺に着弾。有志連合軍は、攻撃を受けて2人が軽傷を負ったと発表した。負傷者の国籍等は不明。一方、イラク治安筋は「基地周辺の複数の民家で火災が発生し、犠牲者が出た」と述べた。「殉教者ムハンディスの復讐旅団」を名乗る、過去に知られていないイラクの武装組織がSNSに攻撃実行の声明を出し、「米軍にイラク撤退を強いる」と主張した。アイン・アルアサド基地は今月5日にもカチューシャ・ロケット弾3発で攻撃されている。
(注:ムハンディスは、イラクの武装組織の連合体「人民結集部隊(PMF)」の元副司令官。昨年1月にイラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官らとともに、米軍に殺害された)

一方、クルド勢力を中心とする「シリア民主軍」は、「シリア東部デリゾール県のオマル油田に対する無人機攻撃を失敗させた」と発表。油田に被害はなかったとしている。この地域には油田を警備する米軍部隊が駐留し、今月4日にもイラクの親イラン武装組織によるロケット弾攻撃を受けている。

イラクの親イラン武装組織は、過去に多くの米軍に対する攻撃を行ったと指摘されている。今回の相次ぐ攻撃が、これら組織と米軍の衝突の更なるエスカレートに繋がる可能性がある。

―イラク政府は、アイン・アルアサド空軍基地に対する攻撃を非難。「法を逸脱した者を追跡する」「イラクが、イランと米が乱暴な警告を交わす舞台となることを拒否する」との立場を改めて示した。一方、イラクの有志連合軍報道官は、この攻撃への報復を誓いつつ、「被害状況の詳細を評価している」と述べた。

―バグダッド中心部のグリーンゾーンで8日未明、爆発音が確認された。爆発音に続き、米大使館の防空システムによる発砲があった。イラク治安筋は、「米大使館の防空システムが、ロケット弾の攻撃を阻止した」と述べた。ロケット弾はラサーファ地区から発射された模様。

○ サウジ・イエメン・湾岸情勢

―UAEドバイのジャバル・アリー港で、大規模な爆発があり、火災が発生した。ドバイ政府は、「港の貨物船のコンテナで爆発があった」「火災が発生した船舶は、港の埠頭に係留するための準備中だった」と発表。爆発の原因には触れなかった。消防当局が消火にあたっており、負傷者はいない模様。爆発による揺れは、港から20キロ離れた住宅でも感じられた由。(0500JST台)

海上輸送時のリスクに関する専門家、サラマンタク・バチャリヤ氏の話:積み荷のコンテナに何らかの化学物質が存在したのは確実で、おそらく、複数の化学物質の保管に際して、輸送時の規定に即した適切な距離が保たれていなかったのだろう。あるいは、積み荷の適切な申告がされておらず、貨物船側がその内容を正確に把握できずに、事故につながった可能性もある。

ロンドンの経済専門家、ムハンマド・ハイダル氏の話:小さな火が徐々に燃え広がったのではなく、文字通り爆発だった。現在、原油増産をめぐるサウジ・UAEの諍いなど、域内には多くの対立がある。「このタイミングでジャバル・アリー港が標的となったのは何故か。誰が利益を得るのか」が問われるだろう。ある国と国の対立や、特定の国への疑念を煽ることで利益を得る勢力もある。ただ、拙速に爆発の責任主体を語るより捜査を待つべきだ。予断を持たれたり、今回の出来事に乗じて地域を更に緊張させる勢力が出ないよう、UAEには明確な説明が求められる。

(0520-0629JSTに、爆発や火災の映像、専門家の話などを交えて特別体制で報道)

○ エジプト情勢

―国連安保理は8日、エチオピアがナイル川上流に建設中のルネッサンス・ダムをめぐる公開の会議を開く。これに先立ち、エジプトと共に安保理の会合を求めてきたスーダンの外務省は、「会合の目的は、エチオピアに対し、ダム稼働に関する協定の6か月以内の締結を促す国際社会の役割を強化することだ」と説明。

○ 中東和平(占領地情勢)

―特になし

○ 国際テロ・過激主義情勢

―アフガニスタンのタリバンは7日、北西部バドギス州の中心都市カラア・ナウを一時、制圧した。その後、ヘラート州から派遣された政府の特殊部隊が介入、タリバン戦闘員を排除した。この戦闘で、双方に多数の死傷者が出た。また、市内の刑務所に収監されていた約200人が逃走した。タリバンは既にバドギス州の7郡中6郡を支配していたが、州の中心都市制圧を試みたのは今回が初めて。2年前にドーハで結ばれたタリバンと米の合意では、タリバンは都市部には向かわない、とされている。

―タジキスタンは、露を中心とする「集団安全保障条約機構(CSTO)」に、「対アフガン国境での緊急の治安上の課題に対処するための支援」を要請した。タジキスタンの対CSTO代表は、「アフガンからの脅威に独力で対処するのは困難」と述べた。これに先立ちラブロフ露外相は「アフガンからの脅威から同盟国を守るため、タジキスタンの露軍基地の使用を含め、できる全ての事をする。アフガンの状況は急速な崩壊へと傾いている」と述べた。

―ザリーフ・イラン外相はテヘランで、アフガンの議会代表団やタリバン代表団を交えて会合。「アフガンの当事者は交渉に戻るべきだ。戦争の継続は悪い結果をもたらす」「政治的解決がアフガンの危機解決に最もふさわしい」と述べた。この会合についてタリバン報道官は「アフガンの和平につき議論した」と話した。

―米国務省報道官は、「イランがタリバン代表団を迎えて協議を行ったことは承知している」「アフガンの近隣諸国が、影響力を和平実現のために前向きな形で用いることを願う」と述べた。

○ マグレブ情勢

―特になし

○ トルコ情勢

―特になし

<その他の重要ニュース要旨>

―特になし

エリコの目

―7日、イラクの親イラン武装組織は改めてアイン・アルアサド基地にロケット弾を撃ち込むなど、米軍に対する攻撃を活発化させている。背景にはバイデン政権が中東からの足抜けを図っている事情があり、武装組織を背後で操っているイランには、米国が強い反撃をしないだろうとの目算がある。(アルアラブ紙)

Just a moment...

中東の新型コロナ動向

―チュニジアの感染状況が極めて悪化している。6日の新規感染者数は7,930人と過去最大を記録し、死者数も119人で第三波のピークであった4月28日の数値に並んだ。アクティヴ・ケース(現時点での患者数)も69,858人で、7月に入ってから毎日、新記録を更新している。ケルアン県の中央病院に勤務する看護師は「数体のご遺体が1日中病室のベッドから動かせないこともある。霊安室が満杯で、移動させることができないのだ」と述べた。(アルクドゥス・アルアラビー紙)

Tunisia COVID - Coronavirus Statistics - Worldometer
Tunisia Coronavirus update with statistics and graphs: total and new cases, deaths per day, mortality and recovery rates, current active cases, recoveries, tren...
<特記事項・気付きの点>

―特になし

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