アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
10日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ ルネッサンス・ダム問題で、安保理の協議が続く。米国務省は「AUを通じた対立解消に向けて努力を続けている」とし、ダムをめぐる危機を「地政学的」と形容
■ タリバン、アフガン南部でも攻勢。対イラン国境検問所2か所を制圧。露外相、「戦闘がアフガン国内に止まる限り介入しない」と述べる。米は「解決のための国際圧力の強化」を呼びかけ
■ 安保理、シリアへの人道物資搬入の期間を延長。露米の対立は決着。米国務次官補代理は、「アサド体制転換を目指していない」と述べる
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―国連安保理は全会一致で、シリア・トルコ国境の一カ所(バーブ・アルハワー国境検問所)からの対シリア支援物資搬入の期間を1年延長すると決定。まず、搬入期間を今月10日から6か月延長する。その後、「搬入プロセスの透明性や、支援が進展して人道面の必要を満たしていることが国連事務総長の報告で示されればさらに6か月延長する」としている。
―米国連大使は(上記の)国連によるシリアへの支援物資の搬入について、「6か月後の期間延長に安保理の採決は必要なく、自動的に継続となる」「シリアへの人道物資搬入について露と合意に至ったことは重要だ」と述べた。一方、露国連大使も「全会一致で物資搬入の延長が決まったのは歴史的なことだ」と述べた。
―米国務次官補代理(近東問題担当)は、アルジャジーラとの会見で、「米はシリアのアサド体制の転換ではなく、その行動を変えることを目標にしている」「国連が主導する政治プロセスを支持し、シリア国民を代表する政府を見出すのに貢献する」と述べた。また、「米軍はシリア北東部から撤退しない。シリア民主軍(SDF)と共に対イスラム国(IS)作戦を続ける」と強調。
―テヘラン北部のミッレト公園近くで火災が発生。原因は不明。これに先立ち、イランのメディアは「爆発音が聞かれた」と報じた。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―エチオピアがナイル川の上流に建設中のルネッサンス・ダムに関する安保理の会合で、米・露・仏・中は「ダムをめぐる対立解消に最も適した枠組みはアフリカ連合(AU)だ」との立場を示した。一方、エジプト外相は「AU主導の(交渉)プロセスは行き詰まった。我が国は持てる全ての手段で国民の利益を守る」と述べた。これに対してエチオピア灌漑相は「どのような政治的圧力も拒否する」と語った。
―エチオピア外務省報道官は、「ルネッサンス・ダムは開発事業であるため、安保理が扱う問題ではないとの立場を、各理事国が一致して示した」「AUのもとでの当事者3国(エチオピア、スーダン、エジプト)の交渉を各国は支持した」と指摘した。
―アビー・エチオピア首相は、「ルネッサンス・ダムは(ナイル川の)流れの一部を取るに過ぎない。(下流にあるスーダンの)ロセイレス・ダムはより堅固になるだろう」とアラビア語でツイート。スーダン、エジプトの両国民を安心させるべく、「両国の人々がルネッサンス・ダムの貯水によって損害を被ることは決してない」「このダムは3国間の協力の土台になる」と投稿した。
―米国務省報道官は、ルネッサンス・ダムの問題について「エチオピア、スーダン、エジプトに限らず、地域的な危機だ」との認識を示し、「米は危機の解決を支援する用意がある」と述べた。
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタンのタリバンは9日、西部ヘラート州で、主要な貿易ルート上の国境検問所2か所を制圧した。このうちイランとの「イスラム・カラア検問所」は、関税収入が1日約370万ドルに及ぶ。検問所が制圧された際、政府の部隊は抵抗しなかった。一方、トルクメニスタンとのトールグンディ検問所もタリバンが抑えた。同検問所は、天然ガスや石油製品の輸入、アフガン製品輸出の主要地点。
―タリバンは(上記に続いて)イランとのアブー・ナスル・ファラーヒー国境検問所も制圧した。両国間の国境検問所は4か所。
―イラン軍の北東方面司令官は、イランの東部(対アフガン)国境を脅かすものは、ない」「アフガンの治安は好ましい状況ではないが、イランの脅威になっていない。イラン軍は国境一帯に部隊を配置している」と述べた。また「あらゆる脅威やイランを標的とした行動に対応する完全な用意ができている」と語った。
―タリバンとの戦闘が激化する中で、アフガン政府は、ムハンマド・イスマイル・ハーン氏が率いるタジク人の民兵組織に支援を要請したことを認めた。同氏は元閣僚で、2001年にタリバンが駆逐された戦闘で米軍が支援した「北部同盟」の主要幹部。タリバンからヘラート州の基地を守る役割を担う由。政府高官は「タリバンと敵対する多くの元軍事司令官(軍閥の長)が政府を支援している」と述べた。一方、治安筋によれば、「政府は戦略・経済的に重要な地域や幹線道路の保持に集中すべく、重要度の低い地域から撤退した」という。
―訪露中のタリバン政治局代表団は記者会見で、「アフガンの国土の85%を掌握した」と主張。「398ある郡のうち(郡部を中心とした)170以上を制圧した」という。ただアフガン政府は、タリバンが支配する郡の数を「80」としている。また、タリバン代表団は「隣接する『友好諸国』がアフガンからの脅威に晒されることはない。訪露の目的は『イスラム首長国』の全情報を提供することだ」「ISの勢力拡大を許さず、これと戦う」「アフガン社会の各勢力代表との、国の骨格を定めるための交渉を終えつつある」と語った。
―(上記)タリバン代表団のディラワール氏は、「各州の中心都市を武力で制圧することはない」「政府の事務部門・施設、各国領事館は攻撃しない」「アフガン政府との停戦を検討しており、ドーハでの交渉が成功すれば、攻撃を停止する」と述べた。
―ラブロフ露外相は、印外相との共同記者会見で、「アフガンの戦闘が国内に止まる限りアフガンに対して行動をとるつもりはない」としつつ、「戦闘が近隣諸国に及ぶ可能性」を懸念。「米・タリバンの合意履行と、政治プロセスの一刻も早い開始を望む」と述べた。
―オースティン米国防長官は、「アフガンの治安状況は、さらなる国際的圧力を必要としている」「交渉による政治的解決によって紛争を終わらせ、アフガン国民が望む政府をもたらすために、世界は圧力をかけ続けることで支援できる」とツイート。
○ マグレブ情勢
―チュニジア保健省によると8日、新型コロナウイルスで189人が死亡した。同国の一日の死者としては最多。報道官は「医療システムが崩壊の危機に瀕している」と述べた。各都市の経済のあり方への考慮から、全土ではなく一部都市の封鎖を行った。カタールは医療ベッドや人工呼吸器等を航空機2機でチュニジアに送った。
○ トルコ情勢
―エルドアン・トルコ大統領は、米軍撤退後のアフガンでトルコがカブール国際空港の警備を担うことになると述べた。「米軍・NATOとの間で、将来の任務の段取り、我々が受け持つことと、できないことを定めた」と語った。欧米諸国は、外交官や援助関係者の出国ルートであるカブール空港が米軍撤退後にタリバンの手に落ちることを懸念している。
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―国連人権高等弁務官事務所のリンク特別報告者は、国連人権委員会会合(ジュネーブ)において「西岸地区におけるイスラエル入植地の存在はもはや戦争犯罪である」と述べた。同報告者の委任資格を認めていないイスラエルは会議をボイコットした。リンクは、「この結論は重要であり国際社会がイスラエルに対して占領は違法であり代償なく継続は不可能であることを明白に伝える義務があることを示している」と述べた。また、ハスティング占領地人権調整官は西岸北部のハムサタバキア地区における家屋破壊活動について深刻な人権侵害の報告を受けているとし、イスラエルにこの行動を停止するよう求めた。(アラビー21)
中東の新型コロナ動向
―イランでは、第三波(第四波?)の感染爆発が起きている。8日の新規感染者数は23,391人と、4月14日に記録した25,582人の過去最高値に迫っている。1日あたり死者数は136-155人程度の数値で推移。今回の特徴は、前回流行から感染者数の指標が十分下がらないまま上昇に転じ、またそのスピードが速いことである。このパターンは、チュニジアや我が国と似ており、前回を超える感染拡大になる可能性がある。2回ワクチン接種完了者数は約218万人に留まっている(人口は約8510万人)。(一部アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―特になし