アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
13日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ イラク南部ジカール県にある新型コロナウイルス感染症患者を隔離する病院で火災が発生、6人死亡、14人負傷
■ エチオピア、ルネッサンス・ダムの貯水第2段階が予定より早く完了するとの見通しを示し、露との軍事協力を強化。エジプトは「同ダム問題対応で、あらゆる可能性に対する選択肢が開かれている」とする
■ サッカーの欧州選手権決勝後の暴動を受け、英首相は「選手に対する人種差別的中傷を止めるよう」求め、「中傷者らは自身を恥じるべきだ」と述べる。ロンドン警察は、暴力行為に関与した数十人を拘束
■ アフガニスタン政府、「外国軍の撤退が治安の空白を生じさせた」と指摘。EUは、アフガン支援のための国際連絡グループの設置を提案。米アフガン特使は、ドーハで和平プロセスをめぐり協議
■ オマーン国王のサウジ訪問の終わりに、両国は国境検問所の開設で合意し、「原油市場の安定をサポートし、イエメン危機解決に向けた努力を続ける」と強調
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―イラク南部ジカール県の県都ナーシリーヤの中心部にあるフセイン病院の新型コロナウイルス感染症患者の隔離センターで火災が発生し、同県保健局によると(0700JST現在)医療スタッフ2人と警備員1人を含む41人が死亡、5人が負傷した。民間防衛隊により火災は鎮圧されたが、救助作業はまだ続いており、死傷者数は更に増えるものと見られる。同県保健局は、酸素ボンベの誤った使用が火災の原因と見ている。
バグダッド支局長のレポート:コロナ患者用の酸素ボンベが爆発して燃えたため、火災が大規模になったものと見られる。イラクでは元々あった病院の大半が古く、1年半ほど前のコロナ患者の急増に対応することができなかったため、患者用の医療センターの多くが感染の拡大を受けて慌てて建設された。これらのセンターも元々あった病院も、こうした(火災事故のような)事態を防ぐための安全対策がほとんど取られていないことが大きな問題だ。これが、4月に起きたイブン・ハティーブ病院での火災(80人超死亡)や今回の火災で多数の犠牲者が出た主要因となっていることは間違いない。また内務省は、「今回火災の起きたセンターは、サンドイッチ・パネルを使用して建設された」と発表した。サンドイッチ・パネルは可燃性の材料として知られている。これが激しい火災を引き起こした可能性がある。火災発生時、同センターには、患者63人のほか、医療スタッフ、警備員、患者の家族ら計300人ほどがいたものと推定される。
―イラク首相は、フセイン病院で起きた火災をフォローアップするために、ジカール県に向かった。(0616JST、字幕速報)
―フセイン病院での火災事故を受け、サッダーム・タウィール・ジカール県保健局長が辞任。(0650JST、字幕速報)
イフサーン・シャンマリー・イラク政治的思考センター長の話(バグダッドから):県保健局長の辞任は、怠慢の責任を感じてのもの、当局が怠慢をほぼ認めたものと見ることができるだろう。私が得た情報によると、カージミー首相は、諸閣僚や保健省の高官、治安機関の幹部らとハイレベル会合を開き、ハイレベルの調査委員会を設置するとのことだ。同委は13日朝にジカール県に入り、状況を調査する予定だ。同委は首相に報告書を提出し、実際に誰が責務を怠ったのかが明らかにされ、責任を追及することになる。行政的措置になるのか、あるいは刑事的・テロ的・政治的側面があると証明された場合には(相応の責任追及となる)。イラク国内には(10月10日に予定される)早期議会選挙の実施が「自分たちに有利にならない」と危険を感じて反対する政治諸勢力が存在しているため、今回の火災事故のような出来事が政治的に利用される懸念がある。
―EUは、「レバノン新内閣の組閣を妨害している」との理由で、同国の要人複数に対し今月末に制裁を科することを示唆した。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―(報道内容の変更により、ヘッドラインにあるオマーン・サウジ関連のニュースはなし。)
○ エジプト情勢
―シュクリー外相はブリュッセルを訪問し、EU高官らと会談、ルネッサンス・ダム問題について協議した。同外相は「柔軟な態度をとるべきだとエチオピアを説得するようEUに要請した」「同ダムの問題はエジプトにとって存在に関わる問題であるということへの理解をEUに求めた」「エジプトの政府機関は、適切な時にバランスをとって選択肢を決定する。我々は怠ることなく国民の利益を守る」と述べた。また同相は「同ダムの貯水・運用に関する公正で拘束力のある合意を保証する期間を限定した行程表」を求めるエジプトの立場を改めて表明した。これに対し、EU上級代表は「同ダムをめぐる問題は対話以外の手段では解決できない」とし、「EUはエジプトとスーダンの懸念を理解している」と述べた。
―シレシ・エチオピア水・灌漑・エネルギー相は、「エチオピアは、国連安保理理事国がエチオピアの真の開発努力を理解し、ルネッサンス・ダムの問題をAUに戻したことを評価する」と述べた。同相は、「12日午前にグテーレス国連事務総長と会談し、同ダム建設の段階と貯水の第2段階とAU主導の交渉について報告した」「同事務総長に、同ダムに関するルールとガイドラインの完成にかかわる技術的・法的懸案事項に対するエチオピアの立場を説明した」と明らかにした。
―マハディ・スーダン外相は、訪問先のモスクワで「ルネッサンス・ダムに関するエチオピアの一方的な動きは非難されるべきものだ」と述べ、国連安保理で露国連大使が表明した「同ダムに関し他国に損害を与える一方的な措置を許すべきではない」との立場を評価した。
―エチオピア気象局長官は、「大雨により、ルネッサンス・ダムの貯水の第2段階が予定よりも早く完了する可能性がある」と述べた。
―エチオピア国防省は、アディスアベバを訪れた露軍技術部隊管理部の代表団との間で軍事協力協定に署名した。エチオピア軍の知識・技能・技術における能力の向上を目的としたもの。
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―(報道内容の変更により、ヘッドラインにあるアフガニスタン関連のニュースはなし。)
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―サッカーの欧州選手権(ユーロ2020)決勝でイングランドが伊に敗北したことを受け、PK戦で失敗したイングランドの黒人選手3人がSNS上で人種差別的な中傷を受けた。ジョンソン英首相は、この人種差別的中傷を非難し、「中傷者らは自身を恥じるべきだ」と指摘。ロンドン警察は、イングランドの敗北に怒ったサポーター数十人を拘束。
エリコの目
―トルコのエルドアン大統領は7日に就任したイスラエルのヘルツォグ大統領に祝福の電話をかけ、「トルコとイスラエルの関係は中東にとって重要であり対話が必要」「イスラエルがパレスチナとの紛争を解決するために前向きな措置を講ずることはトルコとの関係も促進する」などと述べた。「両国は観光や技術等様々な分野で大きな可能性がある」とも述べたエ大統領は、先の「ガザ戦争」に際し、「イスラエルの指導者は『殺人者』」と述べており、関係は悪化していた。(アラビー21)
中東の新型コロナ動向
―イスラエルでは、早期にワクチン接種をした者が新型コロナウイルスに感染するという事例が増えており、データを調査した結果、「ファイザー・ビオンテック」製のワクチン接種の効果は、時間の経過とともに逓減することが判明した、と報じられた。イスラエルではデルタ型変異株が流行しているが、この研究チームによれば、新規感染数の増大の理由は変異株の流行にあるのではなく、ワクチンの感染予防効果が減じているから、と結論した由。(アルクドゥス・アルアラビー紙)
<特記事項・気付きの点>
―イラクの病院での火災を受けてその後の報道内容を変更し、火災に関する特派員のレポートや現地の関係者からの情報、識者の意見などを連続報道体制で伝えた。