アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
21日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ エチオピア、ルネッサンスダムの2度目の貯水を完了し、ダムに関してEUに中立の姿勢を要請。スーダンは国際法順守を表明、エジプトは交渉プロセスの後押しを求める]
■ 米国務省、イラン新大統領がウィーンでの核合意をめぐる交渉を完了させることを期待。イランは交渉を収監者交換と結びつけることを拒否。IAEAはイランに質問の返答を求める
■アフガニスタンで戦闘が沈静化。タリバンは「平和的解決を目指す」として、「一部の郡を制圧したのは、これら地域の治安部隊がタリバンに加わった後のこと」と説明。露は「タリバンによる周辺諸国への脅威はない」との見方
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の武藤事務総長は、新型コロナウイルスの感染者が増加した場合、23日開幕予定の五輪開催を中止する可能性を排除しない姿勢を示した。
皆が待ち望む4年に1度の世界最大のイベント、五輪・パラリンピックの東京での開幕をわずか数日後に控え、選手団の到着が続く中、五輪に直接関わる人々の間の新型コロナ感染者数が70人を超えた。関係者によると、選手村の外に滞在している一部の選手の中からも陽性者が出た。米の体操選手もその1人だ。組織委によると、感染者には選手、担当者、職員、練習のコーチらが含まれる。感染者が増える中、組織委事務総長は「新型コロナの感染者数が増えた場合、五輪中止の可能性も排除しない」という姿勢を示して、皆を驚かせた。世界的な新型コロナ感染拡大を受けて1年延期された五輪は、大半の競技が無観客で行われる。東京での緊急事態宣言がその理由だ。東京で新たに確認された感染者は、5日連続で千人を超え、その後(19日に)727人に減少した。(スポーツニュース)
○ イラン・イラク・シリア情勢
―プライス米国務省報道官は、「イランの新大統領が核合意をめぐるウィーンでの協議を進めることを選ぶよう期待している」と述べた。一方、ラビエイ・イラン政府報道官は、「米は収監者交換を妨げている」と非難し、収監者交換の件を核合意と結び付けることを受け入れない姿勢を表明した。
―グロッシIAEA事務局長は、「IAEAは、懸案事項に関する一連の質問に対するイランの返答を未だに待っている」と述べた。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―米司法省は、「トランプ前大統領の顧問だったトーマス・バラックをUAEの利益になる活動に関与した容疑で拘束した。同人は公式に届け出をすることなく2016年4月から2018年4月の間、UAEのエージェントとして活動した罪に問われ、これに関連する7つの罪状で起訴されている」と発表した。同人と他の容疑者2人(うち1人はUAE人)は、UAE高官の指示により、2016年の米大統領選に影響を与えるべく活動したという。起訴状には、バラック容疑者が2017年、UAEが反対していた湾岸危機をめぐるキャンプデービッドでの湾岸首脳会議の開催をやめるよう当時のトランプ大統領を説得し、その後同会議が開催されなかったことが記されている。
○ エジプト情勢
―シーシー大統領は、ジョンソン英首相との電話会談の中で、「ナイル川の水に対する歴史的権利と現在および将来における水の安全保障にこだわるというエジプトの姿勢は不変だ」「ルネッサンスダムの貯水と稼働に関して法的拘束力のある公正な包括的合意に達するため、国際社会が真剣に、真の政治的意思をもって交渉プロセスを後押しする責任を果たすことが肝要だ」と表明した。
―エチオピアのデメケ外相(副首相)は、アディスアベバでウェーバーEU特使と会談した際、EUにルネッサンスダムをめぐる交渉プロセスのオブザーバーとして中立の姿勢を取ることを求め、「ダムの2度目の貯水は『原則宣言』に基づき、雨季の間に下流諸国(エジプトとスーダン)に具体的な損失を与えずに完了した」と述べた。一方、スーダンのハムドゥーク首相は、「ルネッサンスダムの貯水と稼働に関して、スーダンの国益を保つ法的拘束力を有する合意に達するために努力を惜しまない」と述べた。
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―タリバンのシャヒーン政治局広報担当はCNNのインタビューで、「一部の郡を制圧したのは、これらの地域の治安部隊が我々の戦列に加わった後でのことだ」「タリバンの方針は平和的解決への到達に基盤を置いている」と述べた。
―イスラム教の犠牲祭(イード・アル・アドハー)の初日にあたる20日、アフガニスタン各地の戦線が平穏に包まれた。これと並行して、タリバンのムジャーヒド広報担当は、「犠牲祭の機会に各地で政府軍の数十人を解放することを決定した」と発表した。
―アフガン治安筋によると、ガニ大統領が20日に犠牲祭の礼拝を行っていた際、カブールの大統領宮殿付近に迫撃砲が着弾した。負傷者はなし。
―プライス米国務省報道官は、「ドーハでのアフガン和平協議は前向きな一歩となった。さらなる行動が必要だ」と述べ、和平合意に達するための流れを加速させるよう協議の当事者双方に促した。また、上記のカブールでの迫撃砲による攻撃を非難した。
―カブロフ露大統領特使は、「タリバンによるアフガン北部地域の支配は、前向きな要素であり、中央アジアの露のパートナー諸国を安全にする」「タリバンは、アフガニスタンではなく中央アジア・パキスタン・イランを狙う過激派集団を抑制する要因となる」「タリバンがアフガニスタンの国外で動いているという証拠は全くない」との見解を示した。
○ マグレブ情勢
ー特になし
○ トルコ情勢
ー特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―エチオピア国営通信によると、同国外相とEU特使の会談で、ルネッサンスダム問題に加えて同国とスーダンの国境紛争についても協議された。外相は「スーダンは力ずくで自国の要求を押し付けた。これは国際法違反だ」と主張。
―世界のイスラム教徒が20日、犠牲祭の初日を祝った。
エリコの目
―サウジアラビアが、イスラエルとの国交正常化に後ろ向きな姿勢に転じた背景には、UAEとの関係悪化がある。「サ」がトランプの失脚で外交政策の再構築を余儀なくされる中、UAEは米、イスラエルとの良好な関係を背景に政治、経済、軍事の各方面で「サ」の競争相手として台頭している。「サ」指導部はこれに不満である。(ヌーンポスト)
中東の新型コロナ動向
―チュニジアでは、前例のない感染拡大に政府の責任を問う声が強まる中、首相はマハディ保健相を解任した。当面、トラベルシ社会問題相が保健相を兼任する。同国では、諸外国の援助によってワクチン接種が可能となったが、市民が接種会場に殺到しており、逆に感染が拡大するのではないかとの不安がある。
<特記事項・気付きの点>
―特になし