アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
23日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ スーダン、「ルネッサンス・ダムの2度目の貯水による影響への対処のために高い経済コストを負担した」と表明。エチオピアは「世界に最終合意は存在しないため、署名できない」と述べる
■ イラン、同国史上初めてオマーン湾に面する港から石油輸出を開始。イラン大統領はこれを「敵への重要なメッセージだ」と述べる
■ WSJ、「米・イラク政府高官らによると、今年末までに米戦闘部隊がイラクから撤退するとの声明を出す予定だ」と報じる
■ アフガニスタン各地で戦闘が続く中、タリバンは「国境の9割を制圧した」と発表。政府の情報筋は、「政府・タリバン両代表団はドーハで会合し、交渉の加速化で合意した」と述べる
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―東京五輪が新型コロナ感染拡大の予防措置が取られる中、23日から8月8日まで開催される。トーチに聖火を灯すセレモニーも無観客で行われ、開会式では選手団の入場も通常通り行われる予定だが、その人数はこれまでより少ない。開会式の出席者は、国内外の責任者や政府高官ら約950人に限られ、東京五輪は史上初めて無観客で開催される。1964年以来、再び東京に戻った五輪だが、これまでにない雰囲気の中での開催となっている。新型コロナ対策の予防措置として緊急事態宣言などが出されており、東京では(五輪開催に)批判的な様子が見られ、一部の国民は(デモ行進を実施して)このような状況下での五輪開催を受け入れず、「競技の観戦を認めず、また外国人が日本に押し寄せることも受け入れられない」と表明した。そのため、五輪開催に恒例の祝賀ムードを感じることは難しい。今回、空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンが競技種目に追加され、全競技数は33競技となっている。五輪の全てにおいて組織・管理が上手く行われていても、東京に祝賀ムードは見られない。
(スポーツニュース)
○ イラン・イラク・シリア情勢
―ロウハニ・イラン大統領は、南東部(ホルムズガーン州)のジャースク港から石油の輸出を初めて開始した」「南部のブーシェフル州の港からジャースク港の新たなターミナルに石油を輸送する約千kmにわたるパイプラインの敷設は完了した」「これは前例のない一歩だ」「これにより、石油輸出のためにペルシャ湾を経由する必要性がなくなり、オマーン湾からいつでも輸出できるようになった」「この計画は、コストが20億ドルを超えたがイランにとって重要であり、イランの石油産業に制裁を科した敵たちに対する重要なメッセージだ」と述べた。
―ザンガネ・イラン石油相は、「オマーン湾からの初の石油輸出は、イランの石油産業にとって歴史的な日だ」「ジャースク港は千万バレルの原油を貯蔵でき、日量百万バレルを輸出できる」「イランの企業250社がこの計画に貢献し、イランとその石油部門に科された制裁を打破したことにおいてイランの力を示している」と述べた。
―ウォール・ストリート・ジャーナルによると、米・イラク政府高官らは「今年末にイラクから米戦闘部隊を撤退させるとの声明を近々発表する」「今年末にイラクから米軍が撤退する計画がある」「米はイラク軍部隊の支援に徹することになる」「共同声明では、イスラム国(IS)との戦いにおいてイラク軍を支援するため、撤退後も米軍の存在が必要であると確認されるだろう」と述べた。
―プライス米国務省報道官は、「イラク駐留米軍は、イラク政府の要請に基づいて駐留している」「この件に関しては、23日に開かれる両国間の第4回戦略対話で議題に挙げられるだろう」と述べた。
―米ニュースサイト「ポリティコ」によると、米政府高官等は「米・イラク政府高官らは、イラク駐留米軍の任務を今年末までに顧問の役割へ移行することを発表する予定だ」「この計画には、ISとの戦いにおける兵站・顧問に関する支援提供のため、米軍の限定的な人数を無期限に残留させることも含まれていると見られる」「米・イラクはカージミー・イラク首相のホワイトハウス訪問に合わせ、26日にこの計画を発表する意向だ」と述べた。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―ブリンケン米国務長官はワシントンでムハンマド・カタール副首相兼外相を迎え、「カタールは米にとって信頼できるパートナーだ」「両国は、アフガン・ガザ地区における和平への取り組みやテロとの闘いに参加して、地域における平和の構築に尽力している」と述べた。カタール外相は、「ブリンケン長官との会談が、中東地域における平和と安全の強化に資することを望む」「地域の様々な紛争の解決に仲介として尽力する。また発展計画の立ち上げにも尽力する」と述べた。
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタン内務省によると、南部のヘルマンド州ガルムシールとラシュカルガー両郡で政府軍が戦闘機の援護を受けて実施した軍事作戦により、タリバン戦闘員7人が死亡、13人が負傷した。一方、タリバンは、「ナンガルハール州スピンガルを政府軍が砲撃し、子供6人が死亡、子供2人が負傷した」と述べた。また、政府情報筋によると、タリバンはクナル州ガージアバード郡の庁舎を制圧。タリバンが東部の郡を制圧するのはこれが初となる。
―ムジャーヒド・タリバン広報担当は露のスプートニク通信に対し、「国境の9割を制圧し、タジキスタンとの国境を完全に制圧している」と述べた。
―アフガン政府筋によると、「政府・タリバン両代表団はドーハで会合し、交渉の継続と加速化を確認した」「両代表団は、次回会合の議題やどの問題を協議すべきかについて議論した」「ドーハでの両代表団の次期会合は数日中に開かれ、停戦について議論することになる」と述べた。
―カブロフ露大統領アフガニスタン担当特使は、「アフガンの現状は政治的・軍事的バランスの変化を引き起こした」「現在の出来事は、アフガン勢力間の交渉開始を遅らせるために、破壊的な影響を及ぼそうとするアフガン政府の傾向を強く示している」「露とタリバンの現在の関係は、アフガン政府とのかつての関係より良い。なぜならタリバンは承認される移行政府の樹立に尽力しているからだ」と述べた。
○ マグレブ情勢
―チュニジアでは、新型コロナによる感染者・死者数が前例のないほど増加し、アラブ・アフリカ諸国の中で(1日の)平均死者数が最多となった。これは政治情勢にも悪影響を与え、対処をめぐって首相と大統領が対立し、6か月以上に亘る政治危機を更に深めている。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―スーダン政府の情報筋は、「エチオピアがルネッサンス・ダムの2度目の貯水を計画通りに完了したと発表したことは、国内向けのプロパガンダに過ぎない」「スーダンの推測では、この2度目の貯水中に得られた水量は、エチオピアが意図していた135億立法メートルではなく、30~40億立法メートルだった」「2度目の貯水によるいかなる影響にも対処するために講じた予防・軽減措置によって、スーダンは高い経済的コストを負担したが、将来におけるこのコストを準備できていない」「AU主導の交渉再開に反対しないが、交渉は国際的な方面を参加させるべく仲介の枠組みを拡大する必要があり、また新たな方法で、決められた時間枠において行われることが条件だ」と述べた。
―ムフティ・エチオピア外務省報道官は、「同ダムの貯水・稼働に関する合意に向け取り組んでいる」「世界には最終的・包括的な法的拘束力のある合意が存在しないので、最終合意に署名することはできない」と述べた。
―ミルダーサ・エチオピア空軍司令官は、「空軍は一瞬たりともルネッサンス・ダムから目を離さない」「空軍は政府の最高司令部から出された命令に基づき、国家を破壊するいかなる攻撃も阻止する準備ができている」と述べた。
―ザハロワ露外務省報道官は、「露はルネッサンス・ダムをめぐる危機に関する安保理会合(今月8日)において、対立している当事諸国に対して中立的な立場をとった。AU主導の下での当事3か国による交渉に基づき、この問題の解決策を見出す必要がある」と述べた。
エリコの目
―インターネットサイトの「Airline Ratings」は2021年のベストエアラインにカタール航空を認定した。2位以下はニュージランド航空、シンガポール航空、カンタス、エミレーツ航空の順。このレーティングは安全性に加え、機材の平均年齢、乗客の声、新型コロナ対策等多項目からなる総合評価。ANAは12位、JAL14位、エティハド航空が20位に入った。(アラビー21)
中東の新型コロナ動向
―保健相解任(昨日付け報告済)に至ったチュニジアのワクチン接種を巡る混乱:
制御不能の感染拡大に見舞われたチュニジア。国際協力の求めに応じ支援のワクチンが集まったが、「場当たり的」な接種呼びかけが大きな混乱を招いた。保健省は、犠牲祭休みの2日間、全国の接種センターで「登録と接種を同時に受けられる」と18歳以上の全国民に来場を呼び掛けたため、会場に起きてはならない大混雑、押し合い等が発生、多くは接種を受けられないまま帰宅せざるを得なかった。保健省は計画を中止し、年齢層別に接種日を指定する方針。首相は保健相を解任し、自身は「聞かされていなかった」と責任回避したが、国民は納得していない。(BBCアラビア語)
<特記事項・気付きの点>
―特になし