アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
28日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ チュニジア大統領、「自分が取った一連の措置は一時的なものだ」とし、「自由の保護」を約束。ナハダ運動は、同措置の撤回を求め、「国を危機から脱却させるための国民対話」を呼びかけ
■ チュニジアの民間諸団体、「国家機関の停止を不当に延長しないよう」警告。司法評議会は、「司法権の独立」を強調し、大統領が検察のトップに就こうとしていることを拒否
■ 国連、チュニジアの政治指導者らに「法の支配を守り、対立を対話で解消するよう」呼びかけ。EUは「議会活動を速やかに再開させ、憲法を順守するよう」求める
■ 米大統領、情報機関幹部らに向けた演説で「米が大規模なサイバー攻撃を受ければ、大国との本当の戦争が勃発する可能性がある」と述べる
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―米国務省は、レバノンで組閣を委任されたミーカーティ次期首相に「権限を享受し重要な改革の実施に全力で取り組む内閣の組閣を急ぐよう」呼びかけた。同首相は、アウン大統領との会談後「次期内閣について、大部分において大統領と意見が一致している」とし、「今後2日間、大統領と続けて会談する」と述べた。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―チュニジア情勢
・サイード大統領は、労働総同盟を始めとする国内諸団体代表との会合で「自分が取った(首相解任、議会停止等の)一連の措置は一時的なものであり、危機が深刻化したために取ったものだ」と述べ、「自由がいかなる形でも侵害されることはない」と強調した。ロイター通信は、これらの団体の話として「サイード大統領は、民主化路線と権利・自由を守ることを約束した」と伝えた。
・サイード大統領は、首相府長官や首相顧問を含む首相府の幹部複数の職務を停止する新たな大統領令を発出した。
・ナハダ運動は、サイード大統領に一連の措置を撤回するよう求め、「国を危機から脱却させるための国民対話」を開催するよう呼びかけた。チュニジアの民間諸団体は、同大統領に対し「国家機関の停止(=大統領の取った一連の臨時措置)を不当に延長することのないよう」警告した。
・ザール農業漁業連合会長は、アルジャジーラの電話インタビューで「サイード大統領は、国内諸団体代表との会合で、一連の措置は1か月を超えないと約束した」と明らかにした。また「我々は、政治的空白を生じさせないよう警告し、次期内閣の組閣における協議・参加の必要性と、次段階の政治的行程表作成の必要性を強調した」と述べた。
・ガンヌーシー議会議長(ナハダ運動代表)は、「恐れてはいないが、(民主化の)路線から逸脱しないという確信はない。クーデターというものは通常、平和的に始まり、『自由や法律を守る』と強調するが、日々の行為が徐々に、司法やメディアの自由に打撃を与え、政治的な多様性を禁じる方向へと押し進めるものだからだ」と述べた。また「7月25日の諸宣言がチュニジアの民主化の終わりになることなく、皆が教訓から学ぶ機会になることを望む。チュニジアが直面する真の問題は、保健衛生・経済・財政問題だ」「ナハダ運動は、国が暴力に引き込まれることを回避させる決意でいる」と語った。
・ハーティム・ブーバクリー議会議員(人民運動所属)は、「サイード大統領が取った一連の措置は憲法に則ったものだ」との見方を示し、「議会停止の措置は平和的なものだ。議会は政治生活の衰退・悪化の一因となったからだ」と述べた。
・最高司法評議会は、サイード大統領が検察のトップに就く意思を示していることに拒否を表明した。同評議会は、同大統領との会合後に声明を出し、「司法をあらゆる政治的な争いから遠ざけるよう」呼びかけ、「司法官らは独立している」「検察は司法の一部であり、現行の法律に規定された範囲内で職務を遂行している」と強調した。またチュニジア判事協会は、サイード大統領に「例外的措置の実施を早急に終了させて、民主化路線を再開させる方法を明らかにするよう」呼びかけた。
・大統領府によると、サイード大統領は、テブン・アルジェリア大統領からのメッセージを受け取った。メッセージは、テブン大統領の特使としてチュニジアを訪れたラマムラ外相が口頭で伝えた。またサイード大統領は、ムハンマド・モロッコ国王の特使としてチュニジアを訪れたブリタ外相と会談し、同国王からのメッセージを口頭で伝えられた。
・各方面の反応:ブリンケン米国務長官、サイード大統領に電話連絡し、「米はチュニジアの情勢を監視し続け、同国の要人らとの連絡を保つ」と述べ、「すべての政治勢力や国民との開かれた対話を継続するよう」促す/サキ米大統領報道官、「米は平静を呼びかけ、民主主義の原則に沿って前進しようとするチュニジアの努力を支持する」と発言/英、「現在の難題の解決は、民主主義と透明性を通じてのみ実現できるものと信じている」と表明/露外務省、「チュニジア国内の対立は、法の領域を通じてのみ解決されるべきものだ」と指摘/国連、チュニジアの政治指導者らに「対立を対話で解消し、法の支配を守るよう」呼びかけ/EU、「チュニジアの国家機関の安定を可及的速やかに回復し、あらゆる形の暴力を避けるよう」促す/AU、「チュニジア憲法を厳格に順守し、あらゆる形の暴力を放棄し、提起された諸問題の解決に向けて政治的対話を促進するよう」呼びかけ。
・アルジャジーラ・メディア・ネットワークは声明を出し、チュニジア治安部隊がアルジャジーラのチュニス事務所を強制捜査し、事務所内で業務にあたっていた記者ら全員を退去させたことを「報道の自由全体に対する攻撃とみなされるものだ」と非難した。声明によると、治安部隊の将校10人以上が司法当局からの命令なしに事務所に突入し、鍵を没収して記者らが私物を取りに戻ることも許さなかった。同部隊は強制捜査の理由を明らかにしておらず、「指示に従って行動しているだけだ」としている。
・チュニジア(視聴覚)通信独立最高機関(HAICA)は声明を出し、治安部隊がチュニスにあるアルジャジーラの事務所に突入したことに懸念を示し、この事態に至った背景を明らかにするよう求めた。また、「外国のTV局の問題には、法の枠内で報道の自由を尊重して対応するよう」呼びかけ、「現場で活動中の報道関係者を保護し、攻撃や制限・弾圧を受けないようにすることが必要だ」と強調した。
・アムネスティ・インターナショナルは、サイード大統領に対し「表現の自由を含む人権を尊重・保護すると公約するよう」求め、「チュニジア治安部隊がアルジャジーラの事務所に突入した後、同国の人権状況に対する懸念度が上昇した。この突入は、表現の自由に対する野蛮な攻撃であり、懸念を呼ぶ先例となるものだ」「2011年のチュニジアの(民衆)蜂起で実現した自由と人権が危険に直面している」と指摘した。
―リビア情勢
・(トブルクの)サーレハ代表議会議長は、ロイター通信のインタビューで「今年12月に予定される国政選挙が延期されれば、振り出しに戻り、リビアが2011年の混乱に戻る可能性がある」と警告した。また、「(暫定)国民統一政府は、リビアの国家機関の統一に失敗し、トリポリの政府へとシフトした」と非難し、「東部に並行政府が現れ、国が更なる分裂へ向かう可能性がある」と警鐘を鳴らした。更に同議長は「外国の介入があるために、軍を統一することは困難だ」と認め、「政治対話フォーラムの会合は時間の無駄であり、憲法宣言がある中では不要だ」との見方を示した。
・上記に先立ち、ブレイハグ代表議会報道官は、同議会の議員らに来月2日に開催予定の議会に出席するよう呼びかけた。予算法案の採決が行われるほか、大統領選挙法と議会選挙法が公布され、選挙区の配分が承認される予定。同報道官は「代表議会は、憲法宣言に基づいてあらゆる法律、特に選挙の実施に関する法律を制定する権限を付与された唯一の機関だ」と述べた。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―イスラエル紙「マアリフ」の論説要旨:
米国の中東やアフリカからの兵力引き揚げでテロ組織は息を吹き返している。イスラエルは北にヒズボラ、南にハマスとイスラム聖戦という3つのテロ組織に挟まれている上、パレスチナが独立すれば東にも脅威を持つことになる。イランに支援されたテロ組織はイラク、シリア他で自由活発に活動し、米軍基地等を攻撃している。バイデン政権の「テロに対する立場」が確立するのはまだこれからと言われるが、いつになったら鮮明な態度を期待できるだろうか?
(アルクドゥス・アルアラビー紙)
中東の新型コロナ動向
―アルジェリアでは、過去最高の新規感染者数を更新する感染拡大が続いているが、当局は入国者に対する義務的検疫滞在を廃止した。代替措置として、36時間以内の陰性証明の提出及び到着時抗体検査が義務付けられる。
27日の新規感染者数は1,544人、死者数は25人だった。(注:同国の政府発表値は従来から少ない。)(アルマヤディーン・ネット他)
<特記事項・気付きの点>
―引き続き、チュニジア情勢を重点的に報道。