アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
29日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ チュニジア大統領、「略奪された財産を取り戻すための法律を出す」と述べ、「一部の議員が免責特権を自益の獲得に悪用している」と非難。労働総同盟は次期段階のロードマップを用意。ナハダ党は「憲法上の独裁」を懸念
■ スーダン、「エチオピアがルネッサンス・ダムの貯水の新たな段階に踏み切れば、その影響は壊滅的だろう」と述べる。エチオピアは問題の国際化を拒否、エジプトは水需要を満たすために警戒態勢を強化
■ イラン核合意をめぐるウィーン協議の第7ラウンドの見通しが立たず。イラン最高指導者、「米は核合意に再び違反しないと約束していない」と述べる。米高官らは「ライシ次期政権は、ロウハニ政権が得た以上のものを得られない」と指摘
■ イスラエル国防省、NSO社を捜査。訪仏したイスラエル国防相は同国当局に「マクロン大統領の携帯はハッキングされていない」と確認。米政権はスパイ活動に懸念
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―ハメネイ・イラン最高指導者は、「米は、核合意に再び違反することはないとの保証を示していない」「米は核合意をめぐるウィーン協議での自身の立場に頑なになっており、撤回していない。これは同国の頑固さを表している」と述べた。また、「欧米諸国を信頼する試みは失敗した。ロウハニ政権で(同試みは)成功しなかった」「次期政権は、欧米諸国を信じるべきではないと確認するこの経験を活かすべきだ」と述べた。
―米ニュースサイト「アクシオス」は米高官の話として、「核合意をめぐり、米政府はイランの次期政権が、ロウハニ政権が得た以上のものを得られると勘違いしないことを望む。米の立場は強固だからだ」「核合意に関する米の立場は不変であり、イランが核合意を書き換えることは不可能だ」と伝えた。
こうした中、イラン核合意をめぐるウィーン協議の第6ラウンドが6月末に終了して以降、第7ラウンドの開催日程等の見通しは立っていない。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―スーダン灌漑相は、「エチオピアがルネッサンス・ダムの貯水の第3段階で貯水量を200億立方メートルに増やせば、その影響は壊滅的なものになるだろう」と述べた。メコネン・エチオピア外相は、「ダム問題の政治化・国際化は必要性がなく、交渉プロセスを妨げる」と確認。一方でアブドルアーティ・エジプト灌漑相は、「各分野における水需要を満たすため、警戒・準備態勢を最大限強化し続けている」と強調。
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―チュニジア情勢:
・サイード大統領は、「略奪された財産を取り戻すための措置に関する法律を出す」「私のビジョンには、公的資金の略奪に関与した者に貧困地域におけるプロジェクトへの資金提供を義務付けることが含まれている」「一部の議員が、免責特権を自益の獲得に悪用した」と述べた。
・大統領府は、「サイード大統領は軍最高評議会のメンバーと治安高官らと大統領宮殿で会議を開いた」と発表。詳細は一切明らかにせず。
・サイード大統領は、国営テレビ会長の職務を停止する大統領令を発出。これに先立ち、同会長は「軍の准将に求められた」として記者組合副長と人権諸団体代表がテレビ本社に入ることを阻止したが、その後撤回。国防省報道官は「『軍が記者らが国営テレビ本社に入ることを阻止した』との情報は間違っている」と否定。
・サイード大統領は、労働総同盟を含む国内諸団体代表との会合で「自分が取った(首相解任、議会停止等の)一連の措置は一時的なものであり、危機が深刻化したために取ったものだ」「自由がいかなる形でも侵害されることはない」と述べた。
・ナハダ党は声明で、「チュニジアを現在の危機から脱却させるための国民対話を開催するよう」呼びかけ、サイード大統領に対し「一連の措置を撤回し、憲法の枠組みで諸危機を解決するよう」求めた。
・ガンヌーシー議会議長(ナハダ党党首)は、「『新たな時代』に不安を抱いている」「議会は戦車を用いて閉鎖され、複数の報道機関の事務所が差し押さえられた」「大統領が『憲法上の独裁』に向けた悪化の道を止めることを望む」と述べた。
・労働総同盟のブグデーリ事務次長補佐は、「大統領の一連の措置の正確性を確認した後、労働総同盟は次期段階における政治・経済面の想定を含むロードマップを近く大統領に提出する」「ロードマップの主要項目は、移行期を迅速に終えることに集中する」と述べ、「経済措置を早急に取るよう」大統領に促した。
・国内の市民諸団体は、「危機から脱出するため、30日以内のロードマップを策定するよう」大統領に呼びかけ、「1か月の期間中に例外的措置を終える重要性」を強調し、「(例外的措置の)理由なき延長」を警告した。
・各方面の反応:タミーム・カタール首長はサイード大統領との電話会談で、「チュニジアの現在の政治危機を乗り越える重要性」を確認し、「危機の打開、法及び政府機関の確立に向けて、チュニジアの各当事者が対話の道を採用することが重要だ」と述べた/ルドリアン仏外相、 ジェランディ外相との電話会談で、「現在の危機の中で、チュニジア国民の期待に応じるべく、首相の任命と組閣を急ぐ重要性」を強調し、「仏当局はチュニジア情勢を最大限注視している」とした。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―スパイウェア「ペガサス」の問題をめぐり、イスラエル国防省はNSO本社の捜査を開始。こうした中、マクロン仏大統領はベネット・イスラエル首相に対し、NSO社の活動とスパイウェアに関する説明を求めた。一方で訪仏したガンツ・イスラエル国防相はパルリ仏国防相との会談で、「マクロン大統領と同国国会議員らの携帯電話はハッキングされていない」と強調した。
―米ニュースサイト「アクシオス」は、「バイデン米大統領の中東問題担当顧問はイスラエル国防省高官とホワイトハウスで会談し、世界各国の記者や人権活動家等に対するNSO社のスパイウェアの使用について、イスラエル政府がどのように対処しているか聞いた」「イスラエル高官は、イスラエルが真剣に対処しており、実態調査を行っている最中であると答えた」と伝えた。
エリコの目
ーハメネイ師は、ロウハニ政権に送別の辞を送り「欧米を信頼しても物事はうまく行かないことが明白になった。あなた方は欧米との交渉に賭けたが、米国はあなた方を失敗に追い込んだ」と述べた。ハメネイ師はこの発言の中で、米国が制裁解除の条件として、弾道ミサイルとイランの中東における影響力拡大の問題を協議することを主張していることを批判した。(アッシャルク・アルアウサト紙)
中東の新型コロナ動向
ーサウジアラビアは、新型コロナの関係で渡航禁止先となっている諸国に直接、または第三国経由で渡航した国民は3年間、海外渡航を禁止すると発表した。渡航禁止先とは、5月17日に海外渡航を解禁した際に定められた14カ国に最近加えられたUAEやインドネシア等4か国(なお、事前許可を得た場合はこの限りでない)。(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―特になし