アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
4日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ 湾岸海域でタンカー3隻が相次いで攻撃される。そのうちの1隻がイランの支援を受ける勢力に乗っ取られ、航路の変更を余儀なくされたとの報告も。米は懸念を表明、イランは「これらの報告に根拠がない」と述べる
■ 映画プロデューサーのラーミ・ジャーベル氏がアルジャジーラの検証番組「暴かれた重大事」に出演後に殺害予告を受けたため、ベルギー当局が捜査を開始し、同氏を保護下に置く
■ アフガニスタン首都カブール中心部で複数の爆発、うち2回は国防相の自宅と外交使節団の近くで発生。国防相は無事を確認し、「事態は制御下にある」とする。安保理は同国での暴力行為の激化に深い懸念を表明
■ ベイルート港爆発事故から1年が経過。国連は責任追及を呼びかけ、HRWは問題の国際化と制裁を科すことを求める
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―ロイター通信は海上警備当局筋の話として、「UAEのオマーン湾で3日、パナマ船籍のアスファルト運搬タンカー『アスファルト・プリンセス』が、イランの支援を受ける勢力に乗っ取られたとみられる」と報じた。また、英タイムズ紙は、「英政府筋は、同タンカーが乗っ取られたとみており、イラン国軍兵士又はその代理勢力が乗船していると想定した行動が取られる」と報じた。
―上記について、米大統領報道官は「非常に懸念している。事態を注視しており、同様に注視を続ける英やその他のパートナー諸国と緊密な連絡を取っている」と述べた。
―イラン国営テレビのウェブサイトによると、イラン革命防衛隊はイランの部隊又は代理勢力の関与を否定し、「我々に対する敵対行為の口実だ」と述べた。
また、ハティーブザーデ・イラン外務省報道官はツイッターで、「湾岸海域で船舶の事故が相次いでいるとの情報は疑惑を引き起こす」「政治目的で誤った状況を作り出すことを警告する」とした。
―船舶の航行状況や現在位置の情報を提供するサイト「マリン・トラフィック」によると、マレーシアから出航したシンガポール国旗を掲揚するケミカルタンカー「ゴールデン・ブリリアント」は、「(UAEの)フジャイラ沖でセキュリティを侵害された」と通報後、エンジンが再始動し、目的地に向け航行を再開した。ロイター通信によると、周辺海域では3日、少なくとも5隻の船が同様の異常事態で航行不能状態に陥った。
―オマーン沖で7月29日にイスラエル系企業「ゾディアック・マリタイム」(英に拠点を置く運航会社)が運航するタンカー「マーサー・ストリート」が攻撃された件に関して、英、ルーマニア、リベリアは国連安保理に宛てた書簡で、「イランが攻撃に無人機1機もしくは複数を用いた可能性が非常に高い」「この攻撃は明らかな国際法違反であり、国際航行の安全を害した。国際社会はこの攻撃を非難すべきだ」と述べた。
―レバノン首都ベイルートで200人以上が死亡した爆発事件から(4日で)1年が経過。アウン大統領は演説で、「調査は行われており、真相は明らかになる。事件の責任者全員が裁かれる」「世界の目が我々に向けられている」等と述べた。
一方でディヤーブ職務執行内閣首相は声明で、「同事件は、レバノンを貪る腐敗を明らかにした」「司法調査により真相が明らかになり、責任者が裁かれる」「レバノンは、自国民の未来を左右する危険な段階を通過している」と述べた。
―バチェレ国連人権高等弁務官は、「爆発事件から1年が経過した今、レバノン政府が司法措置を止め、調査が停滞していることを懸念している」と述べ、レバノン政府に対し、「事件に関する透明且つ包括的な調査を実施するよう」呼びかけた。
一方でヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、国連人権理事会に対し、「ベイルート港爆発事件に関する調査を承認するよう」呼びかけた。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―UAEの映画制作会社「フィルムゲート・プロダクション」が共同制作・撮影・資金供給したハリウッド映画「ザ・ミスフィッツ」の制作にあたって、UAEが政治的目的でカタールを貶め、その名前をテロと結び付けることに同映画を利用したことをめぐるアルジャジーラの検証番組「暴かれた重大事」が(現地時間)1日に放送された。同番組に出演した、パレスチナ・フィンランド二重国籍を保有するベルギー在住の映画プロデューサー兼俳優のラーミ・ジャーベル氏が殺害予告を受け、ベルギー当局が捜査を開始した。
アルジャジーラが入手したベルギー警察の捜査報告書の写しによると、同氏は2日夜に「射殺する」との内容の殺害予告を電話を受けた。ベルギー治安筋はアルジャジーラに対し、「当局は事態を深刻に受け止めており、捜査終了まで同氏を保護下に置いた」と述べた。
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタン首都カブールで爆発が相次いで発生した。治安筋によると、カブール中心部の国防相の自宅付近で爆発が2回発生した。保健省報道官は「これまでに4人死亡、15人が負傷した」と発表。
こうした中、国防相はツイッターで、「事態は制御下にある。心配はない」と述べた。内務省は、「襲撃犯を全員殺害した」と発表。また、警察筋は、「爆発発生後、大使館や政府庁舎が位置する厳重な警備が敷かれている『グリーンゾーン』の近くで無差別の銃撃戦が起きた」と述べた。
―ハリルザド米アフガニスタン特使は3日、「アフガニスタン政府とタリバン双方の立場は政治的和解に達することからかけ離れている」「交渉の再開に向けて、米はアフガニスタン政府に対する圧力を強化している」「非常に憂慮すべき事態だ」「タリバンが自身の制圧する新政府の樹立を求める一方で、アフガニスタン政府はタリバンを現政府に編入することを望んでいる」「アフガニスタン政府は極めて脆弱で、新たな軍事戦略の採用しなければは交渉による和解を得ることが出来ない」と述べた。
―ホワイトNATO副報道官は3日、「NATOは、タリバンとの激戦を展開するアフガニスタン政府軍に医療物資を送った」「アフガニスタンの治安状況は非常に厳しい」「NATOはアフガニスタンから撤退しているが、同国、とりわけ治安維持に向けた政府軍への支援は継続する」と述べた。
○ マグレブ情勢
―チュニジアを訪問中のシュクリー・エジプト外相は3日、「安定と安全、そして国民の意志の実現に向けて、サイード大統領が憲法の枠組みで取った一連の措置への完全なる支持に関するシーシー大統領のメッセージを同大統領に伝えた」と述べた。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
ー米誌「フォーリン・アフェアーズ」は、米国が撤退する中、中東の安定にはサウジ・イランの対話が重要で、米国はこれを助ける必要がある、との記事を掲載し注目されている。共著者によると、米外交政策の優先順位が下がったことで中東は大きく混乱する可能性があるが、これを防ぐには対立するサウジ・イランの和解が重要。しかし、イエメン、イラク等で攻勢を張るイランから実質的な譲歩を得たいサウジと、そのような用意のない、強気のイランの合意成立は困難かもしれない。(アルクドゥス・アルアラビー紙)
元原稿は、
中東の新型コロナ動向
ーWHO東地中海事務所は、同事務所管轄の15カ国(中東北アフリカ)で、デルタ型変異株の感染拡大により新規感染者数及び死者数が激増していると、懸念を表明した。これらの地域全体では、過去4週間の平均値で週あたり36万3千人が新規感染し、4300人が死亡した。この値は前月と比べてそれぞれ67%、24%増加した。一部の国では検査体制が不十分であるため、この値は実際より小さい可能性がある。
ワクチンについては、次の通り遺憾の意を表明した。地域全体で1億3200万回分が供給されたが、接種を完了した者の数は4400万人(人口比5.9%)に留まっている。全ワクチン数の41%は富裕国6か国で費消された。その人口は地域全体の6%に過ぎない。(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―特になし