アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
7日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ レバノン・イスラエル国境で緊張が高まる。ヒズボラは「イスラエルの空爆にロケット弾で反撃した」と発表。両国が互いに対する苦情を安保理に申し立てへ。国際社会は緊張緩和を呼びかけ
■ 安保理、オマーン沖でのタンカー攻撃をめぐって協議。米中央軍は「攻撃の責任はイランにある」と結論付けた文書を公開。米とイスラエルは対イランでの将来的な勢力集めで連携
■チュニジア大統領、元高官らに対する渡航禁止措置を決定。ナハダ運動は「恣意的措置」を止めるよう要請
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―ヒズボラは、「5日未明の南レバノンの空き地に対するイスラエルの空爆への反撃として、イスラエルが占領中のシェバ農場にある同国の拠点周辺をロケット弾数十発で攻撃した」と発表した。ヒズボラに属する「軍事メディア」が砲撃の様子を示す映像を公開。
―(上記後)イスラエルが南レバノン東部のカファル・シューバー村とヒバーリーヤ村周辺の空き地を砲撃し、山火事が発生。その後平穏が戻った。
―ヴロネツカ・レバノン担当国連特別調整官は、過去数日のレバノンとイスラエルによる攻撃の応酬への懸念を表し、さらなる情勢激化を避けるためとして、最大限の自制を全勢力に呼びかけた。また、安保理決議1701号を全面的に順守して安全と安定を維持する必要性を強調。ハック国連事務総長副報道官も最大限の自制を呼びかけた。
―イスラエルはヒズボラのロケット弾攻撃について、安保理に緊急の苦情申し立てを行った。同国のエルダン駐米・国連大使は安保理への書簡の中で、「イスラエルはレバノン国内から発する全ての出来事の責任が同国政府にあるとみなす」と記した。一方、レバノン外務省も、過去2日間のイスラエルの攻撃への非難を求めて安保理に苦情を申し立てる方針を発表し、「イスラエルの攻撃はレバノンの主権の侵害であり、国連憲章と国際決議に反する」と声明した。
―国連安保理は、7月29日にイスラエル系企業が運航する石油タンカー「マーサー・ストリート」が受けた攻撃をめぐって協議する会合を開いた。終了後、英のウッドワード国連大使は「攻撃は意図的に計画されたものであり、その責任はイランにある」「イランの活動は国際の平和と安全を脅かす」と述べた。
―イランのエルシャディ国連次席大使は、上記のタンカー攻撃についてイランに向けられた非難を「イスラエルの犯罪に対する世界の注目を逸らすための試み」と評し、「イスラエルの政権は、他国に責任を押し付けることで自国の犯罪歴を消すことは出来ない」「イランはためらわずに自国を守り、国益を確保する」と強調した。また、「イスラエル国防相はイランに対して武力を行使すると脅した」として、このような「冒険や計算違い」を犯さないよう警告した。
―G7の外相らは共同声明を発し、「イランの振る舞いと武装勢力への支援は、国際の平和と安全を脅かす」「全ての証拠がタンカー『マーサー・ストリート』への攻撃の責任がイランにあることを示している」「攻撃は意図的なもので、明白な国際法違反だ」と非難した。
―米中央軍が発した声明によると、(上記の)タンカーは、7月29日の夜に無人機2機による攻撃を受けたが、未遂に終わっていた。同船が受けた損傷は、翌30日に軍事用の爆発物を搭載した3機目の無人機から攻撃を受けた結果だという。3機のうち少なくとも1機の小さな破片が発見されている。タンカーには、無人機が衝突した時に発生した爆発で直径約6フィート(約1.8メートル)の穴が生じたことが確認された。また、検査によって、硝酸塩系の火薬の存在が確認され、これがRDXだと特定された。このことは、無人機がタンカーを破壊して損害を与える目的で飛ばされたことを示しているという。
―カービー米国防総省報道官は、「オースティン国防長官は、イスラエルのガンツ国防相とタンカー『マーサー・ストリート』への攻撃をめぐって協議した」「国防長官は、イランの活動の拡大と無人機の使用への懸念を示し、米は地域の安全保障のため緊密に協力すると確認した」と述べた。両者は「航行の自由を脅かすイランの攻撃」の非難に関して、同盟・パートナー諸国と共に取り組むことで意見が一致。今後の動きについても話し合ったという。
―オバマ政権時にホワイトハウスのグローバル・エンゲージメント担当者だったブレット・ブルエン氏の話(ワシントン):(「イスラエル・ヒズボラの情勢激化とタンカー攻撃の間に繋がりがあると見ているか」と問われて)これらの事件に繋がりがあることに疑問の余地はない。欧米への圧力を強めて、核合意をめぐる交渉で妥協を引き出そうとするイランの戦略の一部だ。イランの目的は制裁の緩和だ。イランは様々なやり方で、自国が「犠牲者」だというイメージを広めようとしているが、イランが米にとって危機的な状況を作り出し、核合意に関してより大きな利益を引き出そうとしていることがあらゆる証拠から示されている。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―デローレンティス米国連次席大使は安保理会合で、「アフガニスタンで軍事的に権力を掌握する道を選んだら、タリバンは国際的に孤立し、つまはじきにされるだろう」と述べて、攻撃を直ちにやめて包括的・恒久的な政治的解決を目指すようタリバンに求めた。安保理会合と時を同じくして、タリバンは「ニムルズ州の州都ザランジ制圧した」と発表。タリバンが州都を制圧するのは、(駐留米軍の撤収開始以降)今回が初めて。
○ マグレブ情勢
―チュニジア検察は、「前政府の高官数人について、渡航禁止措置を決定した」と発表した。これに先立ちナハダ運動は、当局が幹部(元閣僚のアンワル・マアルーフ氏)を自宅軟禁の状態に置いたことを受け、「恣意的措置」を停止するよう呼びかけていた。一方、サイード大統領は「後戻りはない。一部の者のこちらを動揺させて策略を実行する試みは、前進への決意をより強くするだけだ」と述べた。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―米民間シンクタンクの「ストラトフォー」は、イランがライシ新政権誕生と同時にタンカー攻撃を激化させているのは、核合意再開交渉(制裁解除)で優位に立つための「瀬戸際」戦略であるが、国際商業航路の安全を脅かすこの行動が、交渉の決裂を早める恐れも十分にあると報告している。(アルアラブ紙)
中東の新型コロナ動向
―中東のほとんどの国で感染拡大がみられる中、カタールの感染状況はかなり落ち着いている。同国では昨年5月末と今年4月をピークとする2回の感染拡大局面があったが、5月下旬より、新規感染者数は150~200人程度に抑えられている。これに伴い、現在感染者数も2,000人を割り込んでいる。死者は隔日に1人を数える程度で、7月28日以来発生していない。
<特記事項・気付きの点>
―特になし