2021年8月9日 (No.21131)

アルジャジーラ・モニタリング

<ニュース・ヘッドライン>

9日0600JST「ミッドナイト・ニュース」

■ イスラエルのタンカーに対する攻撃をめぐり、イランは「英が『外交的に対応する。軍事エスカレートの意図はない』と伝えてきた」と明かす。イスラエルはイランを「域内を不安定化させている」と非難し、「代償を払うことになる」と脅迫

■ タリバン、2日間で5つの州の中心都市を制圧し、「戦争を始めたのは政府側だ」と非難。政府はクンドゥズ奪還作戦を開始。米、「タリバンは軍事行動によって正統性や承認を得ることはない」と主張

■ エチオピアのティグレ人民解放戦線(TPLF)が新たな地域を制圧。エチオピアの政府は「TPLFが民間人240人を殺害した」と非難。スーダン、「エチオピア領を占領している」との発言に対し、駐エチオピア大使を召還

<特定関心項目報道ぶり>

○ 日本関連報道

―特になし

○ イラン・イラク・シリア情勢

―先月末にオマーン沖で起きたイスラエルのタンカー「マーサー・ストリート」への攻撃をめぐり、イランの「ヌールニュース」は、英政府がイラン政府に「緊張を高めて軍事行動に向かおうとはしていない」と伝えてきたと報じた。このメッセージの中で英は「タンカー攻撃には同盟関係を通じて外交的に対応する」「軍事行動を排除するのは、米と共通した立場だ」と強調した由。

―上記に先立ち、ベネット・イスラエル首相は閣議の冒頭で「マーサー・ストリートを攻撃したのはイランだ」と改めて述べた。また「イランは世界の安定と平和への差し迫った危険だ」とし、「域内で空前の事態激化を起こした代償を払わずには済まないと理解すべきだ」とイランに呼びかけた。また、ライシ・イラン大統領を「強硬で過激な人物」と評した。

―ボレルEU上級代表は、「全ての証拠が(イスラエルの)タンカーへの攻撃にイランが関与したことを明確に示している」と指摘した。

英のウィリアム・バーティ元駐イラン大使の話:タンカーへの攻撃が「イランの責任だ」としていた英のトーンが変化した。英は最新のイランへのメッセージで、「タンカー攻撃の責任がイランにあることを英は知っている」と示唆し、「イランが現路線を続ければ更なる事態激化に至る」と指摘しつつ、緊張の緩和を試みた。結局のところ英は、イランを核合意をめぐる交渉の席に戻したい。これがメッセージの動機だ。イランの望みはもちろん制裁の解除である。(イスラエル首相が改めて対イラン強硬姿勢を示したことについて)イスラエルとイランの双方に衝突を志向する者がいるが、英米やEUが望んでいるのは、イランとの交渉再開、それによる制裁解除と緊張緩和だ。この点でイスラエル政府の立場は異なるのだろう。(レバノン・イスラエル国境地帯の展開=ロケット弾発射と空爆の応酬=が関係各国を『一歩引かせた』のかとの問いに対して)そうだ。ヒズボラを通じたイランの対イスラエル代理戦争という事態激化は、英やEUの利益にならない。また、イランがヒズボラへの精密誘導兵器の供給を続ければ、想定外のイスラエルの激しい報復を招くだろう。イランによるペルシャ湾岸地域での現在の振る舞いの継続も、深刻な事態激化をもたらす。事態を沈静化させ、核合意の交渉に回帰する状況を見出すことが全当事者の利益であり、イランも緊張緩和を意図していると考える

○ サウジ・イエメン・湾岸情勢

―イスラエルとバーレーンは、研究分野で協力を強化し、「理念の戦争(war of ideas)」でイランに対抗することを目的とした協定を締結。バーレーンのアブドラ・ビンアフマド外務次官、イスラエルは「エルサレム公共問題センター(JCPA)」のドリ・ゴールド所長が調印した。4日間の予定でイスラエル訪問中のバーレーン外務次官は、イラン核合意について「域内の危機を煽り、憎悪と過激主義を増し、欧州への難民流入を倍増させた」と批判した。

○ エジプト情勢

―特になし

○ 中東和平(占領地情勢)

―特になし

○ 国際テロ・過激主義情勢

―アフガニスタンのタリバンは、新たに3つの州の中心都市を制圧したと発表。これで、タリバンが掌握する州の中心都市は5か所に増えた。ムジャーヒド報道官は「ハドラ・スルターン地区、北部サマンガーン州の政府庁舎を抑えた」とし、「最近の諸事件は予想されていた。政府が祝祭の日に攻撃を宣言し、戦争の道を選んだからだ」と主張した。

―アフガニスタン内務省は、政府の部隊がクンドゥズ(人口27万人の重要都市)を奪還する作戦を開始したと発表。「この軍事作戦はジョウズジャーン州とサルポル州に拡大する」としている。

―在カブール米大使館は、「タリバンは攻撃を継続しても自身が欲する『正統性』に近づくことはない」と声明。直ちに停戦を順守するよう呼びかけた。

アフガニスタンの戦況レポート:アフガン政府は31州で重要施設を掌握している。郡の数でみると、398郡のうち約200郡を支配/パキスタンとのトルカム、スピン・ブルダクの両国境、ウズベキスタンとのハイラターン国境、イランとのイスラム・カラア国境はタリバンの支配下にある/南西部二ムルーズ、北部タハール、クンドゥズ、ジョウズジャーン、サルポルの各州でタリバンが中心都市を掌握した。現在、クンドゥズで政府とタリバンが衝突している/タリバンは1か月前から南部のヘルマンド、カンダハル両州の制圧を試みている。だがアフガン政府と米軍は空爆でタリバンが両州の中心都市に至るのを阻止。この空爆でタリバンはヘルマンド州の大半の現場指揮官を失った/タリバンは北部で前進を成し遂げた。ただ同地はタリバンの支持基盤ではなく、「反タリバン民衆勢力」が元戦闘員を中心に形成されている

○ マグレブ情勢

―特になし

○ トルコ情勢

―特になし

<その他の重要ニュース要旨>

―スーダン外務省は、駐エチオピア大使を「協議のため」に召還した。エチオピア高官が「スーダン政府はティグレ州の紛争終結を支援することを拒んでいる」「スーダンはエチオピア領を占領している」と発言したことへの抗議。

―エチオピア北東部アファール州の政府広報部は、「ティグレ人民解放戦線(TPLF)の砲撃により、アファール州で子供107人を含む民間人240人が死亡した」と発表。アファール州と隣接するティグレ州との境界地帯で衝突が続き、TPLFがアファール州の4地域に侵攻している。

エリコの目

―東京オリンピックでアラブ諸国は合計18個のメダルを獲得した。国別、種類別に次のとおり。
1.カタール(金2、銅1) 2.エジプト(金1、銀1、銅4) 3.チュニジア(金1、銀1) 4.モロッコ(金1) 5.ヨルダン(銀1、銅1) 6.サウジアラビア(銀1) バーレーン(銀1) 8.クウェート(銅1) シリア(銅1)。
競技別でみると金メダル(計5個)を獲得したのは、重量挙げ、走り高跳び、空手、水泳、3000m障害の各種目。空手、テコンドー、レスリングの格闘技種目が多く、合計9個、球技はカタールの男子ビーチバレーが銅をとったのが唯一であった。(RTアラビア語)

中東の新型コロナ動向

―イランでは、8日、1日の新型コロナによる死者数が初めて500人の大台を超え、542人が記録された。新規感染者数も天井知らずの増加を続けており、8日の集計は39,619人となった。(アッシャルク・アルアウサト紙)

https://aawsat.com/node/3121486

<特記事項・気付きの点>

―特になし

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