アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
14日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ アフガニスタンのタリバン、新たに7州を制圧。親政府の部族指導者らは北部諸州の防衛を誓う。米は「タリバンの言葉ではなく行動を見る」と声明
■ 米、「イラン革命防衛隊傘下のコッズ部隊の利益となる国際的な原油密輸ネットワークに関与した」として企業・個人に制裁を科す
■ホワイトハウス、「米代表団がチュニジア大統領と会合し、能力ある政府樹立を委任する首相を選ぶ必要性を話し合った」と発表
■レバノン大統領、燃料危機を協議するため特別に閣議を開くよう呼びかけ、燃料補助金打ち切りにこだわる中銀総裁を非難。職務執行内閣首相は大統領の呼びかけを拒否
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―米は国際的な原油密輸ネットワークのメンバーらに対して制裁を科した。その幹部らがイラン革命防衛隊に属する「コッズ部隊」に支援を提供したとの理由。これについて、ブリンケン国務長官は声明を出し、「制裁の対象となったオマーン国籍のブローカーは、複数の企業を利用してイラン産の原油を外国の顧客に輸送するのに便宜を図った」と明らかにし、「革命防衛隊は原油の売却利益を邪悪な活動の資金にしている」「革命防衛隊は原油売却への関与を隠蔽するにあたり、外国のブローカーに頼っている」と説明した。その上で、「米はこういった動きを支援する者らを摘発し、妨害し続ける」と表明した。
―レバノン大統領府の声明によると、アウン大統領は、燃料危機を協議するため職務執行内閣に特別に閣議を開くよう呼びかけ、「中央銀行総裁は法や決定事項に反して、燃料価格に関する補助金を打ち切ることに固執している」と非難した。同内閣のディヤーブ首相は大統領の呼びかけを拒否し、「憲法に反さないように留意している」として、一旦辞職した職務執行内閣であるという立場から、閣議を開かない姿勢を示した。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタンのタリバンは13日、「過去数時間で新たに7州を制圧した」と発表した。これにより、タリバンの支配する州はヘラート、カンダハル、ヘルマンド、ロガールを含む17州に達した。国土面積の3分2近くがタリバンの支配下に入ったことになる。首都カブールからあまり離れていないロガール州(州都からカブールまで直線距離で約50キロ)がタリバンの手に落ちたことで、住民らは最悪の事態を想定し、同市がタリバンに対する「最後の防衛線」になることを懸念。
―(上記後)タリバン広報担当は、「パクティカ州のジャニヘル地区を制圧した」と発表した。
―アフガニスタンのドスタム前副大統領(ウズベク人の指導者)と政党「イスラム協会」を率いるアタ・モハマド・ヌール元バルフ州知事(タジク人の指導者)は、北部マザリシャリフで会談して共同記者会見を開き、「バルフ州を含む北部諸州を武力で防衛する」と声明。ドスタム氏は、自身の支持者らを治安部隊の側に集めたとして、「バルフ州は北の玄関であり、タリバンが入ることは許されない」と述べた。アタ氏は、「民衆の側に立ち、人生の最後の瞬間まで彼らを守る」「治安部隊を全面的に支援する」とした上で、タリバンに対する民衆蜂起の必要性を強調した。タリバンは両者の会談について、未だコメントしていない。
―サレー・アフガン第1副大統領は大統領宮殿で開かれた会合後、「政府はタリバンに抵抗することを決定した」「全州で軍と民衆蜂起が必要とするあらゆる便宜を図る」と述べた。
―タリバンは声明を発し、「外国大使館や領事館、その他の外国組織の外交官や職員らのため、安全で信頼できる雰囲気を作る」「国民の生命と財産を守る」と約束。「タリバンが広範な地域を制圧できたことは、国民から受け入れられている証拠だ」と主張し、平常通りに生活するよう人々に呼びかけた。また、近隣諸国を安心させるため、これら諸国に対していかなる問題も引き起こさないと約束するメッセージを発信。これに加え、政府側に協力したことのある者、あるいは現在も協力している者の全員を恩赦の対象とすると発表。その一方で、「反タリバンのプロパガンダを行っている」として政府側を非難した。
―カービー米国防総省報道官は、「米軍はアフガニスタンのカブール国際空港と米大使館の警備を続ける」「アフガン駐留米軍は今も任務を遂行している」と述べつつ、同国への増派の開始を発表した。
―プライス米国務省報道官は同国のニュース専門放送局MSNBCのインタビューで、タリバンが「外交施設は攻撃しない」と宣言したことについて、「タリバンが言うことの全てを信用せず、その行動を見ている」と述べた。
―ハリルザード米アフガン特使は、「地域内外の諸国との相談の末、アフガニスタンでの9項目からなる停戦案を提示した」と発表した。その主な内容は以下の通り:武力によって権力を握る政府を一切認めない/都市への攻撃停止・政治的解決・合同政府樹立・人権尊重への呼びかけ/権限移行システムの特定/テロ集団との戦い/アフガン領を他国への攻撃のために使用しないこと/政治的解決に至るための方策を策定するようアフガン政府に呼びかけ。(以上)この停戦案はドーハで開かれたアフガニスタンをめぐる国際会議で提示された(米・中・英・パキスタン・ウズベキスタン・EU・カタールが参加)。
―CNNがよると、在カブール米大使館は職員らに対し、退去する前に重要文書や、機密内容を含むコンピューター機器等を破壊するよう指示した。外交筋の話では、情報機関の分析結果の1つに、タリバンがカブールを1週間以内に、おそらく3日以内に孤立させる可能性が示されているという。
―ジョンソン英首相は、アフガン紛争が軍事的に解決される可能性を否定。NATOもブリュッセルでの緊急会合の後、同紛争の政治的解決を目指す姿勢を改めて示した
○ マグレブ情勢
―ホワイトハウスは、「米のファイナー大統領補佐官(国家安全保障担当)代理が率いる代表団がチュニジアを訪れ、バイデン大統領からの書簡を同国のサイード大統領に渡した。議会制の民主主義の道に迅速に戻るよう促す内容だ」と声明で発表した。米代表団は同大統領との会合で、能力ある新政府を早急に樹立する必要性をめぐって協議したという。一方、チュニジア大統領府の声明によると、サイード大統領は「自由・正義・民主主義の価値に関して、懸念を呼ぶものは何もない」とした上で、「誤った情報を流布しようとする一部の者」に対して警告を発した。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―仏は、エチオピアで9か月前から続いている武力紛争を背景として、同国との軍事協力の停止を発表した。ティグレ人民解放戦線(TPLF)と政府軍の軍事衝突は、北部のティグレ州とアムハラ州の境で継続。米は同国に特使を派遣。国際社会では、同国での人道危機悪化への懸念が増している。
エリコの目
―欧米はカブール陥落は時間の問題と見て、大使館等の閉鎖と自国民退去を急いでいる。米国は、20年間支援した政権を見捨てるが、タリバンに自国大使館を襲わないよう依頼していたという衝撃的なニュースをNYタイムズ紙が報じた。しかし、政権側の高官の中には、カブールは防衛線が固く、数千人の兵士も国内各地から戻ってきているので長く持ちこたえるだろうと言う者もいる。
ウォレス英国防相は、「破綻国家はテロの温床となる。おそらくアルカーイダが帰ってくると非常に懸念している」と述べ、保守党のマーサー元国防相(英軍は米軍なしで戦えると主張している元将校)は、「英軍と戦死者遺族にとっての屈辱だが、それ以上にアフガン市民にとっての悲劇だ。英国はこの敗北を選択したのであり、恥ずべきことだ」と述べた。(アラビー21)
中東の新型コロナ動向
―サウジアラビアでは、人口の30%が新型コロナワクチンの2回接種を完了した。同国は人口の70%がワクチン接種することによる集団免疫の達成を目指している。教育省は、ワクチン接種を済ませた中高生の登校を新学期(今月末)から認める。一方、小学生以下については、人口の70%の接種が完了するか、しない場合は10月30日より、登校(登園)を認める予定。また、国内航空便の定員100%搭乗が、ワクチン接種者であることを条件に、9月1日から許可される。(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―特になし