アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
15日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ アフガニスタンのタリバン、北部の最重要都市であるバルフ州の州都マザリシャリフを制圧。政府軍は同市から逃走し、ウズベキスタンへの越境を試みる
■ アフガニスタンの州の約3分の2が政府の支配下から離れる中、大統領は首都防衛の新司令官を任命し、タリバンとの権力分割を協議する代表団を結成。カタール外相は、緊張緩和と停戦を促す
■ 米大統領、「カブールの大使館職員らの退避のため米軍5千人を配備する」と発表。米外交官らは、首都に向かって前進せぬようタリバンに警告し、軍事介入を示唆。英はアフガニスタンでの外交任務を終了させるべく準備
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―特になし
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタンのタリバンのムジャーヒド広報担当は、「タリバンが北部バルフ州の州都マザリシャリフを制圧した」と発表した。治安関係筋によると、政府軍は同市の主要基地から撤収し、空港に逃げ込んだ。また、同軍が同市から逃げてウズベキスタン国境に向かっている様子も見られた。同市は北部の最重要都市の1つ(人口で国内4番目の都市)。親政府部隊の指揮官は、「同州のすべての政府施設が、謀略によりタリバンに引き渡された」と述べた。また活動家らは、「北部にある(同州を守ると宣言していた軍閥の)ドスタム将軍の自宅にタリバンの戦闘員らが突入した際の様子」だとする動画をSNS上に公開した。(動画には同将軍の姿はなく、アタ・モハマド・ヌール元同州知事共々、逃走したとされる。)
―タリバンは既にアフガニスタン全34州のうち21州以上を制圧し、首都カブールから約70キロにまで迫っている。CNNが外交筋の話として伝えたところによると、ある情報機関は「タリバンは1週間あるいは3日間でカブールを孤立化させることが可能かもしれない」と分析している。
―アフガニスタン議会のある議員は、アルジャジーラに対し「諸部族長の仲介により、地方当局とタリバン武装勢力の間で、東部ナンガルハル州の州都ジャララバードのタリバンへの明け渡しに向けた交渉が続いている」と明らかにした。
―タリバン武装勢力がアフガニスタン東部ラグマン州の州都メフタルラームを制圧した際の様子を撮影した動画がSNS上に公開された。また同市でのタリバンの前進を受けて、政府軍部隊が撤退する様子を撮影した動画も公開された。
―アフガニスタン政府筋によると、ガニ大統領は、サミーウ・サーダート将軍を首都カブールの治安・防衛責任者に任命した。また同大統領は多くの政治家らが参加したハイレベル会合の後、ドーハでタリバンとの「共同政府の樹立と権限の分割」に焦点を当てた協議を行うための特別代表団の結成を決定した。この代表団には決定権限が付与される。
―上記より先に、ガニ大統領は「今は政府軍の動員が最優先だ」とし、「政府は、最近の国内の情勢展開について、諸政党・部族の指導者や同盟国との一連の協議を開始した」と述べていた。
―ムハンマド・カタール副首相兼外相は、ドーハでバラダル・タリバン政治事務所代表と会談し、「緊張緩和と停戦により、包括的・政治的解決に向けた取り組みの加速化に貢献するよう」タリバンを促した。
―バイデン米大統領は、「アフガニスタンに駐在する(外交官ら)米国人の組織的で安全な退避を確実にするために、米軍約5千人を同国に派遣することを承認した」と発表し、「タリバンに対し、米国人を危険に晒すいかなる行為も米軍の迅速かつ強力な反撃を受けることになると警告した」と明らかにした。米大統領府の声明によると、同大統領は国務長官に「更なる流血を防ぎ、政治的解決に至るための取り組みにおいて、ガニ大統領やアフガン政府高官らを支援するよう」指示した。更に「米軍があと1年あるいは5年残留したとしても(アフガン政府軍が自国を維持することができなければ)違いを生むことはない。米軍が他国の内戦中に常駐することは容認できる選択肢ではない。自分はアフガン駐留米軍を監督する4人目の大統領だったが、この戦争を5人目には引き継がない」と述べた。
―ブリンケン米国務長官は、ガニ大統領と電話会談し、アフガン情勢について協議した。国務省の声明によると、両者は、現在進行中の「暴力に歯止めをかけるための外交・政治的努力」の緊急な必要性について話し合った。
―ワシントン・ポスト紙によると、ハリルザド米アフガン特使は、ドーハでタリバンの政治幹部らと会合した。同紙によると、米の外交官らはタリバンに前進を止めるよう求め、「前進を続ければ、タリバンの戦闘員らは首都カブールで米軍と直接対決することになる」と警告、「同市からの米国人外交官らの退避完了を待てば、国際社会とアフガン人がタリバンが首都に入ることを容認する可能性が高まるだろう」と指摘した。一方、タリバン幹部らは、同組織戦闘員らの前進を止めるために米が激化させている空爆を終了させるよう求めた。また同紙は、「ガニ大統領は、権限分割計画で政府代表団がドーハに到着するまで少なくとも1週間待つよう提案した。ただしこのスケジュールは、情勢が急展開する中で現実的ではないと見られている」と伝えた。
ワシントン特派員のレポート:現在の米の最大の懸念事項は、米の外交官や請負業者など米国人全般のカブールからの安全な退避だ。大使館職員や請負業者の退避が実際に始まり、帰国に向けて、トルコ軍が安全を確保する中でカブール空港に一部が到着したとの報告もある。もう1つの懸念事項は、米軍がまだアフガニスタンに駐留し、タリバン武装勢力が前進を続ける中で、何らかの軍事的な間違いが発生し、衝突となることだ。それを避けるために、タリバン・米の双方が相手方に警告を発している。こうした中、米がアフガニスタンに戦略爆撃機B-52を派遣したとの話もある。バイデン大統領は、最後の最後にカブールの米国人が攻撃に晒されないよう、タリバンに強い軍事的メッセージを送ろうとしているのだろう。
―アフガニスタンでは各地での戦闘を逃れて国内で避難する人々が増加し、新たな難民問題の発生が懸念されている。国連によると、今年5月末以降、同国内で家を追われた人々の数は約25万人で、そのうち8割が女性と子供。これにより、国内避難民の総数は350万人超となっている。戦闘の激化により生活・食糧・衛生状況が悪化し、新型コロナウイルス感染症で1日100人の死者が出ている(国連当局者の話)という中で、国境を越えて難民となる人々が増えるものと予想されている。国外のアフガン難民の数は推定260万人で、大半が近隣諸国に滞在し、パキスタンとイランが約9割を受け入れている。人権諸団体は、近隣諸国に「戦闘から逃れてくる人々に対し、国境を開いておくよう」求めている。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―「アブラハム合意」の一部として、イスラエルとUAEの間では「MED-RED Land Bridge」と呼ばれるエイラートを経由する石油パイプライン計画があるが、世界有数のサンゴ礁への影響を懸念するイスラエル新政府によって計画の「見直し」が始まったため、計画は中止される可能性がある。UAE高官は、外交関係を悪化させるほどの「合意破り」であると憤慨している。
中東の新型コロナ動向
―トルコのエルドアン大統領は、同国が開発中の新型コロナワクチン「トルコヴァック」の臨床試験が「非常にうまくいっている」と述べ、「(臨床実験は)第三段階に来ている。今年末までに投与開始することができるかもしれない」との見通しを示した。
トルコは、全国民のワクチン接種を目指しているが、「政府が非ワクチン接種者で公共の場等へのアクセスを希望する者にPCR検査を義務付けるか?」との質問に対して大統領は「それは人権侵害に当たる」と否定した。(アルクドゥス・アルアラビー紙)
<特記事項・気付きの点>
―アフガニスタン情勢に特化したニュース報道体制を取ったため、「ミッドナイト・ニュース」はなし