アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
16日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
(アフガニスタン情勢を特別体制で報じたため、ヘッドラインはなし)
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―特になし
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタンのタリバンは15日夜、首都カブールに侵攻して大統領府を制圧した。アルジャジーラの独占映像では、大統領府の職員がタリバンに宮殿を引き渡す様子や、タリバンの戦闘員が首都の各地に展開する様子が写っている。
―タリバンは大統領府制圧後の声明で、「政府軍が首都カブールから撤退したため、混乱や略奪の発生を阻止すべく、(カブール市外で待機させていた)戦闘員に市内への突入を指示した」「戦闘員は誰にも危害を加えることはなかった。政府軍には衝突を避けるよう呼びかける」と述べた。
―AP通信の15日夜の報道によると、シャヒーン・タリバン政治局広報担当は「タリバンは包括的な政府の樹立に向けた対話を行っている」と述べた。また、バラダル・タリバン政治局長は(ビデオ声明で)国民への祝福の言葉を伝えた際に、「タリバンが首都に突入し、全土を掌握したことは重大な責任だ」「主要都市が1週間で陥落したことは予想外に迅速で、比類なき偉業だ」「タリバンは予想していなかった段階に達した。共存が可能であることについて、タリバンはどのようにしてアフガニスタン国民を安心させるか試される段階に入った」と述べた。
―ナイーム・タリバン広報担当はアルジャジーラのインタビューで、「タリバンは20年前に勃発した戦争を終結させた。アフガニスタン国民が安定を享受する日に近づいた」「権力の分割と、国の安定が目標だ」「アフガニスタンを今後統治する体制の種類を(現時点で)特定することは出来ない。政権の形は近く明らかになる」「国の安全の実現と、腐敗のない公平な体制を望んでいる」「タリバンは各方面と交渉を行うことに開けているが、アフガニスタン国民は他者(外国)からの指示を受け入れないだろう」「タリバンは孤立することを望んでいない。国際社会との関係を望む」「カブールの各大使館や外交使節団に対する脅威は存在しない」と述べた。また、「シャリーア(イスラム法)の範囲で女性と少数派の権利、表現の自由を尊重する」と約束し、「タリバンは誰のことも切り捨てていない。各州の知事らが今も立場を保っていることがその証だ」と指摘したほか、「タリバンはアフガニスタンの領土が誰かに対する攻撃に利用されることを容認しない」「我々は他者への干渉を望んでおらず、他者からの内政干渉を容認しない」と確認した。
―サラーハッディーン・タリバン安全保障局局長は大統領宮殿内から応じたアルジャジーラの独占インタビューで、「タリバンは、アフガニスタン国民の各層が参加する政府を望んでいる」「タリバンの政治委員会が最終的な決定を下す」「誰にも権力を独占することはできない」「タリバンの指導部をカブールに戻すための準備が進められている」と述べた。
―消息筋によると、タリバンは米国民らの退避に向けて空港の警備にあたっている米軍との衝突を回避すべく、戦闘員の展開する地点について米側と調整を行った。こうした中、米国務省と国防総省は15日、「退避を加速するため、今後48時間で駐留米軍の規模を6千人に増強する」と発表した。
―タリバンの首都進攻を受け、政権幹部複数と共に国外に脱出したガニ大統領はフェイスブックに投稿し、「タリバンは勝利した」「多数のカブール市民の命を危険に晒すことになったであろうタリバンとの衝突と、流血を避けるために出国した」と述べ、「タリバンは戦争に勝利したが、アフガニスタン国民の心を失った。国民は将来を恐れている」として、「国民の信頼を得るために、女性および各民族を保護するよう」タリバンに求めた。現在の居場所は明らかにせず。
―ガニ大統領の大統領警護官はアルジャジーラのインタビューで、「ガニ氏とその妻らの家族、国家安全保障顧問と事務所代表はウズベキスタン首都タシケントに向け旅客機2機で出国した」「大統領らの出国は突然だった。各高官が衝撃を受けた」「タリバンへの大統領宮殿の引き渡しを行うことは光栄だ。このことが流血なく完了したことは幸いだ」「ガニ大統領から、『政権移行に向けてカルザイ元大統領との調整を継続するように』との連絡があった」と述べた。ウズベキスタンはこれを否定。一方でトルコのアナトリア通信は、「ガニ氏らはオマーンに到着した」と報じた。
―カルザイ元大統領は15日に声明で、「アフガニスタンの危機を平和的で友愛的な方法で解決すべく、タリバン指導部に連絡した」「ガニ大統領らの国外脱出後の混乱を防ぎ、権力の平和的移行に向けて、私と、アブドラ国家和解高等評議会議長、『ヒズベ・イスラミ・ヘクマティアル派(HIG)』のヘクマティアル代表の3人から成る調整会議を立ち上げた」と発表。
―アブドラ国家和解高等評議会議長は、「ガニ氏は出国し、アフガニスタンとその国民を今の状況に陥らせた」「神は同氏を裁くだろう。また、国民は元大統領(ガニ氏)を評価するだろう」と述べた。
―カルザイ元大統領の発表を受け、ザリーフ・イラン外相は政権移行を管理する調整会議の立ち上げを歓迎し、「同会議の調整が、対話と、政権の平和的移行に繋がることを期待している」「暴力と戦争は占領と同様に、問題を決して解決しない」「「イランは、平和の確立に向けた取り組みを継続する用意がある」と述べた。
―国連は声明で、「国連事務総長はアフガニスタンの女性と少女たちの将来を特に懸念しており、苦労の末に確保された彼女たちの権利を守るべきだ」「安保理は16日に緊急会合を開き、アフガニスタン情勢について協議する」と述べた。また、グテーレス事務総長は報道官を通じて、「タリバン及び各当事者に対し、最大限の自制を求める」と述べた。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
ー誰もが聞く質問「アフガニスタンはどうなるのか?」アトワーン編集長のコラムを要約した。
①「アルカーイダ」が戻るということはなかろう。ビンラディンは殺害され、過去の人に。タリバンは国際的な承認と支援を必要としている。しかし、米が中国ウイグル族の問題に介入してテロ組織を育成する可能性は排除できない。
②内戦(が新たな形で)継続の可能性は排除できない。タリバンの弾圧に抗するシーア派住民、タジク人、トルクメニスタン人が存在し、これをカードに使いたい外国勢力が存在する。
③ロシアとイランはタリバンの対米戦争を支援してきた。(恩義があるため?)タリバンはタジキスタンの安定を損ねたり、マザリ・シャリフのシーア派住民を抑圧したりはしないだろう。
④タリバンの最大の支援国はパキスタン。パキスタンは、現状、イラン、トルコ、中国との戦略的結びつきが強い。タリバン支援を止めなかったため、米国は対パ軍事援助を凍結した。
将来を予測することは難しい。タリバンは現状、ムッラ・バラダルの指揮下で統一されているが、一枚岩ではない。米国はじめ西側がどう出てくるかによって今後のタリバンの政策が大きく影響を受ける。(ラアイアルヨウム紙)
中東の新型コロナ動向
本日はお休みします。
<特記事項・気付きの点>
―アルジャジーラは16日未明より、大統領宮殿を「接収」するタリバンの一団に同行取材し、大統領執務室で元大統領警護官から同宮殿の引き渡しを受ける模様、現場での臨時の記者会見等を独占生中継して、アフガニスタン情勢を重点的に報道した。