アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
18日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ タリバン報道官、初めてメディアに姿を見せ、「他者への攻撃にアフガニスタンを使わない」と約束。「信教の自由を尊重する」と強調、「女性に全面的に権利を与える」との意向を示す
■ ドーハでの協議後、タリバンのバラダル政治局長がカンダハルに到着。EU、「タリバンは勝利した」「タリバンと対話せねばならない」と指摘
■ 米、タリバンとISについて「戦闘し、争う関係にあった」と指摘。「米はタリバンとの交渉に関わっていく」と強調
■ IAEA、「イランは核兵器製造の水準へとウラン濃縮を加速させた」と指摘。イラン外務省は、「平和的な核開発だ」とし、「関連措置の停止は欧米の義務履行次第だ」と声明
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―IAEAは、「イランは、核兵器製造に必要な段階に近い水準へとウラン濃縮を加速させた」と指摘。一方、イラン外務省は、「我が国の核開発は平和的であり、いかなる軍事目的もない」と声明。また「核合意の義務履行を軽減するこうした措置の見直しは、欧米の義務履行次第だ」とした。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタンのタリバンは17日、国内外を安心させるためのメッセージを発した。ムジャーヒド報道官がカブールで記者会見し、初めてメディアに姿を見せた。報道官は「アフガン領を他者に対して(攻撃に)使うことはない」と約束。「全アフガン人の信教の自由を尊重する」「我々イスラム首長国は女性に、イスラム法と(人定)法が与えた全面的な権利を与えると誓う」と述べた。また、報道の自由について「メディアの活動、その自由と独立性を認める」と語った。
―ムジャーヒド報道官は記者会見で、「アフガンは20年前も現在もイスラム国家だ。しかし20年前と現在の状況は大きく異なる」と指摘。「女性は政府の各部門で職務に就き、女性へのポスト割り当てがあるだろう」と述べた。
―タリバンは「全ての政府職員を恩赦する」と発表し、職務と日常生活に戻るよう職員らに呼びかけた。これに関してタリバン「文化委員会」委員はTVで、「恩赦は反対派や、何年も外国軍を支援してきた者、(前政権の)閣僚や顧問、議員も含む。もし彼らがイスラム体制の統治下の暮らしを受け入れるならば」と語った。また委員は、「アフガニスタン・イスラム首長国は女性に、イスラム法に基づき、アフガンの文化的価値観に沿う形で、学習や仕事をし、各機構で活動することを認める」と述べた。
―タリバンの幹部はロイター通信に、「退避後のカブールの外国公館に入り、施設や所有物に手をつけることがないよう戦闘員に指示した」「外国の代表を尊重しないかの行動をとらないよう命じた」と述べた。またムジャーヒド報道官は、「カブールは制御下にある。破壊行為に関与した者は逮捕した」「前政府高官の住居に立ち入り彼らを脅かすことは許さない」と強調。
―カブール空港周辺では、出国の手段を求める群衆が詰めかけ、緊迫した状況が続いた。タリバンの空港警備責任者は、「今月21日に民間人に対して空港を再開する。多数のタリバン要員が空港の民間機発着部分に入り、警備を始めた」と述べた。また「空港内と滑走路には群衆はいない。空港の周囲で彼らを解散させるべく試みている」と説明。この際、出国を望む群衆への威嚇射撃があり、流れ弾で女性が負傷した。一方、米軍が警備する空港内では各国外交団などの退避が続いた。
―タリバンのナイーム政治局報道官は、「アフガニスタン・イスラム首長国のバラダル政治局長が率いるハイレベル代表団が、ドーハからカンダハル入りした」とツイート。バラダル局長はこれに先立ち、ドーハでムハンマド・カタール外相と会談した。局長がカンダハルに向かったのは、カルザイ前大統領、ヘクマティヤル「イスラム党」党首、アブドラ国家和解高等評議会議長の3者と会談が予定されていた時間帯。
―カタール外務省によるとカタール外相は、タリバン政治局長との会合で、「アフガンの治安・政治状況」「民間人の保護」「国民和解、包括的政治解決に向けた取り組み強化」「アフガン国民が実現したことを重視しつつ、平和的に政権を移行すること」について協議。
―サーレハ・アフガン第1副大統領は、「大統領の辞任や不在、死去の場合の対応を定めた憲法規定に基づき、副大統領が暫定大統領となる」「現在アフガン国内にいる私が正統な大統領だ。各勢力の支援と同意を取り付けるべく指導者たちと連絡をとっている」と述べた。
―ワシントン・ポスト紙によれば、米大統領府は今月15日、米の銀行のアフガン政府の預金を凍結した。「タリバンが巨額の資金を得るのを防ぐため」で、米財務省が国務省や大統領府と協議の上で決定した由。
―カービー米国防総省報道官は、「カブール空港での米軍の作戦は、現時点でタリバンのいかなる攻撃にも脅かされていない」とし、「この状態が続くことを望む。今日(17日)の終わりに米兵4千人が空港警備の任務に就く」と述べた。
―米統合参謀本部のハンク・タイラー作戦責任者は記者会見で、「米軍はカブール空港の安全確保のみに専念する」と述べた。「空港外の退避を成功させるのに必要な措置に関する質問については、米国務省に回答を委ねる」とした。
―サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、タリバンとイスラム国ホラサン州(IS-K)について、「過去、戦い争う関係にあった」と述べた。また「タリバンは、人権の保障、カブール空港への安全な通行路の確保という義務を果たし、国際社会に自らの性格を証明すべきだ」と語った。
―プライス米国務省報道官は、「米はタリバンとの協議に加わっている。ドーハの交渉チームを通じて今後も対話していく」と述べた。また「民間人のカブール空港への安全なアクセスをタリバンが保証しているか、注視している」「現場の民間人の安全、流血阻止についてタリバンと集中的に協議している」とした。
ワシントン特派員:カブール空港は米軍、空港周囲はタリバンが掌握している。米は今後、毎時300人のペースで退避を進め、タリバンの妨害がない限り、数日内に作戦を終えたい考え。
これに先立ち米政府はタリバンから(退避作戦を妨げないとの)欲していた約束を取り付け、これに対して、関係各省の米高官が「タリバンは今のところ一発の銃弾も放っていない」等と、タリバンが聞きかった通りの発言をした。タリバンの約束は、バイデン大統領の国内での立場強化に資する「贈り物」と言える。米政府は現在、軍事的に撤退しつつ、政治的な立場形成に努めている。
米高官の発言からは、「タリバンの(国際社会への)復帰が実際に始まった」との認識がうかがえる。アフガンの新政府形成をめぐるドーハでの協議の行方はまだ見えないが、米は「タリバンが他勢力と合同の政府形成に同意するなら、タリバンの国際社会復帰、さらには、将来の(タリバン主導政府への)国際的な承認を後押しできる」とのメッセージを送っている。
―ボレルEU上級代表は、「タリバンは戦争に勝利した」「欧州人はタリバンと話さねばならない。その目的は、一刻も早い関係構築、人道上の悲劇回避、外国テロのアフガン回帰の阻止だ」と述べた。また「タリバンとの協議は必ずしもその政権の正式な承認を意味しない」と語った。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―イダルゴ・パリ市長は「ル・モンド」紙に対し「アフマド・マスウードの子アフマド・マスウードが率いるタリバンへの抵抗闘争を支援すべきだ」との考えを示した。イダルゴ市長は自身のツイッターアカウントを通じて「アフガニスタンとその自由を愛する男女を過激主義の闇に放置してはならない。国際社会、欧州とフランスがそこに存在しなければならない」と訴えた。(アルクドゥス・アルアラビー紙)
中東の新型コロナ動向
―カタール教育・高等教育省によると、今月29日から始まる新学期においては、幼稚園を含む各学校で「交代登校制」が導入され、50%の児童生徒が登校する一方、残りは自宅学習することとなる。同国の新型コロナ感染状況は落ち着きを見せており、ここ3週間、死者は発生していない。新規感染者数は1日200人前後で推移している。(アルクドゥス・アルアラビー紙)
<特記事項・気付きの点>
―特になし