アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
27日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ カブール国際空港周辺で自爆攻撃2件があり、米海兵隊の12人を含む約60人が死亡、タリバン・メンバーを含む140人以上が負傷。タリバンはこの攻撃を強く非難
■ IS、カブール国際空港周辺での攻撃の実行声明を出す。米中央軍司令官、「ISの脅威は続いている」「タリバンがこの攻撃を認めた可能性があるとは思われない」と述べる
■ 欧州各国政府、カブールにおける攻撃を非難。欧州理事会議長は、「アフガンでテロが復活しないよう保障すべく取り組む必要がある」と述べる
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―特になし
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―カブール国際空港の東ゲート付近で自爆攻撃2件が発生し、少なくとも60人が死亡、140人以上が負傷。APが伝えた米政府当局者の話によると、この爆発により米海兵隊の11人と米軍の医師1人が死亡した。また、空港の警備を担当していたタリバンのメンバー複数も負傷した。タリバンが15日にカブールに入ってから、初めての爆発発生となる。米政治専門サイト「ポリティコ」によると、米当局者は「イスラム国(ホラサン州)(IS-K)が同攻撃の背後にいる」と述べた。また、米ニュースサイト「アクシオス」によると、バイデン米大統領は国家安全保障問題担当チームと会合を開き、同攻撃をめぐり協議した。
関連レポートより:最初の自爆攻撃によるとされる爆発は、空港の東部にあるアビー・ゲート付近で発生。このゲートは民間用のゲート。この約1時間後、米・英・豪は「差し迫った危険な脅威」を警告し、自国民に対して「空港に向かわず、周辺から離れるよう」促したが、米軍兵士に死傷者が出た。米当局者らは、「IS-Kに今回の攻撃の責任があり、この先も(IS-Kによる攻撃が)起こり得る」と述べた。一方、2度目の爆発は、アビー・ゲートに近く、空港の向かいにある地域の「バロン・ホテル」の前で発生し、多数の死傷者が出た。死傷者は増加すると見られる。死傷者の中には子供やタリバンの空港警備にあたっていたメンバーも含まれる。このホテルは英軍が通常使用している。空港周辺の軍事状況はここ数日で変化しており、空港へ通じる主要道路、これは極めて重要で戦略的な道路であるが、タリバンが完全に制圧している。
―上記の攻撃を受け、バイデン米大統領は会見を開き、「米はタリバンとの共通の利益を有している」「タリバンとISとの共謀に関する現地からの情報はない」「米は適切な時期にアフガンのISを攻撃することを計画する」「敵であるIS-Kは米の攻撃実行を妨げることはできないだろう」と述べ、「アフガンにおける状況は展開し続けている」と注意を促しつつ、「米は米兵の家族に対する神聖な義務を履行し続ける」と確認した。また、「タリバンの『宿敵』であるISは、攻撃を仕掛ける計画をしていた」「これまでで最大の空路による退避作戦において、米人・アフガン人10万人以上を退避させた」と述べた。
―マッケンジー米中央軍司令官はカービー米国防総省報道官と共同会見(同司令官のみオンライン)を開き、「自爆実行者2人は、IS-Kに所属していたと見られている」「爆発後、IS戦闘員による民間人や軍部隊に対する発砲があった」「攻撃にもかかわらず、アフガンからの退避作戦は継続される」「現在、米兵12人が死亡し、15人が負傷、アフガン人多数が死傷したと把握している」「アフガンにおける米軍の脅威、特にISの脅威は現実のものだ」「ISによる攻撃は続くと予想される」「攻撃を受け、米はISに報復すると決意している」「タリバンが(ISに)攻撃を許した可能性があるとは思わない」と述べた。
―タリバンのシャヒーン広報担当はツイッターで、「タリバンは同空港での民間人を狙った攻撃を強く非難する。攻撃は米軍が治安面での責任を負っている地域で発生した」「タリバンは、市民の安全確保と保護に強い関心を向けており、凶行による災難は厳しさを以て食い止められるだろう」と表明した。
―タリバンのダイーフ元駐パキスタン大使は、「(上記攻撃によってアフガン人や米人が死傷した)責任は米にある」「人々を空港周辺に集結させ、このような事態を招いたのは米だ」「昨日25日から私は、攻撃や爆発が発生するかもしれないとの噂を聞いていた。攻撃の情報があるのに、なぜそれを止めなかったのか。(攻撃が発生した)地域はタリバンではなく、米の管理下にある」と述べた。また、「アフガンを支配できるのはタリバンだけだ。代わりはいない。タリバンは、権力の座に就き、国家を統治するために国際社会の協力と支援を必要としている」「タリバンは安定を定着させるのにふさわしい組織だ」「タリバンがこの先、多くの課題に直面すると認識しているが、これに立ち向かい、近隣諸国に『アフガンの領土を攻撃のために利用させない』と安心させることができると思っている」と述べた。
タリバンのナイーム政治事務所広報担当の話:空港という危険な場所に、数万人の人々が集まっていることは非常に危険であり、大きな問題だ。このことを外国軍に何度も警告していた。外国軍は多くの問題を抱えているが、第1の問題は多くの人々が空港に集結している事、第2は検問することができていないことだ。我々には責任はない/タリバンはいくつかの措置を講じ、諜報情報も有しており、外国軍にこれを伝えている。我々は更なる人々が押し寄せないよう措置を講じ、また、フェンスを設置して車が空港に近づかないようにしている/(退避のための安全な経路の確保をし続けているのか?)当然だ。外国軍にはできるだけ早く、予定通りの期日に出国して欲しい/(IS-Kについて)(まとまった)存在はなく、メンバーが各地に存在しているのみだ。周知のとおり、我々は東部のナンガルハール州やクナル州で彼らを殲滅し、アフガン政府もムジャーヒディーンの拠点を空爆し、多くが死亡した。ジューズジャーン州やファーリヤーブ州でもタリバンはIS-Kと交戦した。
―各国の反応とりまとめ:米国務省「今は、自国民はカブール国際空港に向かうことを控え、空港のゲートから離れるべきだ」/ジョンソン英首相「攻撃を非難する。退避作戦を続ける意向であり、現在、その終わりに近づいている」/メルケル独首相「攻撃は恐ろしいものであり、非常に緊張が高まった状況に陥った」「アフガンで足止めされている人々の退避を試みるつもりだ」。独国防省「タリバンが約束を守り、アフガン人の官吏に出国を許可するよう望む」/マクロン仏大統領「自国大使は、治安状況を理由に数日以内にアフガンを出国し、自国で任務を遂行する予定だ」/ノルウェー外務省「アフガンからの出国のために自国民に支援を提供する能力を有していない」/スウェーデン外務省「アフガンの自国民に負傷者はいない」「我々の最優先事項は、空港にいる人々の安全(確保)だ」/トルコ国防省「攻撃による自軍の損害はない」/ヨルダン外務省「依然としてテロは、それに対抗するために国際的な協力の継続が不可欠な危険であり続けている」/カタール外務省「いかなる動機や理由があっても暴力・テロを拒否する揺るがない自国の立場を改めて表明する」/NATO「自軍兵士に対して同空港のゲートから直ちに退避するよう命じた」/ミシェル欧州理事会議長「アフガンでの安定の欠如がテロの復活を引き起こさないよう、我々は保障すべきだ」/(AFPが伝えた外交官の話によると)グテーレス国連事務総長は、アフガンに関する安保理会合の開催を呼びかけた。
―ISは2015年にIS-Kの設立を発表。ホラサーンとはアフガン・パキスタン・イラン・中央アジアの一部を含む地域の古称。メンバーには、パキスタンのタリバンの旧メンバー、タリバンからの離脱者や多数のアフガン人が含まれる。国連安保理が7月に出した報告書によると、戦闘員の人数は5百~数千人とされている。ISとタリバンの間には多くの対立点があり、両者間には「激しい敵意がある」と言える。ISはある声明の中でタリバンを「背教者」と評し、2020年2月にドーハでタリバンと米が合意を締結した後、「タリバンはジハードの大義から退いた」と非難した。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―1年前に発生したベイルート港爆発事件の捜査を担当している予審判事は、ディヤブ職務執行内閣首相に裁判所出頭命令を発出した。同首相に対しては、7月、その他政府幹部と共に事情聴取のための召喚状が出されていたが、応じていなかった。同首相が今回裁判所に出廷しない場合は逮捕状が発行される。
事件の発生から1年以上が経過したが、レバノン司法当局は一人の容疑者も逮捕していないため、批判が強まっている。ディヤブ首相は、「何ら違法なことはしていない」と容疑を否定している。(アッシャルク・アルアウサト紙)
中東の新型コロナ動向
―サウジアラビアは24日、居住者がこれまで禁止されていた特定の第三国から帰国することを緩和する措置を発表した。今般指定された国に14日前以内に渡航・通過した場合でも、出国前に2回のワクチン接種を完了していれば、入国が許可される。(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―カブール国際空港付近での爆発発生を受け、バイデン大統領の会見中継などを含め、アフガニスタン情勢のみを報道したため、ミッドナイト・ニュースはなし。