アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
4日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ タリバン政治事務所代表、「全てのアフガン人を代表する包括的な政府の形成を行っている」「経済プロジェクトには治安の安定が必要」と語る
■ パンジシール渓谷で戦闘が続き、タリバンはベリヤーン郡を制圧したと発表。マスード氏の部隊は「攻撃を阻止」と主張
■ カタールの技術専門家、カブール空港の修復を開始。カタール外相特使は、人道物資搬入ルート開設に期待を示し、「政権移行や政治的解決についてタリバンと協議する」と語る
■ 米、「タリバンとの連絡経路を維持する」と強調。EUは、対タリバン合同窓口を設け、カブールでの存在感を確保する方針で一致。NATO、「アフガン新政府承認の議論は、その行動に基づいてなされる」と声明
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―特になし
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―タリバンのバラダル政治事務所代表はアルジャジーラに、「目下、アフガン国民の全勢力を代表する包括的な政府の形成を行っている」と述べた。また「大規模な経済プロジェクトを始めるには治安の安定が必要だ。新政府はアフガニスタンのみならず、全世界の安全、経済発展を可能にする」と語った。
―カフターニー・カタール外相特使がカブールに到着。「アフガニスタンの円滑な政権移行、政治的解決についてタリバンと協議する」と話した。また、今回のアフガン訪問の目的を、「航路の安全を確保し、人道支援物資の搬入ルートを開設し、必要書類を持つ外国人とアフガン人の渡航の自由を保証することだ」と説明した。特使の搭乗便は、(米軍撤退後の)カタールからの3機目で、カブール空港の再稼働に必要な機器や物資も輸送した。
カブール特派員の話:米軍撤退後、カブール空港にはこれまでにカタールの3機、UAE機、トルコ機が到着した。タリバンは「3日に国内線を再開する」(民間航空局長)としていたが、一旦予定されたマザリシャリフ行きは運休となった。一方、バラダル政治事務所代表は、近く発表する新政府の要点として、①全国民のための政府の樹立、②治安の確保、③経済発展の推進、④全アフガン人に責任を負うこと―と挙げた。この4点は即ち、タリバンが今後直面する課題だ。パンジシール渓谷の危機、タリバンの思想や方針に反対する人々の声、(先月26日の)カブール空港外での大規模テロなどの治安問題、国が貧困にあえぐ中で国境の閉鎖や航空便停止が続く経済面の窮状は、変わらない問題として残る。果たしてタリバンがこれらの問題に答えを出し、克服できるのかが問われている。
―タリバンは、アフガニスタン北部パンジシール州のベリヤーン郡を制圧したと発表した。州内では3日、タリバンと、アフマド・マスード氏が率いる「国民抵抗戦線」の戦闘が再発していた。双方とも、相手方兵員を死傷させて甚大な被害を与えたと主張しているが、パンジシール渓谷のネットと電話の接続は停止しており、確認できていない。
―パンジシール渓谷のグルブハール村付近(カブール方面から渓谷への入口にあたる)で激しい戦闘が起きている。戦闘の激化とそれに伴う砲弾の着弾から逃れるため、住民がカブールに避難している。タリバンの大物幹部は「パンジシールの反体制武装勢力との紛争の政治解決の努力は、成果が出ていない」と語った。
―カブール特派員によると、タリバンは、パンジシール一帯を支配下に置かなかった前統治期の過ちを繰り返さないと決意している模様。アフガニスタン国内のタジク人多数地域(パンジシール渓谷も含む)と、タジキスタンの間の供給ルートを遮断した由。
―タリバン筋はアルジャジーラに、崩壊したガ二政権のサーレハ第1副大統領がパンジシール州を出たと述べた。これに先立ちインドのメディアは、「サーレハ氏が航空機2機で州内の軍事指導者たちと共にタジキスタンに出国した」と報道。これに対してサーレハ氏は、録画映像の中で、自身がパンジシール渓谷を出たとの報道を否定していた。ただ、この映像の録画日や場所は不明。
―カルザイ元大統領は、パンジシール州の戦闘に「深い懸念」を表明し、戦闘停止を呼びかけた。「戦闘は、国と国民の利益に悪影響を及ぼす」「戦争は解決とならず、アフガニスタンの傷と苦しみを広げる」とツイート。
―タリバン政治事務所のナイーム報道官はツイッターで、「政治事務所の指導部が伊首相特使と会談した」「伊の特使は、カブールに大使館を開設し、人道・経済の両分野でアフガン政府を支援すると約束した」と明らかにした。
―ブリンケン米国務長官は、「アフガニスタンの次期政府には、渡航の自由を保証し、アフガンの国土をテロの拠点にさせないとの約束を果たすことを期待する」とし、「米の外交チームがドーハで活動を始め、アフガンに残る米国人と連絡をとっている」と述べた。自身もドーハを訪問して退避作戦へのカタールの貢献に謝意を伝える由。また長官は「カブール空港の一刻も早い再開に向け、カタール、トルコと協力している」「アフガニスタンに関する閣僚会議が来週開かれ、20か国が参加する」「アフガン出国を選択する人の出国許可の問題で、米はタリバンとの連絡チャンネルを維持する」と語った。
―欧州の一部の国やNATOは、アフガニスタン次期政府承認の議論を見合わせおり、「(承認は)タリバンが一連の義務を果たすか否かにかかっている」との立場を示している。ストルテンベルグNATO事務総長は「タリバンとの連絡は、危険に晒されている人々をアフガンから出国させるのに重要だが、それは外交的承認ではない」と述べた。
―EUは加盟国外相会議で、「治安状況が許せばカブールに合同の外交代表を置くことに取り組む」と表明。ボレル上級代表は「現段階では諸条件のもとでタリバンに対応し、タリバンが義務を果たすかを監視する」「それは外交的承認ではない」とした上で、「露、中などに対して、欧州も現場に存在して情勢を注視する必要がある」と指摘。
○ マグレブ情勢
―モロッコとアルジャリアの政治対立にも拘わらず、パラリンピック東京大会を通じ、SNSで両国民の結束が表れている。陸上女子砲丸投げ(F33)で金メダルを獲得したアルジェリアのアスマハン・ブジャダル選手と、銀メダルのモロッコ、ファウジヤ・エルカシウィ選手が、並んでメダル獲得を喜び、両国の国旗を共に掲げる映像は多くの称賛を得た。また、男子400メートル(T13)で金のアルジェリア、エスカンダル・オスマニ選手と銀のモロッコ、ムハンマド・アムジュン選手が競技直後に互いを称える写真も「両国の実際の関係を表している」と受け止められている。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―3日朝リビアのトリポリで発生した戦闘は、政府軍内部の戦い。ドベイバ首相が「統一軍」を成立させると内外に宣言している中で、政治権力と軍部の動向に断絶があることを露呈した。戦闘はトリポリ地区軍司令官が、「第444戦闘旅団」は「反乱」しているとして攻撃を命じたもの。サイフルイスラム・アルカダフィ(カダフィの息子)が露の後押しで「次期大統領選挙に立候補する」と発表するなど、先行きが思いやられる中での混乱である。(アルクドゥス・アルアラビー紙)
中東の新型コロナ動向
―1日、UAEとオマーンの陸路による相互通行が再開された。例えばオマーンからUAEに入国の場合、48時間以内に行われたPCR検査の陰性証明を提示する必要がある(その後4日目、8日目にPCR検査)。オマーンに入国するには、PCR検査陰性証明の他、ワクチン接種が完了していることが前提となる。オマーンが有効と認定しているワクチンはアストラゼネカ2種、ジョンソン&J、ファイザー、スプートニク、シノファーム、モデルナ、シノヴァック。(ハリージュ・タイムズFBウオッチ)
<特記事項・気付きの点>
―引き続きアフガニスタン情勢を重点的に報道。