アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
9日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ タリバン暫定政権首相代行のアフンド師、アルジャジーラのインタビューで「流血の段階は終わった。アフガニスタンと世界に安全がもたらされる」と語り、元高官らに帰国を呼びかけ。同師のメディア登場は初めて
■ アフガニスタンの新政権に対し、国際社会の見解が分かれる。米は「優先事項は退避作業」「行動に基づいてタリバンの評価を決める」と表明。パキスタンは現実に向き合うよう呼びかけ。中国は同政権と連絡を取る姿勢を示す
■イスラエルの複数の刑務所でパレスチナ人収監者らが集団懲罰的措置に抗議し、情勢が緊迫。ベネット首相は多くの地域に影響が出る可能性に言及。西岸地区では収監者への支持を表明するデモ
■モロッコ総選挙の開票作業が続く。内務省の発表によると、投票率は50%に到達
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―特になし
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―パレスチナ赤新月社によると、西岸地区ナブルスのハウワーラとベイターでイスラエルの治安部隊とパレスチナ人らが衝突し、パレスチナ人1人が発砲を受けて負傷。また、89人が催涙ガスのため呼吸困難に陥った。同赤新月社はエルサレムのダマスカス門周辺でも、パレスチナ人4人を治療した。西岸地区のラーマッラー、ジェニン、ナブルス等の諸都市で、イスラエルの刑務所で抗議行動を行っているパレスチナ人収監者らに連帯を示すため、パレスチナ諸派の呼びかけの下でデモ行進が行われたが、イスラエルの治安部隊がこれを強制排除した。イスラエル陸軍のラジオによると、軍は抗議デモに対応するため西岸地区への部隊増派を決定した。
―イスラエルのベネット首相は、8日に同国各地の刑務所で見られた緊迫した情勢を受け、状況を見極めるため会合を開いた。国防相、公共治安相(国内の治安問題担当)、軍参謀総長および治安機関高官らが出席した。イスラエルメディアによると、首相は「刑務所での出来事は、様々な方面に影響を及ぼしかねない」としつつ、「イスラエルにはあらゆるシナリオに対応する用意がある」と述べた。
―イスラエルのギルボア刑務所からパレスチナ人収監者6人(うち5人がイスラム聖戦所属)が脱獄した事件(6日)の後に当局が取った集団懲罰的措置を背景に、同国のいくつかの刑務所で緊張が高まっている。「パレスチナ人収監者クラブ」によると、当局はネゲブ刑務所に軍の部隊を動員し、収監者らを弾圧している。メギド刑務所では、当局がイスラム聖戦所属の収監者らを移送して数か所の刑務所に分配しようと試みたことを受け、収監者らが数室に火を放った。パレスチナ人収監者らは、イスラエル当局が続けている集団懲罰的な弾圧に全力で立ち向かう姿勢を表明している。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―タリバンの暫定政権の首相代行に就任したアフンド師は、メディアに初登場する形でアルジャジーラの独占インタビューに応じ、その中で「我々の政府はアフガニスタンと世界に安全をもたらすよう努める」と約束した。また、「アフガニスタンでの流血や殺人の段階はもう終わった」として、元政府高官らに身の安全を約束し、帰国を呼びかけた。
―タリバンのムジャーヒド広報担当は、アルジャジーラの番組「ボーダーレス」に出演し、「タリバンは、組織外の能力の高い人々を新政府に含めようと試みている」「次の段階では、国内の全ての層が参加する選挙が実施されるだろう」と述べた。また、「タリバンは一定の原則の範囲内で、米を含む全ての国と良い関係を築きたいと願っている」「ドーハ合意は今も有効であり、米が心配する必要はない。タリバンはアフガニスタンの領土を起点として米の利益を脅かす行為を許さない」と約束した。
―アフガン暫定政権の内務省はツイッターで声明を出し、「カブールや他の諸州で数日前から行われているデモは、下心のある勢力から資金供給を受けたものだ」「一部の勢力が自分たちの邪悪な政治的目標を達成するため、デモ参加者の身の安全を脅かす可能性がある」と主張し、同省が治安状況を判断して問題解決のため必要な措置を取る機会を与えるよう呼びかけた。
―カタールのハーテル外相補佐官はAFP通信のインタビューで、「タリバンは多大のプラグマティズムを示した」と評価した上で、「タリバンについての判断は、その行動に基づいて下す必要がある」「カタールのタリバンへの承認は、直ちには行われない」「カタールは中道を行く」と表明した。
―ブリンケン米国務長官は、アフガニスタンをめぐる国際会議の後にマース独外相と共同記者会見を開き、「タリバンが形成した暫定政権は包括的なものではない。包括的な政府の条件を満たしておらず、懸念を呼ぶ人物が数人含まれている」「タリバンが約束を守るかどうか注視する」と述べた。
―米国務省のウェルバーグ報道官(地域・アラビア語担当)はアルジャジーラのインタビューで、「米の現在の優先事項は、アフガニスタンに残った米国民や他国の国民のうちの希望者の退避だ」「タリバンが約束を守ることを期待する」と述べた。
―サキ米大統領報道官は、「タリバンが人々の出国を許し、女性の権利を尊重するという約束を守るかどうか確かめるため、世界はその振る舞いを監視している」「米は現実的な見地から、アフガニスタンからの自国民や他国の人々の退避のためタリバンと連絡を取っている」と述べた。
―中国の汪外務省報道官は定例記者会見で、「中国はアフガニスタンの新政権を承認するか」との質問への答えとして、「中国にはアフガニスタンの新政権との連絡を保つ用意がある」と述べ、「アフガニスタンの主権・安定・領土の一体性を尊重する」と強調した。
―ペスコフ露大統領報道官は、「露は現在のところ、アフガニスタンの新政権とカブールの露大使館を通じてのみ連絡を取る。連絡内容は同国での露外交代表部の安全問題に限定される」「露は大半の国と同様、アフガニスタンの新政権が取る措置を監視する」と述べ、麻薬取引やテロ集団の侵入等のアフガニスタンに由来する脅威への懸念を表した。
―仏は「タリバンは言動が一致しない」との見方を示した。一方、パキスタンは国際社会に対し、アフガニスタンの状況に現実的に対応するよう呼びかけた。
―クウェートのナウワーフ首長は、湾岸歴訪中のオースティン米国防長官と会談した。国防長官はアフガニスタンからの退避計画を成功させる上でクウェートが果たした人道的役割への謝意と評価を表し、「クウェートの安全と安定を支援するという米の姿勢は不変だ」と確認した。
○ マグレブ情勢
―モロッコで8日に総選挙が行われ、開票作業が開始した。内務省は「投票率は全国では50%以上、南部の一部地域では66%を超えた」と発表し、投票は概ね問題なく進んだとした。但し、「公正と発展党」(PJD)を含むいくつかの政党が不正を通報し、当局に介入を求めた。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―在米サウジアラビア大使館は声明を発表し「9.11事件の調査報告の秘密指定の解除を歓迎」し、「サウジが事件に関与していたとの主張は完全に間違っている」と述べた。更に「事件発生以来、サウジ政府はすべての調査結果を公表し透明性を確保するよう求めてきた。政府とその高官が事件の発生を事前に察知していたという証拠は全くない」、「サウジはアルカイダの思想と行動の邪悪性を事件前より認識し、あらゆる形のテロと過激主義と戦う努力を怠っていなかった」などと述べている。(アッシャルクルアウサト紙)
中東の新型コロナ動向
―モロッコは、アラブ諸国の中ではもっと早くワクチン接種が進んだ国であり、今年前半はその効果が十分に発揮されていたが、 8月上旬には新規感染者数が連日1万人を超える過去最大の感染拡大が起きた。8日発表の新規感染者数は3,930人と落ち着きを見せてきているが、死者数は今も70人~80人/日の高い水準で推移している。
―半年に渡って、国により大きく異なる感染状況と対策をお伝えして参りました。読者におかれては地域全体の大まかな動向を掴むことができたのではないでしょうか。レギュラー掲載は本日で停止し、今後は、大きな政策実施・変更、感染状況の急変化等が起きた場合にアドホックにお伝えして参ります。
<特記事項・気付きの点>
―特になし