2021年10月15日 (No.21198)

アルジャジーラ・モニタリング

<ニュース・ヘッドライン>

15日0600JST「ミッドナイト・ニュース」

■ ベイルートで、ベイルート港爆発事件の調査判事の留任に抗議するデモが実施された後、シュイヤーフとアイン・ルッマーナ両地区間で衝突が発生、6人が死亡、数十人が負傷。軍は「関与者を拘束するため、複数の場所を捜査」と発表

■ ヒズボラとレバノン軍団との間で非難の応酬。アウン大統領は処罰を約束し、「国家を人質にすることを許さない」と述べる。ミーカーティ首相は「ベイルート港爆発事件の調査判事の解任の権限は、政治家にはない」と述べる

■ イラクのサドル潮流指導者、「新政府樹立のための協議を開始した」と発表。アッラーウィ元首相は選挙結果を拒否し、新たな選挙の実施を呼びかけ。国民国家勢力連合の候補者らは選挙における過ちに言及

■ チュニジア大統領、「国家に対する謀略を外国と企てる者は訴追されるだろう」と述べる。ナハダ運動は新政府を「事実上の政府」とみなす

<特定関心項目報道ぶり>

○ 日本関連報道

―特になし

○ イラン・イラク・シリア情勢

―イランは(国連安全保障理事会への書簡の中で)、「イスラエルのあらゆる脅威や判断ミスに対抗するため、断固として自衛の権利を守る」と表明した。また、バーゲリー・イラン外務次官はテヘランでEUのモラ事務次長と会談し、「イランは単なる書面上の合意ではなく、実質的な成果に至る真剣な核合意をめぐる交渉を行う用意がある」と述べた。一方、モラ事務次長は「EUは協議を継続し、全員が満足する結果を実現するために、イランやその他の当事諸国と共に核合意において取り組む用意がある」と述べた。

―イラクで議会選挙の結果に関して物議が醸される中、サドル潮流指導者のサドル師は、次期政府の組閣のための連立形成の可能性について協議する交渉委員会の設置を発表。一方、アッラーウィ元首相(「市民国家戦線(CNF)」指導者)はアルジャジーラのインタビューに対し、「選挙は公正でなく、多くの違反行為があったことは確かだ」と述べ、新たな選挙の準備として「前提条件のない包括的国民対話会議の開催」を提案した。また、国民国家勢力連合の候補者らは、「選挙管理委員会が発表した票数には齟齬が生じており、黙って見過ごすことのできない過ちが含まれている」と非難した。

―レバノン情勢

・ベイルート南東部タイユーナで銃砲の撃ち合いがあり、その後、衝突が拡大して6人が死亡、約33人が負傷した。アマル運動(シーア派)とヒズボラの支持者の抗議者たちが市内の司法宮に向かっていた際、(デモ隊に向けて)発砲があり、その後、それをきっかけにシュイヤーフとアイン・ルッマーナ両地区間で、軽火器やRPGが使用された激しい衝突に発展。同地域に軍が展開したにもかかわらず、衝突は続いた。衝突の原因は、ベイルート港爆発事件(昨年8月)の調査判事の留任(ヒズボラ支持者らは解任を求めてデモを実施)。現在、両地区の情勢は、警戒交じりながらも落ち着きを取り戻している。

・軍は、「事態収拾と内乱の発生を阻止すべく、衝突当事者双方の関係者と連絡を取った」「現場地域に軍部隊を展開し続け、いかなる武装者も見逃さず、新たな衝突を阻止するためにパトロールを実施する」「軍は発砲者を捜索して、複数の場所に突入し、当事者双方の9人を拘束した」と述べた。

・上記の衝突で死傷者が出た数時間後、アウン大統領は、「武器がレバノン各派間の『対話の言語』に再び戻ることは受け入れられない」「誰にも、自身の利益や打算のために国家を人質にすることを許さない」「責任者や扇動者らを処罰するために、出来事に関する調査が行われる」と述べた。

・ヒズボラとアマル運動は、「(死傷者が出た)この出来事の背後にレバノン軍団(マロン派)がいる」「同軍団傘下の武装勢力が、国家を内乱に引きずり込む目的で建物の屋上から抗議者らに発砲した」と非難。レバノン軍団はこれを否定し、「(首都での事件の主な)原因は(いつでもどこでも市民を脅かしている)違法な武器とヒズボラの支持者によるデモだ」と述べた。

・ハリーリー元首相は声明を出し、「14日に発生したベイルートでの銃撃・砲撃は、あらゆる観点から受け入れられない」とし、「国家を悪い結果に引きずり込む内乱に陥らないよう、問題解決のために対話を手段とするよう」呼びかけ、また、軍と治安部隊に対して「あらゆる銃撃を阻止し、武装者を逮捕し、市民の安全を守るために、最大限の措置を講じるよう」求めた。

・自由国民潮流(マロン派、バーシール元外相が代表)は「ベイルートでの出来事は、例え同潮流がその意見に賛同していなくとも、意見表明を望んだ人々に対する武力攻撃だ」「ベイルート港の爆発に関する調査判事の仕事に対する不信感は、メディアやデモにおける脅迫や威嚇によって引き起こされたものではない」との声明を出した。

・プライス米国務省報道官は、「米は、いかなる国においても司法に対する暴力による威嚇や脅しに反対する」「レバノンにおける司法の独立を支援する」「ヒズボラの活動は違法なテロ行為であり、それはレバノンの安全・独立・主権を崩壊させるものだ」と述べた。

・ヌーランド米国務次官補はベイルートでレバノン政府高官らと会談した後、上記の事件で死者が出たことに遺憾の意を表明し、「当局による緊張緩和のための取り組みの重要性」を強調した。

・ミーカーティ首相は、「政府は行政機関であり、司法に介入することはできない」とし、「ベイルート港の爆発に関する調査の諸問題に対処するため、自分は政府に留まっている」と述べた

○ サウジ・イエメン・湾岸情勢

―特になし

○ エジプト情勢

―特になし

○ 中東和平(占領地情勢)

―特になし

○ 国際テロ・過激主義情勢

―ザハロワ露外務省報道官は、「露が設けた枠組みにおけるアフガニスタンに関する協議の第3ラウンドに参加するため、来週、タリバン代表団がモスクワを訪問する予定だ」「アフガニスタンでイスラム国(IS)の活動が続いていることに懸念を表明する」と述べた。

○ マグレブ情勢

―チュニジアのサイード大統領は新政府樹立後初の閣議で、「外国と共謀する者から外交旅券を剥奪するよう」呼びかけ、司法省に「共謀の罪でそのような者(マルズーキー元大統領を示唆)に対する調査を開始するよう」要請した。一方、ナハダ運動は、「組閣における憲法違反を受け入れない」とし、「同政府は事実上の政府だ」と非難した。

―サイード・チュニジア大統領は駐チュニジア米大使と面会し、米議会でチュニジア情勢について協議されたことに不快感を伝えつつ、「多くのチュニジア人が国内での出来事を歪曲しようとしているが、米との関係は強固なまま維持されるだろう」「米大使との面会は、民主主義の敵が広めた多くの問題を説明する良い機会だった」と述べた。

―米下院外交問題委員会中東・北アフリカ小委員会のドイチ委員長は、「チュニジアの民主主義は、サイード大統領が議会を停止したことを受け、危険な状態にある」「多くの議員が政治的な理由で拘束されたままであり、また、議会再開の日程や拘束者らの解放に関して何ら示されていない」と述べた。また、共和党のストービー議員は、「米は、支援の成果について判断しないまま、チュニジアに開発や治安面で大きな支援を提供した」と述べた。

○ トルコ情勢

―特になし

<その他の重要ニュース要旨>

―特になし

エリコの目

―67年戦争境界線の外側に位置するエルサレム周辺の大入植地(ジャファアート・ハムトゥース、E1地区、アトルート、シガート・ザイーフ)の建設工事が進んでいるが、バイデン政権は沈黙したままだ。イスラエル内閣の構成を考えれば、圧力を掛ければ政治危機が起こることは必定なのだが。これらの大入植地計画は、オスロ合意(独立パレスチナ国家樹立)に関してとどめを刺すほどの重要性があるため、バイデンが副大統領を務めていたオバマ政権時代から凍結されてきた過去がある。国際社会と米政権はなぜ黙ってしまったのか?(ハアレツ紙の記事を転載:アルクドゥス・アルアラビー紙)

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<特記事項・気付きの点>

―特になし

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