アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
31日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ スーダン各地のデモで治安部隊の発砲により死傷者。警察は実弾の使用を否定した上で、「警官1人が銃撃を受けて負傷した」と発表し、「デモ隊が平和的行動を逸脱している」と非難
■ レバノンで情報相の辞任を求める声が上がる中、大統領は「サウジとのより良い関係を強く望む」と強調。外相は「大使を召還した諸国との国交を断絶するつもりはない」と述べる
■ イエメン南部のアデン国際空港の入り口を狙った爆発により、5人死亡、30人負傷
■ ローマG20首脳会議、気候問題やコロナの影響を協議。サウジ国王は「石油市場の安定とバランスを支持し続ける」と強調
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―ローマで開かれたG20首脳会議の傍らで、米・仏・英・独の4か国首脳が会合し、イラン問題に関する協議を行った。米大統領府が発表した4か国共同声明は、「4か国首脳は、イランと米の核合意への復帰を保証する必要があり、イランが核兵器を入手しないことを保証する必要があるとの点で一致した」と強調すると共に、イランがウランの濃縮度を高めていることを「挑発行為だ」として懸念を示し、「この高濃度の濃縮は、平和的核開発計画ではなく、核兵器計画に関わるものだ」と指摘した。
―イラクの議会選の結果を拒否する「シーア派諸勢力調整フレームワーク」は、先の手作業による再開票・集計の結果を拒否すると発表し、司法委員会に「選挙結果に対して申し立てられたすべての不服を客観的に審査し、数十万票を故意に無駄にすることを止め、客観的基準に基づいて手作業による全体的な開票・集計を実施するよう」求めた。
―露軍機がシリアのイドリブ北郊のカーハとクファル・アンマの周辺を空爆し、建物などに大きな被害を与えた。シリア政府軍は、(イドリブ南郊の)ジャバル・ザーウィヤとハマ北郊の複数の町村を砲撃したが、人的被害は報告されていない。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―クルダーヒー・レバノン情報相がイエメン戦争におけるサウジの立場を批判したことから両国間に危機が生じたことを受け、アウン・レバノン大統領は、「レバノンは、サウジとのより良い関係を構築し、2国間協定を結ぶことでその関係を固めることを強く望んでいる」と改めて表明し、「一部の人々が示す立場や意見が影響して両国間に危機が生じる事態が繰り返されたが、これはあるべきことではない」と強調した。また「レバノンがサウジやその他の湾岸諸国との関係で望んでいるレベルで両国間の連絡が取られるべきだ」と述べた。
―ブーハビーブ・レバノン外相は、アルジャジーラ・ムバーシルのインタビューで「レバノンは、大使を召還した諸国との国交を断絶するつもりはない」「レバノンがサウジの利益に反する行動を取ることは許さない」とし、「すべての問題は対話によって解決される」と述べた。また、「米がミーカーティ首相に、今回の問題を受けて辞任しないよう要請してきた」「仏も、現政府(への支持)を堅持するとしている」と明らかにした。同外相によると、クルダーヒー情報相は「レバノンの国益が自分の個人の利益よりも優先される」とし、「自身の(辞任に関する)最終決定を下すための相談をしている」と述べた。
―サウジとの外交危機が生じたことを受けてレバノン政府が設置した「(閣僚)危機管理室」が、ブーハビーブ外相を議長として会合を開き、サウジがクルダーヒー情報相の発言を受けて「駐レバノン大使を召還し、在サウジ・レバノン大使に国外退去を求める」と決定したことの影響について話し合った。
―レバノンのフランジーヤ「マラダ潮流」代表(クルダーヒー氏を閣僚に推薦)は、「クルダーヒー情報相が辞任を申し出て来たが、拒否した」と述べた。一方、レバノンの歴代首相経験者は、同情報相に辞任を求めた。
―ファイサル・サウジ外相は、ロイター通信のインタビューで「サウジ・レバノン間の危機の根源は、ヒズボラの優位性を強めて地域の不安定継続の原因となっているレバノンの政治構造にある」と指摘した。また、「問題は現状よりもずっと広範なものだ」とし、「レバノン政府がヒズボラの優位性を強める現在の政治構造からレバノンを解放する道筋を構築することが重要だ」と述べた。
―カタール外務省広報室は、(上記)レバノン情報相の発言に強い驚きを表明し、これを非難した。同室は「レバノン情報相の示した立場は、自国とアラブの諸問題の両方に対して無責任なものだ」と指摘し、レバノン政府に「状況の沈静化に必要な措置を直ちに講じるよう」呼びかけた。
―クウェート外務省は、駐レバノン大使を召還し、駐クウェート・レバノン臨時代理大使に48時間以内の国外退去を求めた。同省は「レバノンがサウジや他の湾岸諸国に対する否定的な発言を間断なく続けていることを受けての決定」としている。
―UAEは、自国の外交官をベイルートから引き揚げさせると決定し、自国民にレバノンに渡航しないよう勧告した。UAE国営通信は、「これは、レバノンの一部当局者による容認できないアプローチの下でサウジに連帯するための決定だ」と伝えた。
―オマーンは、(湾岸)アラブ数か国とレバノンの間の関係に危機が生じていることに深い遺憾の意を表明し、全当事者に「自制して事態のエスカレート回避に尽力するよう」呼びかけた。オマーン外務省は「対話と相互理解を通じて対立に対処し、各国とその国民の至高の利益を維持するよう」呼びかけた。
―サルマン・サウジ国王は、ローマで開かれたG20首脳会議での(リモートでの)スピーチで「サウジは、石油市場の安定とバランスをサポートし続けると共に、世界にクリーン・エネルギーを供給する努力を支援する」「サウジは、中東地域と全世界の繁栄実現のために更なる協力を期待する」と述べた。
―イエメン政府当局筋によると、アデン国際空港の入り口を狙った爆発があり、5人が死亡、30人(0600JST台の報道では14人)が負傷した。治安部隊が現場に非常線を張り、付近の交通を停止させた。イエメン政府は、この爆発を「テロ」と評した。アデン治安副局長は、フェイスブック上で「爆発は、空港入り口の第1検問所から100メートルほどのところにある空港ホテルに隣接する食料品店の脇に停められていた自動車爆弾によるもの」と明らかにした。
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタン暫定政府のムジャーヒド情報省次官(タリバン広報担当)は、「カタールは、ドーハ合意の実施と米軍のアフガン撤退において有効な役割を果たした」「アフガニスタンは、カタールの支援により、米と2国間関係について協議するための直接連絡チャンネルを開設した」と述べた。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―スーダンの首都ハルツームやオムドゥルマンなどの各地で、ブルハーン軍司令官の諸決定(統治評議会と内閣の解散、非常事態宣言、諸州の知事の解任)を拒否し文民への権力移譲を求める「10月30日100万人デモ」の呼びかけを受けて、大規模デモが行われた。中央医師委員会は「オムドゥルマンでデモ隊が発砲を受け3人が死亡した」「オムドゥルマンとハルツーム・バハリー、ガダーレフで、これまでにデモ参加者少なくとも100人が負傷した」「ハルツーム各地でデモ隊が実弾の発砲を受けた」と発表。特派員の話では、治安部隊が催涙ガスを発射したため、失神状態に陥ったデモ参加者もいる。北コルドファン州の州都オベイド、南ダルフール州の州都ニヤラでも、同様のデモが行われた。
―スーダン軍司令官のメディア担当顧問は、「デモ隊から投石を受けて、軍の兵士12人が負傷した」と述べた。警察は、「30日のデモを解散させるために実弾は使用していない」と強調し、「警官1人が銃撃を受けたため、どこから銃撃されたのかを捜査している」「不正確な情報源からオムドゥルマンでデモ参加者2人が実弾の発砲を受けて死亡したという情報が入った」「一部のデモ隊が平和的なデモを逸脱したため、彼らを解散させるために催涙ガスを使用せざるを得なくなった」と発表。
―スーダン専門職能者連合は、ツイッターで「オムドゥルマンで治安部隊がデモ隊に実弾を発砲した」と非難し、デモ隊に「平和的な行動を堅持し、現場のリーダーらの指示を順守するよう」呼びかけた。また、解散させられた暫定政府の「自由変革勢力」に所属する閣僚らは、革命の若者たちに「平和的にデモに取り組み、暴力に引き込まれることのないよう」求めた。
―解散させられたスーダン暫定政府のマハディ外相は、アルジャジーラのインタビューで「民政以外は受け入れないとうスーダン国民の意見を受け入れるべきだ」とし、「スーダン国民の現在の立場が、クーデターを実施した者たちを納得させることを期待する」と述べ、「スーダンの政治危機解決に向けた国際的な提案が複数出ている」と明らかにした。EUは、「対話と文民主導の民主化路線への回帰」を改めて呼びかけた。
エリコの目
―米研究所「Responsible Statecraft」のハイデン・シュミット研究員の分析。アフガン後、バイデン政権の中東撤退方針は中東の同盟国を不安に陥れている。R.ハース米外交問題評議会会長は、米の軍事的優越が衰えると、自由でない、より暴力的な社会が生じると論じているが、これには反対の意見が多い。むしろ、各国が相互のよりよい外交チャンネルを構築するよい機会を提供するのではないか、と。
米対外政策の軸が中東からインド太平洋に移動しているのは事実で、湾岸諸国の懸念は強い。バイデン政権は、口先だけでなく真摯に中東における軍事力の優位性を維持するのか、それとも外交主体の取り組みに改めるのか、今、まさに岐路に立っている。(アルクドゥスアルアラビー紙)
<特記事項・気付きの点>
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