アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
10日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ アフガニスタンからの米軍撤退後、初めて民間飛行便がカブール空港からドーハに到着。カタール、「同空港は国際線再開のために準備ができている」と述べる。米はカタールの尽力とタリバンの協力を賞賛
■ カタール外相、「アフガニスタンへの人道支援と政治的状況を切り離すよう」求める。一方、パキスタン外相は代理戦争を警告し、「人道的大惨事の発生を防ぐよう」世界に求める
■ モロッコ総選挙、独立国民連合が勝利を宣言。公正と発展党は結果を「悲惨な敗北」と評し、幹部会の辞任を発表
■ イスラエル、逃亡した収監者6人の捜索のため治安警戒態勢を敷き、軍は、パレスチナ人収監者への侵害行為に対する抗議行動に備えて、西岸地区に部隊を増派
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―仏の破棄院は、仏セメント大手ラファージュ社をテロ組織への資金提供・シリアにおける反人道的犯罪への共謀の容疑で訴追する余地を与えるため、控訴裁判所の(同社に対する告発を取り下げるとの)決定を棄却した。人権諸団体はこの決定に安堵を示した。同社は、シリア北部で自社工場の操業を続けることができるよう、2013~2014年にISに約1300万ユーロを支払った疑いがある。
―シリア北部における新型コロナウイルス感染者は、一日あたり約千人に上っている。イドリブの医療組織は、「デルタ株の急激な感染拡大とともに、事態は制御不能に陥りかけている」と述べた。イドリブの保健当局は、「住民が密集しており、また住民が予防措置を余り行っていない」として、事態の悪化と死亡者の増加を警告した。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―イスラエル軍は、パレスチナ抵抗諸派が呼びかけた、パレスチナ人収監者に対する弾圧への抗議行動に伴って情勢が激化することに備え、西岸地区に部隊を増派した。また、(6日に)ギルボア刑務所から脱獄した収監者を捜索するため、同地区北部の全ての治安フェンス付近でイスラエル国境警備隊がパトロールを強化。更に、グリーンゾーン内のアラブ人の村々に近い地域や、パレスチナ人労働者が仕事のために占領西岸地区からイスラエルに向かうために利用しているフェンスの穴の付近で、イスラエル軍が活発に巡回している。
―イスラエル南部のラモン刑務所の第7棟で(抑圧と虐待に抗議する収監者らの)放火による火災が発生。刑務所管理当局による懲罰措置を背景に、多くの刑務所で緊張が高まっている。パレスチナ収監者クラブが受け取った、パレスチナ人収監者の代表らの署名入りの書簡によると、イスラエル刑務所管理当局は収監者に対する「全面戦争」を開始し、収監者6人の脱獄を阻止できなかったことを受け、収監者に対する懲罰を決定した。また書簡によると、収監者らは「数日以内に(イスラエルの)エスカレートに対する措置を講じるつもりであり、それについては後に発表する」とし、パレスチナ抵抗諸派に「収監者を支援する民衆運動やデモを続けるよう」訴えた。
―イスラエル警察は脱獄した収監者の捜索活動の一環として、北部をはじめとする国内全土で警戒態勢を、緊急事態の一歩手前の最高レベルに引き上げた。西岸地区各地では9日夜、収監者に連帯するデモ行進が行われ、参加者らは、収監者6人の脱獄後にイスラエル当局が収監者に科した懲罰措置に抗議した。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタンから8月末に米軍が撤退して以降、初めて民間航空便(カタール航空機)がカブール(ハーミド・カルザイ)国際空港から飛び立ち、カタールの首都ドーハに着陸。米人や米のグリーンカードを保持するアフガニスタン人ほか複数の外国人を含む約2百人が到着した。カフターニー・カタール外相特使は、カタールの技術チームが米軍撤退の際に同空港が受けた損害を回復し、再稼働させたことを受け、「カブール国際空港は国際線(再開)のために準備ができている」と発表した。一方、タリバンのムジャーヒド情報次官は、カブール国際空港の再稼働とアフガニスタン国民への支援物資(医薬品・食料約50トン)の搬送におけるカタールの役割を賞賛し、謝意を表明した。
―カーン・パキスタン首相はイスラマバードでムハンマド・カタール副首相兼外相と会談し、アフガニスタンにおける和平プロセスの支援におけるカタールの役割を「効果的だった」と賞賛。また、国際社会に対して「アフガニスタン国民への連帯」「同国での恒常的平和・安定の実現における前向きな参加」を呼びかけた。
―上記に先立ち、ムハンマド・カタール副首相兼外相はクレシ・パキスタン外相との会談後に共同会見を開き、「カブール国際空港からの民間航空便の運航を許可した」としてタリバンに謝意を表明し、「この便の運航により、アフガニスタンは、国民が望み通りに同空港を通じて行き来できる自由な航路を持つことになる」「我々はタリバンの前向きな言葉が行動に移されるのを期待する」と述べた。また、「アフガニスタンへの人道支援と政治的状況を切り離すよう」求めた。
―クレシ・パキスタン外相は上記の共同会見の中で、「アフガニスタンへの人道支援の提供と政治的条件を結び付けるべきではない」と述べ、国際社会に対して「行動し、アフガニスタンが経済的に崩壊しないよう、また、同国で人道的大惨事が発生しないようにすべきだ」と求めた。
―プライス米国務省報道官は、タリバンの協力とカブールからドーハに向けたカタール航空による民間航空便の運航を歓迎し、「米は、危険に晒されている米人・アフガニスタン人の安全な出国を円滑に行うために取り組み、24時間体制でカタールと緊密に調整している」と述べ、「カブール国際空港での(退避)作戦を円滑にするためのカタールの尽力」に謝意を表明した。
―サキ・ホワイトハウス報道官は、「タリバンは、米人・米国永住者そして何年に亘って我々の戦いに協力してきたアフガニスタン人の出国を円滑にし、協力的だった」「我々は、これらの人々を退避させると約束し、これを実現させるためにタリバンに圧力をかけると約束した。それがまさに私たちが行ったことだ」と述べた。
―米紙WSJによると、オースティン米国防長官は、「アフガニスタンの新政府は、20年前に米軍が追放した元指導者や、アルカイダと繋がりのあるハッカーニ・ネットワーク(HQN)のメンバーが閣僚に任命されたため、より代表的なリーダーシップへの希望を打ち砕いた」と述べ、「米が国際テロリストに指定しているシラージュッディーン・ハッカーニー(HQN指導者)の内相任命によって、アフガニスタンが再び、9.11の攻撃を行ったグループの避難場所になる可能性がある」と警告。また、「国際社会における敬意を得るために、真剣さと善意を示さなければならない、とタリバンに伝えた」「将来的にタリバンと協力するのかどうかを決めるのは国務省に委ねられている」と述べた。
○ マグレブ情勢
―モロッコで8日に実施された総選挙の結果、独立国民連合(RNI)が第1党となり、今後、憲法に基づいて組閣が委ねられる見通し。一方、(10年以上連立政権を率いて来た)公正と発展党(PJD)は予想外の敗北によって、幹部会が辞任することとなった。
―チュニジアのハッジャーム大統領顧問は、「国の政治システムを変える方向に向かっており、それはおそらく国民投票を通じて行われるだろう」「現在の憲法が重大な障害となっており、憲法は一時停止され、一時的な統治体制が置かれる」「大統領の計画は最終段階にあり、間もなく発表されるだろう」と述べた。
―リビアのミシュリー国家最高評議会議長はアンカラでチャウシオール・トルコ外相と会談し、「リビアに入国した外国軍を法的・正統な合意に基づいて駐留させるかどうかを決めるのは、次期選挙で選ばれた政府だ」「両者は会合中、可及的速やかにリビアから傭兵が撤退すべきだとの見解で一致した」と述べた。また、両者は「憲法宣言に基づき、平和的な法に則って12月24日にリビアで選挙が実施されることを望む」と表明した。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―スペイン・プブリコ紙が「9.11事件以降の中東の変化」と題して論じた要旨:
「政治的イスラム」運動が崩壊すると共に、民主化の試みも途絶え、西側は、イスラム的な動きを抑えるために最も「閉鎖的」な政権を支持している。他方、タリバンが復活し、イラク駐留米兵は15万人から2500人にまで削減された。ブッシュ元大統領が口にした目的は「テロとの戦い」だったが、テロは中東全体に広がり、欧州で数百人がその攻撃の犠牲となって死んだ。
西側諸国は、選挙で選ばれた「政治的イスラム」体制をクーデターで葬り去ったエジプト・シシ政権を西側の利益にかなう政府として歓迎した。チュニジアの政治もこれに追随した。現在、アラブ世界の反「政治的イスラム」の急先鋒はUAEだ。
「政治的イスラム」(=イスラム過激主義)は今後しばらく日の目を見ないだろう。しかし、今、うまく行っているからといって、将来復活しないという保障はない。パレスチナの状況は2001年当時より悪化していて、中東の不安定さは高まっている。西側は、これ以上の問題を経験したくない一点で、これからも中東の独裁体制を支援し続ける。(アラビー21)
<特記事項・気付きの点>
―特になし