アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
27日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ ハマース政治局長、「最近の衝突は、イスラエルとの正常化や同盟の虚構を明らかにした」と述べる。ハマースのガザ地区トップは、「組織のインフラは甚大な損失を被っていない」と強調
■ 米国務長官、カイロに続いてアンマンを訪問。2国家解決案に基づく政治プロセス再開、ガザ地区の復興に向けた努力結集、パレスチナ人への支援提供について協議
■ イラン核合意をめぐる協議と並行し、米露が会合。イラン大統領は「合意再生の環境は整っている」と語る。IAEA事務局長は「イランのウラン濃縮は核爆弾を製造している国の水準」と警告
■ イラク政府、交渉の末、テロ関連の容疑で逮捕した人民結集部隊の幹部を、同部隊に引き渡す
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―米ニュースサイト「アクシオス」は、米国筋の話として「先週のウィーンでのイランとの間接協議で、制裁緩和とイランの核開発の両面の進展があった」と報道。「それまでの協議では、制裁緩和について進展がある一方、イランが核開発を関して求められる措置については、既に設置されている高性能遠心分離機の扱いの問題や、イランの強硬な立場が進展を妨げていた」という。この米国筋は「合意は可能で、何カ月もかからないだろう。だが核開発についてはイランの更なる譲歩が求められる」と語った由。
―イラン核合意の再生を目指す合意当事国の協議がウィーンで続いた。ロウハニ大・イラン統領は「協議は著しく進展し、基本的な点では合意した」と述べた。一方、グロッシIAEA事務局長は、「イランは、核爆弾を製造している国以外では達しないレベルのウラン濃縮を行っている」と警鐘を鳴らした。
―ウリヤノフ露IAEA大使は、イラン核合意をめぐり、「米代表団と有益で実質的な協議を行った」「仏、独、英の代表とも会合をもった」と述べた。
―イラクの治安部隊は、(国内シーア派民兵組織の集合体である)人民結集部隊(PMF)のアンバール県作戦司令官、カーシム・ムスリハ幹部を、テロ対策法に基づき逮捕した。「カルバラでの活動家殺害に関わる容疑による」「米軍が駐留するアイン・アルアサド基地への攻撃に関与したため」との情報がある。PMF大物幹部の逮捕は過去に例がない。ムスリハ幹部の逮捕を受け、PMFは「同幹部は解放されるだろう」と声明。その後、PMFの民兵がバグダッドのグリーンゾーンの各ゲート付近に集結したため、治安部隊はゲートを閉鎖した。
バグダッド支局長の話:政府とPMFの交渉の末、「ムスリハ幹部の身柄をPMF側の治安組織に引き渡し、PMF側が取り調べを継続する」こととなり、バグダッドの緊張は幾分和らいだ。首相府は声明で、「これでムスリハ幹部が政府の治安部隊の拘束を外れたわけではない。(軍、治安部隊、PMFを含む)合同作戦司令部が取り調べを担う」と説明している。今回のPMF幹部逮捕の背景には、活動家殺害の責任者追求を政府に求めるデモが起きていたことや、今年10月の選挙を前にした国内勢力間の競争があるようだ。今回の事件は、(影響力の強いPMF幹部の逮捕に踏み切った)政府の措置に理解を示すグループと、これに反発するグループへの、国内シーア派政治勢力の分裂に拍車をかけそうだ。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―スーダンとエジプトの両軍は、スーダンのオムサヤラ、オベイド、メロウェで、陸空の合同軍事演習「ナイルの守護者1」(26~31日)を実施。両国は、エチオピアによるナイル川上流でのルネッサンス・ダム建設をめぐり、立場を一致させており、数か月前に初の合同空軍演習を行ったばかり。これに対してエチオピアがスーダンとの国境地帯に部隊を集めていると、スーダンのメディアが報道。また、スーダン政府のルネッサンス・ダム問題責任者は、「エチオピアがダムの2回目の貯水を開始した」と発言。
○ 中東和平(占領地情勢)
―ハニーヤ・ハマース政治局長は、アルジャジーラのインタビューで、イスラエルとの直近の衝突について、「パレスチナ抵抗運動は、『世紀の取引』に著しい打撃を与え、パレスチナ問題への関心を取り戻し、占領者(イスラエル)と関係を正常化して同盟することの虚構を明らかにした」と述べた。また「占領者はアルアクサー・モスクを冒涜し、パレスチナ民衆を侮辱しようとしたため、抵抗運動としては介入する他なかった」と述べた。
―ハマースのガザ地区トップ、ヤヒヤ・シンワール氏は、「ガザ地区の抵抗運動の地下トンネルは全長500キロに及ぶ。イスラエルの空爆で損害を被ったのは、その5%に過ぎない」と述べた。また「各国の仲介でイスラエルとの捕虜交換に向けたやり取りがあったが、イスラエル国内の展開がその実現を阻んだ」と語った。
―ブリンケン米国務長官は、カイロでシーシー大統領、シュクリー外相と会談した。エジプト大統領府は会談後、「ガザ地区の停戦確立と復興に向けて連携を強化することで一致した」と発表。米長官は「パレスチナにおける暴力への対応で、エジプトは真の影響力あるパートナーだ」「米とエジプトは、パレスチナ人とイスラエル人が安全に暮らせるよう取り組んでいる」と述べた。
―米国務長官はエジプトに続いてヨルダンを訪問し、アブドラ国王と会談。記者会見で「ガザ地区への緊急人道支援は既に始まった」「米は緊張緩和と信頼再構築に取り組んでいる」と述べた。また「米は、2国家解決を協議する機会をつくるべく取り組み、この解決を妨げる全ての軍事行為の停止を求める」と語った。ヨルダン国王は、「エルサレムとその聖地の歴史的・法的状況を維持し、それを侵すべきではない」「東エルサレムのパレスチナ住民を退去させる措置が続いてはならない」と述べた。
―ラーブ英外相は、アシュケナジー・イスラエル外相との会談で「パレスチナ人への支援が、テロや軍事行為、対イスラエル・ボイコットに関与する集団に届いてはならない」「英はハマースをテロ組織とみなしている。ハマースはイスラエルへの攻撃を止めるべきだ」と語った。一方、イスラエル外相は「イスラエルとその自衛の権利への英の支持」に感謝した。
―上記に先立ち英外相は、自身の中東訪問について「平和的解決の必要を強く感じた結果だ」「パレスチナ人とイスラエル人が和平に至る唯一の道は、2国家解決案だ」とも述べた。英はガザ、西岸両地区の人道支援に300万ポンドを提供。
―ムハンマド・カタール外相は、ガザ地区の復興支援に5億ドルを提供すると表明。また「アラブ和平イニシアチブと関係する国際的な典拠に基づく公正で恒常的な解決とパレスチナ人の独立国家樹立に向け、支援を続ける」とツイートした。
―米ニュースサイト「アクシオス」によれば、イスラエル高官は米国務長官に、「ガザ地区復興の取組みの開始を認めるには、いくつもの条件を満たす必要がある」と伝えた。「ハマースの武器製造に転用可能な物資の搬入を防ぐため、米がガザ地区との国境を監視するようエジプトに圧力をかけること」「ハマースに捕えられたイスラエル人の解放に向けた進展」などを求めたという。同サイトは、「米はハマースを排除し、ガザ地区に影響力のないパレスチナ政府と連携しての復興を望んでいる」と指摘。
―東エルサレムのシルワーンのバトン・アルハワー地区のパレスチナ人2家族に対する退去命令の取り消しを同家族が求めている問題で、イスラエルの中央裁判所は、判断を延期した。審理中、裁判所前では「人種浄化」(パレスチナ住民を退去させて専らユダヤ住民の土地とする)への反対デモ参加者を、警察が暴力的に取り締まった。
関連レポート要旨:シルワーンは、エルサレム旧市街のアルアクサー・モスクがある一帯の南に位置。パレスチナ住民約750人が退去に脅かされている。彼らの土地について入植者団体は「140年前にユダヤ人が所有していたことを示す文書がある」と主張する。こうした団体はイスラエル政府から資金提供を受け、「売買契約」を通じて土地を抑え、シルワーンで入植を拡大してきた。
―パレスチナ外務省は、「バトン・アルハワー地区、シェイク・ジャッラーハ地区のパレスチナ人の宅地の強制収容措置を、非常に深刻に捉えて注視している」と声明。「米国務長官は直近のパレスチナ訪問で『2国家解決』を脅かす一方的措置に反対すると述べたが、この国際的な立場が試されている」「占領者による権利侵害・犯罪を明らかにする努力を続ける」とした。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―スーダン政府と「人民解放運動北部勢力」(SPLM-N)の交渉が、南スーダン首都で始まった。会合の冒頭、ブルハーン・スーダン統治評議会議長は「我が国は、外部の介入なしに問題を解決できる」と強調。ハムドゥーク首相は「対話を通じて治安・政治・経済の問題を解決する時だ」と述べた。スーダン政府とSPLM-Nは、今年3月、信教の自由の保証、地方の自治、「国の多様性を反映した統合軍の創設」などを謳う「原則宣言」に署名していた。
エリコの目
―アフマディネジャド元大統領は、自身の事務所が運営するウェブサイトを通じて「イランは崩壊と分裂の危機にある」と警告し、そのような崩壊の「パートナー」になりたくない、と発言した。憲法擁護評議会が同氏の立候補を正式に拒否したことを受けた声明。「経済は悲劇的、社会情勢は崩壊に直面、文化的状況は分裂。筆舌に尽くしがたい」としている。(アッシャルク・アルアウサト紙)
中東の新型コロナ動向
―イランにおける感染状況は依然厳しい。26日の保健省の発表によると、最新の1日あたり新規感染者数は10,468人、同死者数は163人であった。累積では、2,865,864人が感染し、79,219人が死亡した。同国は現在第4波の回復局面にあり、ピーク時の感染者数2万5千超、死者500人というレベルからはかなり下がったものの、依然高い水準にある。
<特記事項・気付きの点>
―特になし