アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
4日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ イスラエルで連立政権樹立の合意が発表された翌日、ネタニヤフ首相は同政権を「イスラエルにとって危険な左派政権」と評し、議会での信任阻止に向けて同盟者らを結集
■ イスラエル国防相が訪米し、米の支援やイラン・ガザ問題などについて協議。米国家安全保障担当大統領補佐官は、ガザ地区への緊急人道支援の搬入を保証するよう要請
■ EUがイランの核をめぐる新たな合意草案の存在を明らかにする中、米は「ウィーン協議について楽観的でも悲観的でもない」と表明
■ 米国務省、アフガニスタン紛争当事者らがドーハ交渉に戻ることに安堵を示し、「タリバンは、同国を起点として米や同盟諸国の安全を脅かすことを禁じるとの合意を順守した」と述べる
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―ウィーンでは、来週半ばに行われる予定のイランとの核合意をめぐる第6回協議で新たな合意に至るとの楽観的見方が広がっている。モラEU代表は、第5回協議で合意の基礎となる草案が作成されたことを明らかにし、「次回協議で合意に至るものと確信している」と述べた。同協議に参加する各国代表団は、この草案について各々の自国政府と協議するために一旦帰国した。アラグチ・イラン外務次官(交渉責任者)は、「(第5回協議で)良い進展が見られた」とし、「現段階で重要なのは、米の核合意復帰に向けた実際的な取り決めとそれを確認する仕組みの構築だ。その後、イランが義務事項の順守に戻る」と述べた。
―プライス米国務省報道官は、「ウィーンの米交渉団は、イランとの核合意をめぐる協議の進行について楽観的でも悲観的でもない」と述べた。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―サウジは、先のG20首脳会議で同国が提案した反汚職世界ネットワーク「GlobE」の立ち上げへの積極的な参加を国際社会に呼びかけた。カフムース・サウジ監視・汚職対策委員会委員長は、「この提案は、効果的な汚職犯罪対策の実行手段の開発と、汚職対策を担当する法執行機関の世界的ネットワークを構築して情報交換と奪われた資金の回収を行うことなどを目的としたものだ」としている。
―オースティン米国防長官は、アティーヤ・カタール副首相兼防衛担当国務相と電話会談した。同長官は、ツイッターで「両国間の防衛パートナーシップにコミットすることを改めて確認した」と述べた。国防総省によると、同長官はこの会談で「カタールによる米軍受け入れとアフガニスタンからの同軍撤退プロセスへの支援、アフガニスタンでの和平プロセスの推進におけるカタールの重要な役割」に謝意を表した。
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―イスラエルの中道政党「イェシュ・アティド」のラピド党首と右派政党「ヤミナ」のベネット党首が(8政党による)新たな連立政権の樹立で合意したことを受け、ネタニヤフ首相は、この政権を「イスラエルにとって危険な左派政権」と評し、これに参加する右派政党を「裏切者」と非難、同政権の議会での信任阻止を目指して極右・宗教諸政党を結集させた。連立側は、できる限り早急に議会を開催して新政権への信任を得られるよう取り組んでいるが、親ネタニヤフ首相の議会議長が引き延ばしを図り、新政権樹立阻止の試みに時間を与えることが懸念されている。
―ガンツ・イスラエル国防相はワシントンを訪問し、オースティン米国防長官と会談した。同長官は「米はイスラエルの軍事的優位性(保持)と、イランやその代理勢力、テロ集団の脅威に対するイスラエルの自衛力の確保にコミットし続ける」「バイデン大統領は、イスラエルの対空防衛システム『アイアンドーム』の強化への支援を表明した」「ハマースや他のパレスチナ諸派が発射するロケット弾に対するイスラエルの自衛を支持する」と確認した。一方、ガンツ国防相は「『アイアンドーム』は1,400発以上のロケット弾を迎撃した」「地域における軍事行動を回避あるいは遅らせるための外交活動を行うべき時が来た」と述べた。
―上記に先立ち、ブリンケン米国務長官は、ガンツ国防相との会談で、ガザ地区への人道支援と救援活動の重要性を強調し、「イスラエル人とパレスチナ人は、同等の安全と繁栄と民主主義と尊厳を享受すべきだ」と確認した。米国務省は、「両者は、両国のパートナーシップとイスラエルの安全保障への米のコミットメントについて協議した」と発表。会談に先立ち同国防相は、米のイスラエルに対する支援を称賛し、「会談では、イランやガザなどに関する問題を取りあげる」とし、「イスラエルは地域の安定と安全の確保を望んでいる」述べていた。
―サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、ガンツ国防相との会談で「バイデン大統領はイスラエルの自衛権を一貫して支持する」と改めて強調し、「バイデン大統領は、『アイアンドーム』システムへの支援を含む両国間の安全保障パートナーシップの諸側面の強化にコミットする」と確認した。米大統領府は声明で「両者は、両国が地域における戦略的優先課題の促進にしっかり従事していくことで一致した」「サリバン氏は、ガザ地区の住民に緊急人道支援物資を確実に届けることの重要性を強調した」「両者は、中東におけるイランの脅威に対峙していく決意を示した」と明らかにした。
ワシントン特派員(国防総省から)のレポート:ガンツ国防相は上記の諸会談で、一連の基本的問題に加えて、イラン問題について協議した。ガンツ氏は「イランによる核兵器入手はイスラエルの存在にとっての脅威だ」とし、今回のイスラエルと米の対話を重要視している。今後数日中にイランとの核合意をめぐり米とイランがいかなる合意に至るとしても、この対話で「イランに核兵器は保有させない」との保証を得る必要があるのだ。ガンツ氏は「これがイスラエルの戦略的目標だ」と述べている。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタンの政府当局者によると、首都カブール西部で旅客バス2台を狙った爆発があり、民間人4人が死亡、6人が負傷した。同当局者は「タリバンの責任だ」としているが、タリバン側はこの攻撃についてコメントを出していない。米軍が撤退を開始して以降、アフガニスタン国内の暴力行為の発生ペースが上がっている。
―プライス米国務省報道官は、「タリバンは、アルカイダやその他のテロ組織がアフガニスタン領土を起点として米や同盟諸国の安全を脅かすことを許さないと規定した米との合意を順守した」と述べた。また、「世界は、アフガニスタンで力によって強要される政府を認めない」とし、アフガン紛争当事者らがドーハでの交渉に戻ることを歓迎した。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―米大統領府によると、バイデン大統領は、14日にブリュッセルで開かれるNATO首脳会議に出席し、その傍らで同日、エルドアン・トルコ大統領と会談する予定。
<その他の重要ニュース要旨>
―スーダンの首都ハルツームの軍司令部前で抗議の座り込み隊が強制排除され数十人が死亡した事件から2年にあたり、同市内各地でデモが行われた。参加者らは、事件の犠牲者のための報復を訴え、治安・司法機関を含む国家機関の包括的な改革と正義の実現、経済状況の改善を求め、政府に「革命の要求であるこれらを実現できなければ退陣するよう」要求。またデモ隊は、イスラエル国旗を燃やし、同国との国交正常化を撤回するよう訴えた。政府側は、「困難な治安状況のため、求められる速さで要求を実現できずにいる」と主張。
―デンマーク議会は、難民申請者をEU加盟諸国外に追放することを認める法案を可決した。難民・移民の受け入れに反対する与党が提出した同法案の可決により、同国はいかなる難民も受け入れないことになる。同法案は、国連やEU、アムネスティ・インターナショナルから批判を受けていた。同国のメディアによると、政府はチュニジア、エチオピア、エジプト、ルワンダとの間で、これらの国でのデンマークが支援する難民センターの設置について協議したが、ルワンダとの間で了解覚書が結ばれただけで、まだいかなる協定の署名も発表されていない。
エリコの目
―イスラエルのアラブ人の人口は約140万人(全人口比17.5%)。1948年のイスラエル建国後もその領土内に残った約16万人のパレスチナ人の子孫だ。就職や居住をはじめとする様々な差別を受けながら生きている。彼らを代表する政党のひとつ「アラブの統一リスト」が歴史上初めて連立政権に参加することには、他のアラブ系政党をはじめ各方面から批判的な意見がある。(アッシャルク・アルアウサト紙)
中東の新型コロナ動向
―サウジアラビアは、先月末海外渡航を解禁したり、イベント開催条件を緩和するなどしたが、感染状況はむしろ拡大している。3日発表された新規感染者数は1,261人、死者は15人であった。5月内は新規感染者数については1,000人台であったが、5月31日以降、1,200人台の発表が続いている。3日現在の、ICU等による治療を要する重篤患者数は1,489人。(アッシャルク・アルアウサト紙他)
<特記事項・気付きの点>
―特になし