アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
10日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■エルサレムで緊張が高まる中、入植者数百人がアルアクサー・モスクの敷地周辺で行進。アムネスティ・インターナショナルは、イスラエルがパレスチナの保健関連団体の本部に突入して閉鎖したことを非難し、その悪影響を警告
■ ウィーンでの核合意をめぐる協議の再開を数日後に控え、イランは懸案事項の解決を要請。IAEA事務局長はアルジャジーラに「協議は期待通りには進展せず」と認める。欧州諸国は声明で「核兵器製造に向けたイランの決定的な動き」に言及
■エジプトとスーダン、「ルネッサンスダムの交渉は袋小路に入った」と確認し、「エチオピアの一方的な措置による重大な危険」を警鐘。エチオピアは3か国協議にこだわる姿勢を示す
■アフガニスタン政府とタリバン、ドーハで和平協議を再開。政府代表団は「交渉の迅速化と議題について合意した」と発表
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―イラク治安筋によると、バグダッド国際空港の米軍部隊が駐留するナスル基地(ビクトリア基地)付近にカチューシャ・ロケット弾が着弾した。被害の程度は未だ不明。この少し前には、サラーハッディーン県のバラド空軍基地がロケット弾3発で攻撃されていた。治安広報局の発表によると、攻撃による人的・物的被害はなかった。バラド基地内部の筋によると、基地を攻撃したロケット弾は全部で5発、うち2発が基地外に落下した。同基地は米人の請負業者らを擁しており、以前もイラクからの米軍撤収を求める武装集団のロケット弾攻撃を受けていた。
―イラクメディアによると、イラン革命防衛隊に属する「コッズ部隊」のカアニ司令官が事前発表なしでイラクに到着した。同司令官はイラクの政府・政治・軍事関係者らと広く会合し、最近のイラク政府と武装勢力の関係悪化(人民結集部隊幹部の逮捕に起因、後に釈放)を中心に同国の情勢について協議するという。
―ウィーンで今週末、核合意をめぐる協議の第6ラウンドが開始する。アラグチ・イラン外務次官(交渉責任者)は、「次のラウンドが最終回となると予測するのは時期尚早」「残っている争点は、どのようなやり方で全当事国が合意に戻るかに関するものだ」と述べた。一方、グロッシIAEA事務局長は、「IAEAは、様々な課題についてのイランとのやり取りで、期待通りの進展を実現できていない」とアルジャジーラに打ち明けた。
―英独仏は共同声明を発し、核合意完全順守への機会を掴むようイランに呼びかけ、同合意に沿わない行為は一切行わないよう促した。また、IAEAに完全に協力し、国内の核関連の全ての施設・活動の査察を無制限で許可するよう求めた。さらに、「イランは核分野に関する義務に反する行為を続けている」「イランは濃縮度60%に及ぶウラン製造を通じて、核兵器製造に向けた決定的な措置を取った」として、これに対する深い懸念を表した。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―エジプトとスーダン両国の外相・灌漑相らはハルツームで会合し、その終わりに出した共同声明の中で、「ルネッサンスダムをめぐる交渉は袋小路に入った」と表明。エチオピアが両国の水利権を保護する形の法的拘束力を持つ合意のないまま一方的に同ダムの貯水と稼働を行った場合の影響と被害を「重大な危険」と評し、深い懸念を表した。これに先立ち、エチオピアのレドワン外務担当国務相は、「エチオピアはスーダンとの国境紛争の平和的解決とルネッサンスダムに関するエジプト・スーダンとの3か国協議にコミットする」と新たに表明した。
○ 中東和平(占領地情勢)
―エルサレムで緊張が高まり、ユダヤ過激派団体主催の「旗の行進」をめぐって激しい論争が起こる中、イスラエルの治安部隊の厳重な警備の下で、同団体のメンバーらを含む入植者数百人がエルサレム旧市街、アルアクサー・モスクの敷地への入口周辺を練り歩いた。エルサレム警察は旧市街に店を出しているパレスチナ人の商人らに対し、行進が通過する際の安全確保のため店を閉めるよう強要した。入植者らは数年前からヘブライ暦の毎月初めにこの行進を行い、アルアクサー・モスクの敷地への全ての入口の前でユダヤ教の礼拝を行う。イスラエル政府の治安担当閣僚からなる縮小閣議が8日に開かれ、「旗の行進」を10日から15日に延期するとの決定が下されたが、その際にネタニヤフ首相と治安機関が行進の実施を許可するかどうかで対立していた。
―イスラエル軍は9日未明、西岸地区ビーラのNGO「保健活動委員会」(HWC)の本部に突入し、半年を期限として閉鎖した。HWCのオウダ委員長はアルジャジーラの電話インタビューで、「イスラエル兵らはメインのドアを爆破し、室内にあった物の一部を破壊し、備品のコンピューター複数を押収した」「閉鎖は治安上の理由とされる」「突入されるのは過去2か月でこれが2度目だ」と述べた。
―アムネスティ・インターナショナルは、上記のイスラエル当局によるHWC閉鎖を非難する声明を出し、これによりパレスチナ人の保健上のニーズに関して悲惨な結果が生じると警告した。また、「イスラエルは国際法上の占領勢力として、パレスチナ人の人権を保護する明確な義務を有している」として、HWC閉鎖の決定を直ちに取消して保健分野の従事者への嫌がらせを止めるよう当局に求めた。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―カタール国営通信によると、テロ対策・紛争調停担当のカフターニ・カタール外相特使は、ハリルザード米アフガン特使およびタリバンの交渉代表団を率いるアブドルハキーム・ハダイダード氏とドーハで個別に会合し、アフガン和平プロセスやアフガン政府とタリバンが現在ドーハで行っている協議をめぐって話し合った。アフガン政府とタリバンの代表団は、ドーハでの和平協議の第3回ラウンドを再開している。政府代表団報道官は、「協議の迅速化と議題について合意した」と発表。タリバン側も同様の発表を行った。
―「イスラム国」(IS)は、アフガニスタン北部バグラン州での地雷撤去作業員らに対する攻撃の犯行声明を出した。この攻撃で地雷撤去を担う英NGO「ヘイロー・トラスト」(HALO Trust)に所属する12人が死亡、18人が負傷した。
―治安筋によると、アフガニスタン南部ウルズガン州タリンコートで自動車爆弾が爆発し、複数が死傷した。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―アルジャジーラ・メディアネットワークは、「今月5日から 8日の間に、傘下のいくつかのプラットフォームやウェブサイトへが継続的なサイバー攻撃の試みに晒された」と声明で発表し、「サイバー攻撃が最も多かったのは、6日の検証番組『The Hidden is More Immense』最新回の放送直前だった」「これらの試みは全て失敗した」と説明した。
エリコの目
―バイデン政権はエジプトのシーシ政権による人権侵害(ジャーナリストとその関係者の不当逮捕、投獄)に目をつむり、「ガザ停戦」の仲介を行う後者に対し、13億8千万ドルに上る軍事支援を行おうとしている。人権重視外交を公約に掲げるバイデン政権の変節に、失望の声が上がっている。(英ガーディアン紙/ヌーンポスト特約)
原記事:
中東の新型コロナ動向
―バーレーンの感染状況は改善が見られず、政府は6月11日から25日までの2週間、商業レクリエーション施設の閉鎖措置を延長する、と発表した。飲食店等の閉鎖措置も継続され、テイクアウト、デリバリーのみの営業となる。理容美容サロンの閉鎖も継続、自宅での設宴も禁止される。(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―特になし