アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
11日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ エルサレムで、イスラエル議会の極右議員が旧市街に到着した後、緊張が高まる。同議員に抵抗しようとしたパレスチナ人複数が拘束され、ガザ地区の抵抗諸派は同モスクの侵害行為に対して警告
■ 米国務省、「イエメンのホウシー派がマアリブで、軍事的にエスカレートして人道状況を脅かしている」と非難し、「同派が対話に戻るよう、制裁を含めた圧力を強化する」と表明
■ バーレーンで囚人が獄死したことを受け、当局の行為を非難するデモが実施される
■ イラン、「核合意をめぐる協議は最後の仕上げの段階だ」と述べる。イランのIAEA大使は「IAEAは政治化されている」と非難し、米はイランに直ちに協力するよう求め、同国の複数の元政府高官を制裁リストから削除
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―ロウハニ・イラン大統領は核合意をめぐるウィーンでの協議について、「最後の仕上げの段階だ」「イランは2015年に一度、経済制裁を失敗させた。再び失敗させることができるだろう」「米は対話のテーブルに戻った。米の対イラン制裁は解除されるだろう。米には他の選択肢がないからだ」と述べた。ガリブアバディ・イランIAEA大使はIAEA理事会の終わりに、「IAEAは政治化されている」と非難した。
関連レポート要旨:米とEUはイランの核開発計画に関して、「完全且つ直ちに協力するよう」イランに求めた。ウィーンではIAEA理事会が終了したが、会合では加盟諸国が対立した。米IAEA大使は、「イランは完全且つ即座に協力すべきだ」とし、未申告の3か所の施設から発見された核物質などについて、その出処に関する説明を求めた。米代表部は「イランによる合意の法的な順守は、同国に科された説明に応じること、また疑問に答えることの全面的な保証になる」と見なしており、「過去2年間、それは行われてこなかった」として深刻な懸念を表明した。EUの核合意当事国の代表団もこれに関しては米と同様の懸念を抱いており、「イランは直ちに協力し、追加議定書を含む合意における透明性ある措置を再び講じるよう」求めた。
一方、露代表団はイランを擁護し、「発見された核物質の痕跡は歴史的性質を持っており、核拡散の危険にはならない」とし、「問題を政治化している」と非難した。イランも「IAEA全体が政治化されている」と非難し、「IAEAは、イスラエルの核の脅威に関心がなく、核科学者らの暗殺や核施設に対するテロ行為に沈黙している」と表明。「これらの疑念によってIAEAの信頼性に疑問が生じ、透明性ある措置や協力的政策を見直さざるをえない」としている。
IAEAでの対立と並行し、ウィーンでの核合意をめぐる協議の進展も遅々としている。来週、新ラウンドが始まる予定であり、アラグチ・イラン外務次官(交渉責任者)は、「これが最終ラウンドになると予測することは時期尚早だ」と述べた。ロウハニ・イラン大統領は(上記のような)楽観的な発言をしたが、これは9日にブリンケン米国務長官が上院で「イランが完全に核合意を再び順守するまで、数百の制裁を実施し続ける」と述べたことと矛盾している。イランが米による制裁維持の示唆を無視し、政府高官らが交渉の進展を楽観している事には、その他の様々な理由があるようだ。
―プライス米国務省報道官は、「制裁対象者の振舞いや態度が変化したと確認した後、イランの一部の元政府高官らを制裁リストから削除した」「制裁はそれ自体が目的ではなく、目的を実現するための手段である」「米は、『外交はイラン核開発計画を制限する最も有効な手段である』とみなして交渉に参加している」「米とEUはイランに対して直ちに両者に協力するよう求めた」と述べた。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―イエメン国営通信によると、ホウシー派が弾道ミサイル2発と爆発物を搭載した無人機でマアリブ市を攻撃し、8人が死亡、27人が負傷。地元当局によると、5日にも弾道ミサイルと無人機によってガソリンスタンドが攻撃され、子供2人を含む21人が死亡し、同派は攻撃の実行声明を出したが、「軍事キャンプを攻撃した」としている。
―米国務省は、「ホウシー派が停戦を受け入れ、全当事者による政治協議を再開する時が来た」「包括的停戦はイエメン国民が必要としている緊急支援を保証するものとなる」「人道危機は和平合意によってのみ解決する」「米はこれらの目的を実現するために、ホウシー派に対して制裁を含めた圧力をかけ続ける」「ホウシー派によって続けられているマアリブへの攻撃はこれらの目的に反しており、悪化する人道状況を脅かしている」との声明を出した。
―ブハイティ・ホウシー派政治局メンバーはアルジャジーラの番組の中で、「停戦に関するいかなる提案も拒否する」「同派は、外国軍の最後の1人の兵士がイエメンから出て行くまで軍事作戦を停止しない」と述べた。
―バーレーンで10日、囚人のフセイン・バラカ―ト氏がジャウ中央刑務所で獄死し、マナーマ郊外サナービス村で象徴的な葬儀が営まれて緊張状態となった。その後、数十人がデモを実施して怒りを表明し、燃やしたタイヤで一部の道路を封鎖した。同氏は病気(新型コロナウイルスに感染していた)だったが、人権諸団体が悪化を警告していたにも関わらず、医療ネグレクトで死亡したとされている。
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―アルアクサー・モスク周辺で、極右のイタマル・ベン・グヴィル議会議員が(ボディーガードを伴って)ダマスカス門に到着した後、複数のパレスチナ人が同議員に抵抗しようとして緊張が高まった。イスラエル警察は事前に同議員に訪問を禁じる司法決定を下していた。イスラエル警察は、ダマスカス門付近で同議員に抵抗しようとしたパレスチナ人10人を拘束した。
―ハマースの軍事部門「カッサーム部隊」は、「抵抗諸派の指導部は、エルサレムとアルアクサー・モスクにおける簒奪者とそのリーダーらによる挑発的・敵対的な行為を注意深く見守っている」との声明を出し、同モスク侵害の帰結を警告した。
―西岸地区のジェニーンにイスラエル特殊部隊が突入して衝突が発生し、パレスチナ情報機関の2人とイスラム聖戦運動の元収監者ムハンマド・アムーリー氏の3人が死亡、1人が重傷を負った。
―パレスチナ大統領府は、ジェニーンでのイスラエル軍兵士らによるパレスチナ情報機関の将校2人と元収監者の殺害を非難。アブルデイナ同大統領府報道官は、「これはイスラエルによる危険なエスカレートであり、イスラエル政府がこの影響に関する責任を負っている」として、国際社会に「イスラエル軍と入植者によって度重なる暴力行為に晒され続けているパレスチナ人を保護するよう」求めた。
―イスラエルのハアレツ紙(電子版)は、「2019年にネゲブの刑務所でイスラエル人の看守らがパレスチナ人の囚人数十人を暴行した」と、映像を含めて報じた。看守55人が少なくとも囚人10人を棍棒で殴打し、手錠をかけたまま数時間、放置した。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―ローコック人道問題担当国連事務次長は、「エチオピア北部ティグレ州が飢餓寸前の状態にあり、数万人が死亡する可能性がある」と警告。また、トーマスグリーンフィールド米国連大使は、「国連安保理はエチオピアにおける危機に関する会合の開催に失敗した。これは受け入れられないことだ」と述べた。一方、エチオピア外務省は、「エチオピア政府は同州に支援を提供し、農民を支援している」「国際諸機関や外国メディアの同州に関する報告は、正確ではない」と表明した。
エリコの目
―オースティン国防長官は上院公聴会で証言し、「イランは依然核開発計画と弾道ミサイルの開発を続けている他、船舶の自由な航行を脅かし、域内の民兵組織・テロ組織を支援している」、「米国はイランに対抗する力を中東地域に維持する。そして域内の同盟国に対する支援も継続する。その中には、イスラエルに対する軍事支援も含まれ、同国が圧倒的な軍事力の優位を保つようにする」などと述べた。(アッシャルク・アルアウサト紙)
中東の新型コロナ動向
―エジプトの保健当局者は、TV会見を行い、「新型コロナの新規感染数が最近約30%減少していることから、「(エジプトが現在経験している)感染の第三波の克服は近い」と述べた。また、中国の協力で現地生産に取り組んでいるワクチン「シノヴァック」の最初の製品が来週完成する見通しであることを明らかにした。(アッシャルク・アルアウサト紙)
(エリコ注:エジプトでは、昨年末から第二波、第三波と連続して感染は拡大傾向。グラフを見る限りでは、少し気が早いのではないかと思える。)
<特記事項・気付きの点>
―特になし