アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
18日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ イラン大統領選挙の投票が数時間後に始まる。ロウハニ大統領は国民に対し、「対立から一旦離れ、大勢が投票に参加するよう」呼びかけ
■ イラン交渉責任者、アルジャジーラのインタビューで「ウィーンでの協議は解決に近づいている」としつつ、「この先のいかなる米政権も核合意から離脱しないとの保証をイランは望んでいる」と述べる
■ イスラエル軍、ガザ地区でパレスチナ抵抗諸派の複数の拠点を空爆
■ 米政府、「トルコがアフガン首都カブールの空港の警備を担うことで同国と合意した」と表明。米統合参謀本部議長は「アフガンからの米軍撤退後に最悪の事態が発生することは不可避ではない」と述べる
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―イランで18日から大統領選挙の投票が始まる。有権者数は約5千9百万人。立候補者はイブラヒーム・ライシ師(保守強硬派)、アブドルナーセル・ヘンマティ氏(穏健派)、モフセン・レザーイー氏(保守強硬派)、カージーザーデ・ハーシェミー氏(保守強硬派)の4人。護憲評議会の審査を通った候補者7人のうち3人が辞退しており、候補者リストをめぐっては国内の政界で物議を醸している。
―ロウハニ・イラン大統領は国民に、「大統領選挙の投票に参加するよう」呼びかけ、「イランの敵は、投票率が低迷することを望んでいる」と述べ、「このようなことにならないよう」国民に求めた。
―イラン大統領選挙の全候補者は、核合意への復帰に向けたウィーンでの協議に支持を表明しており、「合意に基づいて行動すべき」との選挙公約に違いはないが、それを実行する仕組みについては違いが見られる。専門家は「イラン革命の勝利後のイラン・米間の対立は本質的なものであり、特定の出来事と結びついているわけではない。例え候補者の施政方針が異なっていても、米に対してイランの独立を維持しなければならないということでは一致している。これは次期大統領も受け継がなくてはならないことだ」との見方を示している。欧米諸国との関係、核開発問題、対イラン制裁、主権の維持を含む戦略上の問題など、外交政策に関する諸課題が依然として残っており、次期大統領の政権もこのような外交上の障害を取り除くことはできないと見られる。
―アラグチ・イラン外務次官(交渉責任者)は、「大統領選挙の動向が核合意をめぐるウィーンでの協議の進行に影響することはない」と確認。また、「同協議では、様々な課題について具体的な形で良い感じに進展した」「交渉は、かつてないほど合意に近づいている」「イランは、米前政権との間で起こった事(核合意からの離脱等)が、この先の米政権との間で繰り返されることはないとの保証を得たい」と述べた。
―CNNが米政府高官らの話として伝えたところによると、イランの船舶2隻が大西洋からアフリカ西海岸へ航路を変更した。同船の元々の行き先はベネズエラだったが、航路を元に戻す様子が見られないとのこと。また、米ニュース・サイト「ポリティコ」によると、米国防相高官らは、「米政府が南米の各国政府にイランの船舶を港に停泊させないよう説得した後、イラン船はシリアもしくは露に向けて航行している可能性がある」と述べた。
―レバノンで労働者総連合の呼びかけにより、経済・社会状態の悪化に抗議するストライキが実施され、省庁や政府諸機関、銀行が閉鎖された。また、各地では座り込みも実施された。
―アウン・レバノン軍司令官は「レバノン軍支援のための国際会議」で、「友好国に対し、レバノン国軍への支援提供を要請する」「国内の危機が打開されない場合、軍を含む、あらゆる政府諸機関が崩壊するだろう」「軍の一体性・結束力は、レバノンの安全保障と独立にとって極めて重要だ」と述べた。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―イスラエル軍の複数の戦闘機が17日夜、ガザ地区各地でパレスチナ抵抗諸派の拠点を相次いで空爆し、物的損害を与えた。そのうちの3か所(特派員報告では4か所)はハマースの軍事部門であるカッサーム部隊の拠点で、これまで負傷者が出たとの報告はない。イスラエル軍は、「ガザ地区からイスラエルに向けて発火物付きの風船が飛ばされ続けていることへの報復だ」「参謀総長は、同地区での戦闘の再開を含むシナリオに備えて軍の準備レベルを引き上げるよう指示を出した」と述べた。一方、ハマースは、「空爆は新政府のデモンストレーションだ」「抵抗諸派こそが、戦闘のルールや性質を決定する」と表明した。
ガザ地区の特派員の報告:15日のガザ地区空爆に続くイスラエルによる2回目の明らかな停戦違反だ。同地区北部のベイト・ラヒヤ、ジャバリヤ、ガザ市北西部、南部のハーン・ユーニスの4か所のカッサーム部隊の拠点が標的にされ、1か所につき、少なくともミサイル5~6発が撃ち込まれた。パレスチナ抵抗諸派はこれを停戦違反としており、「イスラエルは停戦合意後、新たなルールを強要しようとしている」と見ている。イスラエル新政府は「ガザから飛ばされる風船1つ毎にミサイル1発または空爆による攻撃を行う」と発表しているが、抵抗諸派は(15日の)エルサレムでの「旗の行進」によるイスラエルの挑発行為を受けて表明したように、実際に風船を飛ばした。ハマース等の抵抗諸派は少し前に声明を出し、「抵抗諸派こそがルールを課す主体であり、最近の戦争での出来事における事態と主導権を完全に掌握し続けている」「抵抗諸派はいかなる敵対行為に対する準備も継続している」と表明した。
―イスラエル政府はハマースに対して、「発火物を付けた風船をガザ地区からイスラエルに向けて飛ばすことを止めなければ、同地区に対して再び軍事作戦を行う」と警告。17日の朝以降、同地区境界付近のシャアル・ハネゲヴとエシュコルで、同風船により火災8件が発生しており、ハマースに責任があるとされている。15日に実施された入植者らのエルサレムにおける「旗の行進」以降、同地区周辺で風船によって数十件の火災が発生している。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタン北部ファーリヤーブ州で政府軍が攻撃され、タリバン戦闘員との交戦に発展し、軍兵士20人以上が死亡。先月初めに米軍が撤退を開始して以降、同国での暴力行為はエスカレートしており、国内の情報筋によると、タリバンは少なくとも27地域を陥落している。
―サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、「バイデン米大統領とエルドアン・トルコ大統領は、トルコがアフガンのカブールの(ハミド・カルザイ国際)空港の警備において主導的役割を果たし、これを実現するために両国が協働することで合意した」「トルコがアフガニスタンに治安関連支援を提供できなかった場合、事態にどのように対処するかについて、米政府は緊急計画を策定している」「タリバンが発表したように、外交使節が業務を遂行できるよう治安を構築するためのアフガンにおけるトルコの役割が、現在の(和平に向けた)取り組みを妨害するとは思わない」と述べた。また、「両国大統領は、トルコによる露製ミサイル防衛システム『S400』の購入をめぐる対立の解消については合意に至らなかった」と明らかにした。一方、エルドアン大統領は、「米・NATO両軍が9月にアフガンから撤退を完了した後、トルコはアフガンでこれ以上の責任を負うことはできない」と述べた。
―ザハロワ露外務省報道官は、「米軍の撤退後、アフガンにトルコ軍が残留することは、米・タリバン間のドーハでの諸合意に違反している」「同合意にはアフガンからの外国軍の完全な撤退が明記されている」と述べた。
―ミリー米統合参謀本部議長は上院(軍事)委員会の公聴会での発言の中で、「米軍撤退後のアフガン政府崩壊と軍破綻のシナリオは不可避ではない」「米政府はカブールに大使館を開設したままにする予定だ」「米国防総省は状況が最悪のシナリオに陥らないよう、アフガン政府と共に取り組み続け、アフガン治安部隊に資金を提供するつもりだが、これら全てに関する保証はない」と述べた。
―オースティン米国防長官は、「アフガンにおける米のパートナーが、国民に対する責務を遂行できるよう支援すべく、米はこのパートナーとの関係を新たなものに変えてゆく」「アフガンに残る兵士は、現地の米外交官の保護に必要な人数までに減らすつもりだ」と述べた。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―エジプトでは、ムスリム同胞団員ら12人を死刑、31人を終身刑に処するという判決を破棄院が支持し、確定したが、シーシ大統領にはその執行を停止ないし軽減する権限がある。ムバラク時代にはほとんど死刑の執行はなかった。外交的な信用失墜というマイナスと援助獲得等のメリットを天秤にかければ、シーシ大統領は死刑を執行しない可能性がある。(アルアラビー21)
中東の新型コロナ動向
―クウェート政府は、出入国に関する新たな規則を決定し、①国民は同国で承認された新型コロナワクチンの2回接種を完了していない限り出国できない、②同ワクチンを2回接種していない外国人の入国を認めない、と発表した。なお、接種年齢未満の子供、妊婦、健康上の理由で接種できない証明書保持者等はこの規制の例外となる。(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―特になし