アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
30日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ チュニジア大統領、「国内において国家を崩壊させようとする者がいる」と述べる。一方で自由を守る憲法上の保証を求める声が高まる。ナハダ運動党首は「自党は妥協する用意がある」と表明し、「新政府で合意できない場合、市民に呼び掛ける」と示唆
■ 米国務長官、アルジャジーラのインタビューの中で「チュニジアの民主プロセスからの逸脱、自由・報道に対する弾圧を懸念している」「チュニジアの状況は単純ではない」と述べる
■ シリア南部ダラアで衝突が激化し、反体制派は支配を強化。政府は住宅地を爆撃し、死傷者が出る
■ エチオピア、「エジプトとスーダンは、ルネッサンス・ダムの2度目の貯水によって損害を被らなかったことを認めたくない」と述べる。スーダンは青ナイル川での洪水発生を警告し、エジプトは「アスワン・ハイ・ダムの水位が8月初頭に上昇する」と明らかにする
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―ブリンケン米国防長官はアルジャジーラのインタビューの中で、「イランは核合意への復帰に関して、まだ何も決定を下していない」と述べた。
―シリアの地元情報筋によると、政府軍が南部のダラア、ジャーシム、ヤードゥーダ村を砲撃し、民間人15人が死亡、複数が負傷。政府軍は同村で住宅1軒を砲撃し、子供3人を含む一家6人が死亡した。ダラアの中心部であるダラア・バラド、タリーク・サッド、ダラア難民キャンプの各地区で約5万人が包囲され、砲撃に晒されている。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―ブリンケン米国務長官はクウェートを訪問し、サバーハ首長、アフマド外相、ガーニム議会議長等と会談し、クウェートとの戦略的パートナーシップの維持を確認。米国務省によると、同長官はクウェート政府高官らと、軍事協力、地域の安全強化、人権問題、2国間の貿易・投資の機会を増やすこと等を含む多くの課題について協議した。
―ブリンケン米国防長官はアフマド・クウェート外相と共同会見を開き、湾岸諸国間の和解とイエメンにおける戦争終結におけるクウェートの役割を賞賛し、アフガニスタンにおける和平実現のためにクウェートと協働することを確認した。一方、クウェート外相はイスラエルとパレスチナ間の和平プロセスにおける米の役割を賞賛し、「2国家解決が唯一の解決策である」と述べた。
○ エジプト情勢
―エジプトのブハイラ県の刑事裁判所は、2015年に同県のラシード市で警察の乗ったバスを爆破(警察署長が死亡)した罪で、ムスリム同胞団メンバー16人に死刑判決を下した。また、同団メンバー8人に警察署長を殺害した罪で死刑判決が下された。
―ムフティ・エチオピア外務省報道官は、「エジプトとスーダンは、ルネッサンス・ダムの2度目の貯水によって損害を被らなかったことを認めたくないのだ」「2度目の貯水によって、135億立法メートル以上の必要な水量を貯水できた」と述べた。
―ハムドゥーク・スーダン首相はディカルロ 国連政治・平和構築担当事務次長を迎えた際、「スーダンは原則としてルネッサンス・ダムの建設に反対していないが、エチオピアによる無分別で一方的な措置を講じることに反対する立場は堅持する」「スーダンは一方な措置を講じる前に拘束力のある法的合意を締結することを期待している」と述べた。
―スーダン水資源・灌漑・電力省は、スーダンで青ナイル川の水位が上昇していることを受け、洪水発生を警告。また、「エチオピアとの国境付近にあるディーム水力発電所の取水量が約5億5千万立法メートルに達し、あと6千万立方メートル弱で洪水発生レベルに達する」と明らかにした。
―アブドルアーティ・エジプト水資源・灌漑相は、「アスワン・ハイ・ダムの貯水湖の水位は、ナイル川の水源における降水量の増加によって、8月初頭には上昇するだろう」と明らかにしつつ、「あらゆる分野に必要な水の需要を満たすため、水利システム管理局の警戒・準備レベルを最高レベルに引き上げたままにする」と確認した。
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―サイード・チュニジア大統領は、「国家は操り人形ではない。ロビイストや汚職関与者など、裏で糸を操っている人々がいる」「そのような状況によって、例外的なイニシアティブをとらざるを得なかった」と述べた。
―サイード大統領は、大統領府の国家安全保障局の顧問だったリダー・ガルスラーウィ氏を内相に任命する大統領令を発出し、同氏は大統領に対して就任宣誓を行った。
―チュニジアの国内メディアが伝えた治安情報筋の話によると、情報機関を含む内務省管理総局(UNECT)のアズハル・ロンゴ事務総長が解任された。また、チュニス控訴裁判所のタルハーニー広報担当は、「検事総長は、汚職対策国家委員会のシャウキー・タビーブ元委員長に対して詐欺容疑で捜査を開始するよう命じた。また、サイフッディーン・マフルーフ尊厳連合代表、真実尊厳委員会の仲裁和解委員会のハーリド・クレイシー委員長、国民連合の議員で大統領府の国家安全保障局の元閣僚だったマブルーク・クルシード氏に対する捜査も開始するよう命じた」と述べた。
―サイード大統領の諸決定が官報によって発出された後、正式に実施段階に入った。憲法80条に則ったとされる大統領の決定によると、議員の権限が1か月間停止され、免責特権も停止される。停止期間は延長可能。
―チュニジア民主潮流の国民評議会は、サイード大統領による例外的措置に理解を示し、「その動機は国家が晒されている危険にある」と表明。同評議会は緊急会合の中で、「権利・自由の保護、憲法・民主主義の規範を維持するため、一連の措置には憲法上の保証が伴う必要がある」と確認し、大統領に対して「通常の憲法の状態を回復し、現段階の諸問題に対処できる政府の樹立のため、能力のある誠実な首相を選ぶことを保証するロード・マップを示すよう」求めた。また、ナハダ運動をはじめとする統治側の政治諸勢力に国家の状況悪化の責任がある」とした。
―ガンヌーシー・チュニジア議会議長はAFPに対し、「自党(ナハダ運動)は民主主義を回復するために、いかなる譲歩をもする用意がある」「憲法は自党の権力維持より重要である」と述べ、「次期政府に関して合意できない場合、民主主義を守るために市民に呼びかけ、強制的に議会停止を解除させるつもりだ」と警告した。また、「大統領によって諸決定が下された後、大統領とも側近ともいかなる話し合いもしていない」と明らかにし、「国民対話が必要である」と述べた。更に、「現段階のマイナス面を同運動の責任にしようとする試みがある」としつつ、経済・社会両分野における過ちを認め、「同運動にも責任の一端はある」と述べ、「チュニジアの民主主義は、これを恐れる体制側による陰謀に晒された」との見方を示した。
―アリード・ナハダ運動副党首はフェイスブック上で、「サイード大統領が強行したことは、権力分立の原則に打撃を与え、彼の手に行政権・立法権・司法権を集中させた」「これは実質ともに重大な憲法違反だった」「このような出来事は、国家を混乱と個人主義の雰囲気に陥らせ、あらゆる不運によって独裁に至らしめる最短のルートだ」「同運動は国民からのメッセージと合法的な要求を受け取り、今回のあらゆる出来事から教訓を得ようとしている」と述べた。
―NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」はツイッターで、「チュニジア大統領は、国民が政府の新型コロナへの対応のまずさを非難したことを受け、首相を解任し、議会を停止したが、同国のまだ若い民主主義に甚大な影響を与えるかもしれない」と警告した。
―ブリンケン米国防長官はアルジャジーラのインタビューの中で、チュニジアが民主プロセスから逸脱することへの懸念を表明し、チュニジア大統領に対して「可及的速やかに民主主義に回帰するよう」促した。また、アルジャジーラのチュニス事務所の閉鎖に関する質問に対し、同長官は「チュニジアにおけるあらゆる形による表現の自由、特に報道の自由に対する弾圧」に懸念を示した。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―シリア南部ダラアでは、3年ぶりに政府軍が一般市民を標的とした軍事行動を起こしている。これは先日、ヨルダンのアブドラ2世国王が「アサド政権は『生き残った』。同政権を変えなければならないのか、それとも彼らの行動を変えさせるべきか?」と、バイデン大統領との会談後にCNNのインタビューに答えた結果だ。アサド政権は、米・アラブの奨励を得たと考え、野蛮な国土破壊行為を続けているのだ。(アルクドゥス・アルアラビー紙)
中東の新型コロナ動向
―イラク保健省によるとここ数週間で新型コロナワクチンを接種する市民の数は、1日あたり8千人から8万人へと、約10倍に増えた。AFPに医師が答えたところによると、この変化の理由が最近の感染拡大と死者数の増加であることは明白だという。接種を済ませた人は、医療スタッフが不足し、接種会場が異常に混雑していると不満を漏らす。当局者は、電子予約システムがあるが、市民が予約を守らないため、結果、人々は接種会場に押し寄せることとなっている、と述べた。
(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―特になし