アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
1日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ チュニジア大統領、「政党勢力が国内に混乱を生じさせるために資金を提供している」と非難。ナハダ運動は、同大統領に「国益を優先させるよう」求め、同運動シューラー評議会の会合開催を延期
■ アルジェリア外相、アディスアベバ、ハルツームに続いてカイロを訪問し、「ナイル川流域諸国の関係が微妙な段階に入っている」と述べる。スーダンは、ルネッサンス・ダム問題の解決に向けたアルジェリアの提案を歓迎
■ シリア政府軍がダラアでの攻撃激化を続ける中、国連は停戦を呼びかけ。ヨルダンは、この情勢展開を受け、シリア国境のジャーベル・ナシーブ検問所の再開を延期
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―NYタイムズ紙は、「ライシ新大統領の就任が近づく中、イラン核合意に復帰するとしたバイデン米大統領の約束が大きな危険に脅かされている」「痛みを伴う譲歩を強いられることになり、バイデン政権の幹部らは、同合意の復活に悲観的になっている」「バイデン政権の懸念は、ライシ新大統領がウラン濃縮の加速を決定する可能性があること、あるいは米の対イラン制裁に関する新たな条件を提示する可能性があることの2点に集約される。更に同政権は、ライシ氏が、核交渉団をより柔軟性が低く更なる譲歩を引き出すことに固執する交渉団と交代させることを恐れている」と伝えた。同紙によると、マレー米イラン特使は「イランは立場を変更し、以前の核合意に戻ることを不可能にする可能性がある」と述べた。
―CNNは、米軍幹部の話として「29日夜にオマーン沖で攻撃を受けたイスラエルのタンカーは、イランの部隊が操作していると見られる無人機で狙われた」「米船がSOSに応じて同タンカーを米軍空母が停泊している港まで護衛した」と伝えた。一方、イスラエル外相は「この攻撃に厳しく対応するよう」呼びかけた。
―シリア南部ダラア郊外での政府軍と反体制派部隊の戦闘の最中に、ダラア・バラドとタリーク・サッド、ダラア南部難民キャンプに対する迫撃砲攻撃で民間人3人が負傷した。消息筋によると、戦闘と攻撃は、避難していた住民数十人が帰宅した後に再発した。
―ペデルセン国連シリア特使は、「シリア南西部の情勢を非常に懸念しながら注視している」と述べ、全当事者に事態の鎮静化を呼びかけた。また「暴力の停止を保証するために関係諸方面と活発に連絡を取っている」とし、「全当事者が民間人保護の原則を堅持し、国際人権法を順守すべきだ」と強調した。
―ヨルダン内務省は、「シリア国境のジャーベル・ナシーブ検問所を一時閉鎖する」と発表した。商品や旅客の運送が停止される。同省は、「シリアのダラア県の治安情勢を受けての決定であり、適切な状況になれば再開する」としている。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―ラマムラ・アルジェリア外相は、ルネッサンス・ダムをめぐる問題について協議するため、スーダンのハルツームに続いてカイロを訪問、シュクリー外相と会談した。ラマムラ外相は、シュクリー外相との共同記者会見で「ナイル川流域諸国の関係は微妙な段階に差し掛かっている。同ダム問題は、世界的な問題となった」とし、「今回の地域諸国歴訪で、関係3か国の話を注意深く聞いた」「アルジェリアは、適切な状況が整えば、問題解決に参加したいと望んでいる」と述べた。また「アルジェリアは、アフリカ・アラブ間の戦略的関係が危険に晒されないことを強く望んでいる。関係3か国が各国の権利を保護する形の納得のいく解決に至ることが最善だ」と強調した。ラマムラ外相は、29日にはアディスアベバを訪問していた。
―マハディ・スーダン外相は、ハルツームでのラマムラ・アルジェリア外相との会談後「ルネッサンス・ダムをめぐる対立の解決に至るためにスーダン・エジプト・エチオピアの各国指導者間の直接会合を開催するというアルジェリアの提案を歓迎する」と表明し、「同提案は、(2015年に)ハルツームで3か国が署名した『原則宣言』の第10項に合致している」との見方を示した。
アディスアベバ特派員のレポート:ラマムラ・アルジェリア外相は、(上記カイロでの)会見で、ルネッサンス・ダム問題がアフリカ・アラブ関係に影を落としていると指摘した。観測筋は、アルジェリアが同ダム問題をめぐる交渉のオブザーバーを務めることが可能だと見ている。AUは、同交渉のオブザーバーを8つの国・機関から任命している。アフリカ6か国とAU、米だ。これにアルジェリアが「アフリカのアラブ国家」として加わることで、アラブ・アフリカ関係を深めるために大きな役割を果たすことができる。特にラマムラ氏は、7月初めにアルジェリア外相に就任する前に、アディスアベバに本部を置くAUで「紛争のないアフリカ(Silencing the Guns)」イニシアティブのための議長特使を務めたほか、平和・安全保障理事会理事を5年間務めており、エチオピアとも強い関係を結んでいる。「アフリカ内での問題解決」を主張するエチオピアもラマムラ氏を「中立的な仲介者」「アフリカ機関の人物」と見ており、同氏が同ダム問題で役割を演じることを望んでいる。
ハルツーム特派員のレポート:ラマムラ・アルジェリア外相は、2日間にわたるハルツーム訪問中に、統治評議会議長や首相、外相と会談した。アルジェリアには、エジプト・スーダン・エチオピアの3か国の首脳を会談させるという提案があるようだ。アルジェリア外相とスーダン統治評議会議長の会談後にスーダン外相が語ったところによると、アルジェリアで3か国首脳会談を開催するというものだ。
カイロ特派員のレポート:ラマムラ外相とシュクリー外相の会談は、3時間にわたる長いものだった。これは、ルネッサンス・ダム問題をめぐり深いところまで協議したことを示している。記者会見で同問題に言及したのはラマムラ外相だけで、シュクリー外相は何も述べなかった。ラマムラ外相も、ハルツーム訪問時に述べたとされるアルジェリアの提案がどのようなものなのかは明確にせず、「提案」という言葉も使わなかった。ただ、「アルジェリアは役割を果たしたいと思っている。条件が整えば、同問題の解決に参加する用意がある」と述べた。現時点ではまだアルジェリアが3か国の立場を聞く段階に留まっており、交渉が再開されると期待するには時期尚早と思われる。
○ 中東和平(占領地情勢)
―イスラエル治安部隊は、エルサレムのシェイク・ジャッラーハ地区の入り口で、同地区からの立ち退きを迫られているパレスチナ人住民らに連帯するパレスチナ人の一団が同地区に入ることを禁じ、廃水を使って解散させた。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―チュニジア情勢
・サイード大統領は、チュニジア銀行・金融機関職能団体の代表者らとの会合で「ある政党幹部が、国内に混乱を生じさせるために(若者たちに)金銭をばらまいた」と非難し、「違法に(国民の)資金や財産を奪うことはだれにも許さない」と強調した。一方、ナハダ運動は、1週間ほど前にサイード大統領が発表した議会停止・首相解任などの一連の決定を「憲法違反だ」と改めて拒否し、撤回を求めた。また同運動は、ガンヌーシー代表からの要請を受けて、同運動シューラー評議会の会合の延期を発表した。
・ガンヌーシー議会議長(ナハダ運動代表)は、「UAEがチュニジア情勢に悪影響を及ぼそうとしている」と非難し、「UAEは、イスラム民主主義が自国の政権を脅かすものだと見ており、チュニジアで始まった『アラブの春』はチュニジアで終わるべきだと思っている」と指摘した。また「UAEはエジプトでの(軍事)クーデターを支援したが、このようなクーデターはチュニジアでは起き得ない。チュニジアはエジプトではなく、軍と政府の関係も異なるからだ」「UAEは、リビアでの和平合意(に向けた協議)が進展し、選挙が実施されることを懸念している。民主主義への移行がアラブ世界の残りの地域に拡大することを恐れているからだ」と述べた。
・アルジェリア大統領府は声明を出し、「テブン大統領が31日夜、サイード大統領と電話会談し、チュニジア国内情勢について話し合った」「テブン大統領は、チュニジアが民主主義と多様性に献身する正しい道を歩んでいることを再確認した」「サイード大統領は、テブン大統領に対し、チュニジアで近く重要な決定が下されると伝えた」と発表した。
―メンフィ・リビア大統領評議会議長は、ドベイバ首相と会談し、最近悪化が見られる一部地域の治安状況について話し合った。また、新型コロナウイルス対策にも触れ、感染拡大を抑制する方法や、国内各地でのワクチン接種の継続について協議した。
―NYタイムズ紙がリビアの故カダフィ元最高指導者の次男サイフルイスラーム氏の独占インタビューを同氏の(現在の)独占写真と共に掲載したことが、リビアやアラブ諸国のSNS上で大反響を呼んでいる。同氏は10年ぶりとなる外国ジャーナリストのインタビューで、自身が(2011年にゼンタンの武装勢力の)捕虜となった際の話をしたほか、リビアの次期大統領選挙への出馬を示唆した。
―ムハンマド・モロッコ国王は、即位記念日(7月30日)にあたって演説し、アルジェリアとの関係に言及、「自分もアルジェリアの現大統領も、モロッコ・アルジェリア国境の閉鎖について責任はないが、その状態が続いていることについての責任はある」とし、「同国境の閉鎖を続ける正当な理由はもはやなくなった」と述べた。
○ トルコ情勢
―エルドアン大統領は、ムーラ県で市民を前に演説し、同県を含むトルコ各地で発生している火災について、「治安部隊と情報機関がテロとの関連を調査し始めた」と明らかにし、「これらの火災はテロ組織によるものである可能性がある」と述べた。これより先に同大統領は、アンタルヤ、ムーラ、メルシン、アダナの各県を火災被災地域とすると宣言していた。
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―30日発生したオマーン沖のタンカー攻撃についてアルジャジーラの番組「ニュースの裏側」が報じた要点中、関心事項次の通り。
・イランとイスラエルは2018年以来タンカー攻撃を相互に繰り返しており、これまで16回の攻撃があった。
・イスラエルは強く反撃するとしているが、最大の同盟国・米国は距離を置いている模様。在米ユダヤ人の中に、イスラエルの極右政策を嫌う傾向も顕著となった。バイデン政権への移行で、米の外交政策は不安定化。イスラエルとは個別の政策で今後も齟齬が生じるだろう。(元CIA要員の米安全保障専門家)
・イラン政府は否定も肯定もしていないが、これまで現実に存在しているイスラエルとの攻防(要人が暗殺されたり、タンカーが攻撃されている)の文脈で言えば、今回の攻撃にイランが関与していても何の不思議もない。(テヘラン大学教授)
・米国にはイスラエルの行動を抑える力があり、過去にはその抑制が効いていたが、今、意図的に放置しているのは、そのことで核合意交渉で有利な立場に立てると考えているからだろう。脅しには脅しの均衡が必要。(同教授)
・攻撃と反撃の繰り返しは、米・イスラエルどちらの利益にもならない。しかし、この問題と直接の関係がある核合意交渉の結論(和平)が近づけば近づくほど、このような事件は起こりやすくなる。(同上米専門家)
中東の新型コロナ動向
―サウジアラビアは1日より、全国民と居住者を対象に、各種イベントへの入場、政府・民間施設、教育施設等への入場と公共交通機関の利用をワクチン接種済者に限る措置を実施する。個々の証明は、アプリ「タワッカルナ」を提示することで行う。
同時に、同国はこれまで健康安全上の配慮から差し止めていた観光ビザ保持者の入国を解禁する。ファイザー、モデルナ、アストラゼネカのワクチンを2回接種した者、及びジョンソン&Jのワクチンを1回接種した者は、72時間未満PCR検査結果陰性証明を提出すれば、検疫滞在を免除される。インターネットを通じた観光ビザ申請も開始した。(アッシャルク・アルアウサト紙)
<特記事項・気付きの点>
―特になし