アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
2日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■アルジャジーラの検証番組「The Hidden is More immense」で、UAEがハリウッド映画「ザ・ミスフィッツ」を手中に収めて内容を歪曲し、カタールを貶めてその名をテロと結び付けるように仕向けた経緯が明らかに
■ オマーン沖でのイスラエル系企業運航のタンカーへの攻撃について、イランは関与を否定。米は同国の犯行だと非難、ブリンケン国務長官が「近く対応措置を取るため地域・国際諸国と協議中」と発表。イスラエルは国際社会に動くよう呼びかけ
■チュニジア大統領、同国での民主化路線への復帰を求められる。同大統領は「未だチュニジアを待ち伏せしている者が存在する」「政治的願望を実現するため、国民の健康を危うくした勢力がいる」と発言
■スーダン外務省、「ルネッサンスダムによって害を受けないとの国際的保証を得ることを目指している」と声明。エジプトは「法的拘束力のある合意成立に向けた真の交渉の開始」を求める
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―イラン外務省のハティーブザーデ報道官は、7月29日にオマーン沖で起こったイスラエル系企業の運航するタンカー(日本企業が所有)への攻撃について、イランの関与を否定し、事件についてイランに向けられた非難を「根拠がない」とした。一方、イスラエルのベネット首相は、「政府が入手した情報は、(上記の)タンカーを攻撃したのがイランであることを示している」「国際社会がイランの政権に対し、犯した過ちの重大さを明示することを期待する」と述べた。
―ブリンケン米国務長官は、「手元にある情報を確認した後、アラビア海での商船(上記のイスラエル系企業運航のタンカー)の攻撃を実行したのはイランだと確信している」「イランが次第に攻撃への使用を増やしている無人機によって行われた」「米は地域・世界のパートナーらと共に、近日中に事件に見合った対応を取ることを検討している」と声明した。
―ラーブ英外相は声明で、「おそらくイランがオマーン沖でタンカーを攻撃した」との見解を発表し、「違法な攻撃だ」と非難した。また、「英は攻撃が意図的なものだったと確信している。これはイランによる明白な国際法違反だ。イランはこのような攻撃を止め、国際法に従って船舶の自由な航行を許すべきだ」「英は国際的パートナーらと共に、同攻撃に対して共通の対応を取ることに向けて取り組んでいる」と述べた。
―地元情報筋によると、シリアでの露指導部の代表らとダラア県の住民委員会の間で停戦合意の仮調印が行われた。交渉に当たった露軍事警察の将校は、同県でシリア政府軍が軍事行動激化を続けることを阻止すると約束し、ダマスカスで同警察指導部に相談するためとして交渉の延期を求め、24時間以内に返答するとしていた。これに先立ち、シリア政府軍は2018年に反体制派と結んだ停戦合意に反して、同県で軍事作戦を行っていた。
―レバノン軍は、ベイルートの南側入口に位置するハルダに部隊を展開した。「敵討ち」を背景とした抗争によって、武装した数人が死亡したことを受けての措置。1日、ヒズボラの構成員の葬儀の車列が発砲を受け、車内にいた戦闘員数人が死亡した後、葬儀に参加した者らとハルダの(スンニ派の)諸部族の間で銃撃戦が起こっていた。(上記のヒズボラの構成員は、昨年夏にハルダの部族の一員を殺害したことへの復讐として、7月31日に銃撃を受け死亡していた)
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―アルジャジーラの検証番組「The Hidden is More Immense」の新たな回(2日の0405JST放送)は、(UAEの映画制作会社「フィルムゲート・プロダクション」が共同制作・撮影・資金供給した)ハリウッド映画「ザ・ミスフィッツ」の制作の舞台裏で何が起こっていたかを明らかにした。政治的目的でカタールを貶め、その名前をテロと結び付けることに同映画が利用されたことをめぐり、番組は独占入手した録音音声を根拠として公開。UAEがいかに映画のシナリオを架空の物語から実名を用いた政治的内容に変えていったかを示した。映画の大半のシーンはアブダビで撮影されている。映画の主要なプロデューサーだったマンスール・ザーヒリー氏(フィルムゲート・プロダクションのCEO)は、番組のインタビューを一旦承諾してから、これを取り消した。番組は、映画への批判に対して反論する機会を与えるため、彼にインタビューを申し込んでいた。
○ エジプト情勢
―スーダン外務省のファールーク報道官(ルネッサンスダム問題担当)はアルジャジーラのインタビューで、「安保理がルネッサンスダム問題に関して、近々決議または議長声明を出して措置を講じることを期待している」「スーダンは現在、同ダムによって害を受けないことの保証を得ようと取り組んでいる」と述べた。一方、エジプト大統領府は、当事諸国が同ダムの貯水と稼働に関して法的拘束力のある包括的合意の成立を目指し、真剣かつ真の意欲を持って交渉に参加することの重要性を強調した。
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―チュニジアのサイード大統領が発表した例外的な措置をめぐり、疑問が増している。新首相は未だ任命されておらず、次段階についての概要の発表も遅れている。同大統領は自身の取った措置を改めて弁護し、「チュニジアを待ち伏せしている者が存在する」「新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、政治的願望を実現するために国民の健康を危うくした勢力がいる。チュニジアには彼らの場所はない」と述べた上、「人身売買ネットワークが欧州への密航を組織することを通じて、状況を混乱させようとしている」と非難した。そんな中、政治諸派は議会議員らを標的とした拘束が行われていることに警鐘を鳴らした。「カラーマ(尊厳)連合」は、「所属議員2人が軍事司法当局による取り調べのため、一時的に拘束されている」と発表した。
―米紙ニューヨークタイムズのヴィヴィアン・イー記者は、「民主主義が崩壊する可能性のあるチュニジアに取材に来たところ、短時間拘束され、サイード大統領に合衆国憲法について講義された」「大統領は報道の自由を約束したが、私に1つも質問させなかった」とツイートした。
―サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、チュニジア大統領に電話連絡して長時間協議し、民主化の道筋に迅速に戻るための概要を示すよう促した。
○ トルコ情勢
―数日前から、少なくとも20の都市を含む6県の約100か所で山火事が発生しており、数人が死亡、約300人が負傷した。
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―米「タイム」誌は、「チュニジア大統領の行動は『クーデター』の疑いが濃いが、チュニジアの民主主義はまだ死んでいない」との記事を掲載した。この中で記事の筆者は、大統領に反対する勢力が、この動きが仏、エジプト、UAEなどの支援で実行されたと非難していること、一方、大統領を支持する勢力は、国民がイスラム主義勢力「アンナハダ」に辟易していることを紹介している。また、サイード大統領はベンアリ元大統領のような独裁者にはならないだろう、その場合、労働組合他市民社会を支える組織は黙っていないだろう、等の見方を伝えている。(アルクドゥス・アルアラビー紙)
中東の新型コロナ動向
―イスラエルでは、新規感染者数が1万人を超える第二波の感染拡大後、ワクチンが普及したこともあり、4月~6月の間は一桁の日が出るほど感染は抑えられていた。しかしその後拡大傾向に転じ、7月17日には1,000人を超え、7月31日には、2,675人を記録した。同日の死者数は4人。現在感染者数も拡大を続けており、31日の値は18,464人だった。
<特記事項・気付きの点>
―特になし