アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
20日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ カブールの空港で数千人が足止めされる中、タリバンは「外国人とアフガン人に空港への安全な通路を確保する」と約束。米国防総省は「退避の円滑化に関してタリバンとの合意がある」と述べる
■ タリバンが協議を続ける一方で、アブドラ国家和解高等評議会議長とカルザイ前大統領は権力分割に関する調整について諸政党と協議。この種の協議はタリバンがカブールに入ってから2度目
■ G7外相、「アフガンにおける包括的政治解決を支援する取り組みを継続する」と表明。独はタリバンと連絡を取ることを重要視し、国連は「アフガンがテロ攻撃の拠点として利用される危険」を警告
■ レバノンのヒズボラ書記長、「イランが燃料を積載した船をレバノンに派遣する」と確認し、ハリーリー元首相は「国内外の紛争に巻き込まれる危険」を警告。米は「ヨルダン・シリアを経由するエジプト産ガスのレバノンへの輸送を支援する」と発表
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―仏・独・英は共同声明を出し、「イランが初めて、濃縮度20%の金属ウランを製造した」とのIAEAの最近の報告に深刻な懸念を表明し、「これは、核合意に基づいたイランの義務に対する危険な違反だ」として、イランに「核合意に反するあらゆる活動の停止」を求め、「可及的速やかにウィーンでの協議に戻るよう」促した。
―IAEAは「イランは濃縮ウランの製造を続けている」と明らかにし、「最大20%濃縮の金属ウランを200グラム製造した」との報告書を出した。IAEAによると、イランは核兵器へ転用可能な濃縮度90%に向け、動きを加速させている。
―国営シリア・アラブ通信(SANA)によると、「政府軍の防空システムがダマスカス上空で敵対的な標的を迎撃した」と報じ、迎撃の様子とする映像も公開したが、攻撃の性質や攻撃源については特定しなかった。また、軍事情報筋は、「イスラエルがベイルート南東部方面からダマスカス周辺・ホムス周辺の複数の地点に向けて、ミサイルによる空襲を実施した」「防空システムはそのほとんどを撃墜した」と述べた。
―レバノンのアウン大統領はシーア駐レバノン米大使と電話会談し、米大使は、「ヨルダンからのシリアを経由した電力供給と、エジプト産ガスの輸送のために、レバノンを支援する」との米政権の決定を伝え、「エジプト産ガスをヨルダンとシリアを経由してレバノン北部に輸送するために、便宜が図られる」「現在、このガスのコストを調達するために世界銀行との交渉が行われている」と述べた。
―ナスララ・ヒズボラ書記長は、「レバノンにおける燃料危機は捏造されたものだ」と述べ、「石油製品を積載した船が数時間以内に、イランからレバノンに向けて出港する」と発表した。
―上記に対してハリーリー元首相は、「イランからレバノンへの船の派遣は、国内外の紛争にレバノンを巻き込む危険な発表だ」と述べ、「レバノン政府の合意なく船を派遣して国際法に違反することをイランがどのようにして自国に許すのだろうか」と疑問を呈した。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタンの首都カブールのハーミド・カルザイ国際空港の入り口に、移住目的の人々が押し寄せ続けており、集結した人々を空港から引き離すべく、タリバン戦闘員や空港内に留まっている米軍部隊が空に向けて威嚇発砲を続けている。空港内にはアフガンの特殊部隊も留まり、一部の空港出入り口を警備している。空港内で押し合いや発砲により複数が死亡した翌日、タリバンは国民に対して空港から退去するよう促している。
―このような中、タリバンは、「出国を望むアフガン国民や外国人のために、同空港までの安全な通路を確保する」と述べた。同空港とその周辺には、アフガンを発つ便に間に合うよう押し寄せた数千人が足止めされ続けている。
―カービー米国防総省報道官は、「米軍はタリバンと連絡を取り続けている」「カブールの空港への移動を円滑化することに関して、タリバンとの合意がある」「米軍は、米国人の空港への移動に対するタリバンの妨害を目撃していない」と述べた。
―カルザイ前大統領とアブドラ国家和解高等評議会議長は、権力移譲や国内情勢に関して諸政党と協議した。これより前、両者はタリバンの責任者(主要グループのメンバー)アナス・ハッカーニー氏と会談している。
―G7外相の(オンラインによる)会合の後、ラーブ英外相は「G7は、アフガンにおける包括的政治解決を支援するために取り組む」「アフガンが国際安全保障のいかなる脅威の温床にもならないよう、タリバンに保証するよう求める」「G7外相は、国内各地で暴力的な報復行為が行われているとの報告に関して深刻な懸念を表明した」と述べた。
―ゼーホーファー独内相は、「独がタリバンと協議していることは、行わなければならない妥当な事だ」「このような協議を通じて、アフガン国民のために何かを成し遂げることができる」と述べた。
―バイデン米大統領はABCニュースのインタビューの中で、「タリバンが変わったとは思わない」「タリバンは国際社会からの(正当な政府としての)承認を得たいとの望みに関して、ある種の実存的危機に直面している」と述べた。
―オースティン米国防長官はアティーヤ・カタール防衛担当国務相と会談し、アフガン情勢について主に協議。同長官はカタール政府に、「アフガンにおける米の任務への支援、及び、同国から退避中の米国人の安全確保への支援」に関して謝意を表明し、「米はカタールとの継続的かつ強力なパートナーシップを持続する」「米は常に、カタールから必要とする支援を得ている」と述べた。一方、アティーヤ国務相は、「ここ数日間、米・カタールのパートナーシップの力強さと重要性が示された」「アフガンの和平協議を進展させる方策について協議することを望んでいる」「地域の安定強化のために、安全保障・防衛に関するパートナーシップの改善に取り組み続ける」「地域における米の任務とカタールにおける米のプレゼンスに関して、全面的に支援し続ける」と述べた。
―国連テロ対策事務所(OCT)のフォロンコフ事務次長は、「アフガンでの急激な展開は、世界の平和と安全に長期的に影響を及ぼす可能性がある」として、安保理に対して「アフガンが再び、テロの拠点や安全な避難場所とならないよう、与えられている様々なツールを利用するよう」呼びかけた。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―なぜアフガン政府軍は急崩壊したのか
①兵站補給の不足。政府軍崩壊の兆候は何カ月も前から見えていた、と米紙は指摘。地方でタリバン拠点が拡大するにつれ、政府軍は武器弾薬・食料の不足に悩み、タリバン支配地域が徐々に拡大していった。空輸も減り、主要都市を守っていた政府軍にも物資が届けられなかった。②兵力不足。紙の上では30万人いるとされていた政府軍だが、米国高官によれば、実際にはその6分の1であった。アフガニスタン高官はこれを直視しようとしなかった。③心理戦。政府軍の指揮官はまだ戦闘中にも拘らず降伏した。外国人兵士がタリバン側に流入しタリバン軍は膨れ上がった。支配した地域で奪った政府軍の武器と、住民を強制徴用して、タリバン兵力は更に大きくなった。(アッシャルク・アルアウサト紙)
中東の新型コロナ動向
―イランの新型コロナによる累計死者数が19日、10万人を超えた。イランは中東で最もこのパンデミックの影響を受けている国であり、政府はこの数字が実際よりも少ないであろうことを認めている。同国は、感染拡大が始まって以来、経済への悪影響を考慮して欧米型のロックダウンを実施してこなかったが、16日より、政府・民間施設、商店の閉鎖、県境を越える自家用車での移動禁止等の措置を命じた。17日には新規感染者数50,228人、死者数625人を記録した。(アッシャルク・アルアウサト紙ほか)
<特記事項・気付きの点>
―特になし