近づいた大イスラエル建国の夢

◆主力戦闘機に加えられた改造

 イスラエルからイランの首都テヘランや、中部の核施設までは約1500~2000キロあり、イスラエル空軍の主力戦闘機F-35では航続距離が足りない。それが、戦闘機による核施設攻撃が何年も前から繰り返しうわさされつつも実行されない理由の一つで、来年に予定される最新鋭空中給油機の納品まではないかもしれない、などと筆者は勝手に考えていた。しかし報道によれば、今回攻撃に参加したF-35はドロップタンク(使用後落下させる増設燃料タンク)を取り付けることで、この長距離攻撃を空中給油や他国(米軍基地)での着陸給油なしに実行できたとのことだ。こう述べた米当局者によると、米国が協力したこの改造でF-35は、そのステルス性能を維持しつつ、航続距離を延長できたのだという。

 攻撃が開始された日、ルビオ米国務長官は開口一番、「米軍の不関与」を強調したが、匿名を条件にこの情報を暴露した米当局者もまた、攻撃はイスラエルの単独作戦であって、米軍の空中給油機や基地は使用されなかった、という点を印象付けたかったのかもしれない。一方で、イスラエルの作戦遂行を可能にしているのは米国で、昔から深く関与していることを暴く結果ともなった。

◆親イラン勢力後退の起点

 「黄金のポケベル」をご存じだろうか? それは今年2月、ホワイトハウスに返り咲いたばかりのトランプ大統領を訪問したネタニヤフ首相が贈った記念品で、もちろんイスラエルが昨年9月にヒズボラ関係者を標的に敢行した大謀略作戦の成功を自画自賛したものだ。おそらく軍事史に最も卑劣かつ巧妙な作戦として残るであろうこの「ポケベル作戦」で、民間人や子どもを含めた約3000人のヒズボラ関係者が手や視力を失い、数十人が死亡した。それがその後のヒズボラ勢力の一掃、シリア・アサド政権崩壊という、親イラン勢力の大幅な後退の起点となった。

 就任後初の外国賓客として、「国際刑事裁判所から逮捕状の出ている」首相を招いたトランプ大統領の行動にメッセージがあるとすれば、この記念品を贈った「容疑者」ネタニヤフの意図は、「謀略で共に世界を征服しよう」といったものであったのだろう。トランプ大統領は、答礼に「偉大な指導者・ビビ(ネタニヤフの愛称)へ」とサインした写真を贈ったとCNNは報じている。

◆実体は「米国の戦争」か

 「米軍不関与」を強調しながら、イスラエルのミサイル防衛という面では、湾岸の米軍基地、艦隊が全面的に参戦していたことも明らかになった。本稿執筆時点で米軍がしていないことは、直接イラン領内に武器を向けていない、ということだけである。イスラエル軍は米国の突出した軍事援助で育てられ、武装され、イランの強力な弾道ミサイルという火の粉も払ってもらっている。爆弾とミサイルを撃ち尽くしたとしても、次の補給は約束されている。それは、イスラエルの戦争に超大国が協力しているというよりは、「米国の戦争をイスラエルという先兵が実行している」という構図であるかのごとく筆者の目には映る。

 カナダで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、「イスラエルの自衛権を確認し、イランに核兵器保有を認めない」といった、これまた的外れな声明を採択した。その陰で、イスラエルは今日もガザ地区の住民の食料を断ち、毎日数十人を虐殺している。西側世界がこの現実に目をつぶり、湾岸アラブ諸国もすべてなびいてしまった今、シオニストは「大イスラエル」建設というその夢の実現を目前にしている。   

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