一日も早い米軍撤退でホルムズ開放を

◆封鎖措置、世界経済人質に取る蛮行

 1863年、長州藩は下関で関門海峡を航行する米国商船や仏蘭の軍艦を砲撃したが、逆に強い報復を受けて、攘夷運動は頓挫した。時は流れ、21世紀も4分の1以上が過ぎた今月、イランはホルムズ海峡を隠密に通り抜けようとしていた2隻のアラブ首長国連邦(UAE)タンカーを攻撃するなど、事実上の封鎖措置を続けている。長州の勇ましい攻撃とは規模や文脈も異なるが、それは世界経済を人質にとり、隣接する友好国を傷つける愚行であり蛮行だ。これは一日も早く、やめさせなければならない。

 ところが、肝心の米国は及び腰で、敵の砲火の届かない遠方から撃ち込むトマホーク(射程1600キロ)に頼っている。近代戦史上最大となる850発を最初の4週間で消費、つまり、撃ち過ぎて足りなくなってしまったので、米軍需企業レイセオンに約230億ドルで追加発注、増産を急がせているという。そんな事情で7月の米側の連日攻撃は息切れした。これに対し、ガリバフ国会議長は(敗戦国が支払うべき賠償要求を含む)覚書の条件を米国が完全履行しない限りホルムズ海峡は封鎖されると言い放った。

◆米圧力弱めず、イランますます強硬に

 改めて言う。それは世界と近隣諸国に刃を向ける蛮人の愚かな行為だ。長州(=日本)が悔い改めて発展できたように、イランも国際社会の一員に復帰しなければ明るい未来はない。それはイランも分かっているだろう。にも拘わらず、やめるどころか、ますます強硬になるのは、米国が圧力を弱めないからだ。そもそも、いきなり最高指導者を爆殺するという国際法違反も甚だしい先制攻撃を米・イスラエルが始めなければ、イラン神権政治はホルムズ海峡だけは手を出していなかった。革命以来、ずっと欧米の制裁に苦しんで来ていても、だ。

 しかし今般、イランがこのカードを捨てないのは、世界最強の軍隊が、ジャングルの掟に従い、なりふり構わず侵略してきたことへの最大の防御となっているからだ。公海を通航する商船への攻撃・通航妨害は、UAEが安保理に訴えたとおり、許されざる国際法違反だが、ガザで集団虐殺を犯しているネタニヤフ政権を支持してイランを「石器時代に戻す」と一方的な軍事攻撃を始めたトランプ政権の悪事に比べればかわいいものだ。

 また、ロイターは、UAE の国営石油会社(ADNOC)がShip toShipという、積荷を湾外で積み替える手法によってナフサ輸出を再開したため、1300ドル/トンまで上昇していたナフサの指標価格が 6月2日には788ドルに急落したと報じた。積荷はいずれにせよ海峡を通過しなければならないが、売り手側の危険負担で積み出すことによって、アジアの顧客は、安全に、つまり、低コストで買うことができる 。

◆米軍撤退後にイラン復興に全面協力を

 ガリバフ国会議長は、「米国とイスラエルは開戦時に掲げた9つの目標を一つも達成できなかった」「イランは、軍事面でも政治面でも真の意味で勝利したと確信」などと述べ、トランプ大統領が敗北を認めて撤退するよう求めている。これは単なるイランの強がりでなく、米メディアでも米国の「戦略的敗北」を口にする識者の批判的な声が増えているという。しかし、トランプ大統領は、配膳車に乗って大統領専用機から逃げ出した事実は認めても、戦争に負けたとは絶対認めないだろう。

 認めなくてよいので、世界中、特にペルシャ湾内に閉じ込められている同盟国にかけている迷惑・困難の極みを一刻も早く取り除いてもらいたい。空母打撃艦隊を引き揚げるのだ。兵を引けば、イランの態度は大きく軟化する。その後に、日本を含めた西側と近隣諸国はイランの復興に協力を惜しむべきでない。私見では、それがイラン民主化、湾岸情勢安定への最短ルートである。革命防衛隊のヒエラルキーは、その後に崩壊する。彼らは非常時の少ない富を独占するための組織であった。経済が回復した後では、市民が力を持ち、自らの手で専制政治を倒せるであろう。

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