最初は三ヵ月だけで終了するかもしれない、という前提で始まったアルジャジーラの「一部同時通訳付き放送」は、反響もあり、11ヶ月続いた後に打ち切りとなりました。映像配信事業を行なっている会社である「スカパー!」が、配信元からチャンネル使用料を徴収するのではなく、逆に映像使用料を払って放送するという異例の番組でした。イスラムテロの時代という流れの中で、エポックメイキングな仕事であったと思います。
私は放送が始まった次の日から、この「日本のアルジャジーラ」のプレゼンスを維持拡大していくことを心配しました。BBCやCNNのように、日本では常態的に同時通訳放送されているニュース専門チャンネルがあります。アルジャジーラがこれらの主要チャンネルに伍して行くには、カタールの本社が主体にならなければなりませんし、日本に会社を設立しても、その会社が視聴料やスポンサー料によって成り立って行かなくてはなりません。いろいろあたってみましたが、関心を示す人はいませんでした。悲しいことですが、当時の日本人のアラブ理解の限界であったし、アラブ側の無理解もまた然り、という状況でした。
この間、いろいろなことがありましたが、スカパー!での放送終了後まもなく始まったのが、NHK-BS1チャンネルのワールドニュース枠でのアルジャジーラのニュースです。その仕組みを簡単にご説明致しますと、NHKは世界各局と相互協力合意を結んでいます。アルジャジーラとの関係で言えば、アルジャジーラのシグナルが24時間渋谷に届いていて、これを自由に利用できるのと同時に、NHKの映像もアルジャジーラが受信していて、日本で事件があるとアルジャジーラはNHKの映像を使用します。例えば東日本大震災を伝える映像なども、直接利用されたのです。
NHK-BS1では、日本が深夜早朝の間に入ってくる世界の最新ニュースのなかから選択した重要ニュースを朝6時から8時の時間帯に集中的に放送しています。現在の番組名は「ワールドWAVEモーニング」です。この番組作りにおいて、私達通訳者はニュースキャスターをサポートする主要な役割を果たしています。すなわち、入ってくるニュースを聞いて、細かな項目メモを作成します。あるニュースを、どのような角度で伝えているか、といった情報も伝えます。その上で、選択されたニュースの翻訳原稿を作成し、放送と同時に通訳をつけていくのです。
アルジャジーラについて言えば、午前3時からのニュースを素材として用います。25分のこのニュースでは10〜20項目のニュースが伝えられますが、その中で、大事と思われるニュースを2、3項目ピックアップしてお伝えしています。
最近、この仕事に変化がありました。というのは、欧米が冬時間に移行してニュースの時間が変わるのに合わせて、ワールドWAVEの側も体制をいじるのですが、この冬時間編成でアルジャジーラは番組のトップを切って6時ちょうどからお伝えすることになりました。これまでは、8時台の半ばで、時間がピッタリ決まっていないこともあってアルジャジーラ・ファンの方にはご迷惑だったのではないでしょうか。朝少し早いですが、どうぞご覧になってください。シリア、エジプト情勢が大きく動いています。
また、午後3時からのWAVEアジア枠では、韓国KBSの後にその日の10時のニュースから厳選した話題をお伝えしています。(15:08ごろ)お楽しみ下さい。
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