国立にも同胞団

衝撃的な話をしよう。
日本とシリアの五輪代表がロンドン出場を賭けて熱戦を繰り広げた27日の夜、国立競技場のスタンドで、シリアの混乱を輸入したかのような「衝突」があった。この現場に偶々弊社の社員2人が居合わせた。ひとりは、問題の発生を受けて現場に事態収拾のために急行した主催者側で働いていた弊社通訳、もうひとりは、母国チームの応援のためにスタンドへ行き、まさにこの「衝突」に巻き込まれたシリア人社員であった。
2人の話を総合すると、概要、次のようなことがあった。
国歌演奏があり、さあいよいよ試合開始というとき、スタンドに現在は反政府勢力が団結のシンボルとして使用している「もうひとつの国旗」が揚がった。これを機にスタンドでは「体制派」「反体制派」の2派との間で、殴る蹴るなどの暴力沙汰となった。主催者側の警備員が割って入り、旗の掲揚などをやめさせたため、衝突がそれ以上激化することはなかった。しかし、反体制側と目される集団は、拡声器を使って政権打倒のスローガンや、体制派を誹謗中傷する言葉を浴びせ続け、試合の終了を待たずにどこかへ消え去った、というのである。
この「反体制」集団、奇妙なことにシリア人ではないらしい。エジプト人、アルジェリア人など非シリアのアラブ人のようであった、といい、また、見たことのない人たち(つまり、日本に在留しているアラブ人であれば、普段から顔見知りであるが、まるでこの日のために国外からやってきたのではないかと思われる人たち)であったという。大きな顎髭をたくわえ、一見して戦闘派とわかるこのイスラム過激主義者たちは、試合前、付近の駅前で目撃されていた。そのひとりは、「石や棍棒を持ったか?今夜は問題を起すんだ」とアラブ系の観客に手当り次第に話しかけていたいう。
つまり、この夜の「衝突」は、偶々居合わせた意見・政治主張の異なる2つの集団の間に自然発生したものではない。明らかに「反体制派」を自称するグループが計画的に起した混乱である。
別の言い方をすれば、新しい旗を掲げた人たちはそもそもその旗の下に結集する資格を有するシリア人ではなく、いわばその「応援団」だった。シリアの権力闘争を国外で応援しようという人々が、サッカーの応援という国際的に注目を集める可能性のある場所で問題を引き起こすことによって、国際的なメディア露出を画策した、ということのようだ。
「アラブの春」を人権問題、ましてや民主主義の問題としてだけ捉えると、判断を誤る。
1_1098499_1_23.jpg
「新しい旗」の成功を望む気持ちはわかるが… (シリア国内でのデモ)

コメント

タイトルとURLをコピーしました