大飯原発の再起動が実現する。
(電力不足という)最悪の事態は回避された、というのが一般的評価のようだが、そうであろうか。野田という、稀代の名宰相のおかげで夏の甲子園をクーラーかけてテレビ観戦できそうだ。鳩菅のどちらかが残っていれば、と考えるやゾッとする。しかし半面、この「その日暮らし」的解決のために、日本人はエネルギーについて身に沁みて考えさせられる機会を失ったのではなかろうか。
いや、停電が起きようと経済がどん底に沈もうと、日本人がエネルギーを理解することなんか有り得ないのだろう、と思う。先の大戦で何百万人が犠牲となり、餓死者を出す困窮を経験しながら、今日の日本人のエネルギー音痴、ここに極まっているのである。多少の犠牲で「脱原発原理主義」が収まる筈もない。
小生は、繰り返しになるが「原発依存の現状から一刻も早く脱却するために、少しでも多くの原発を稼働すべき」という立場である。そのことは、1年前に本欄で拙劣な議論をした。(下記リンク)
-浜岡原発の停止
-エネルギーはみんなのもの
-エネルギーはみんなのもの(2)
-エネルギーはみんなのもの(3)
-エネルギーはみんなのもの(4)
-エネルギーはみんなのもの(4の2)
-エネルギーはみんなのもの(4の3)
-エネルギーはみんなのもの(5)
-エネルギーはみんなのもの(5の2)
改めて読み返してみると、一部感情が昂ってどうでもよいことを書いな、と思う部分があるが、今日の問題あるはあまりに明白であったため、今なお古ぼけてはいない。あれから1年。想像に違わず、政治家もマスメディアもポピュリズムに走り、一刻を争う震災復興の義務をないがしろにして電力供給体制をめちゃくちゃにした。震災後の1年余、その加重な負担を日本国民は負い続けているし、これからも多大な電力料金他の値上げとして負担して行かねばならないのだ。
「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」と言うが、国民とメディアがこぞってエネルギー音痴であるために、如何に滑稽な風景が出現しているか、ひとつだけ指摘しておこうと思う。
政府は、大飯原発再稼働に当たって、その安全性をより確実なものとするため、「経産副大臣を現場に常駐させる」と発表した。これにはぶったまげた。人身御供として処女でも捧げるなら原発の神様は怒りを鎮める可能性も万に一つはあるかもしれない。しかし、顔にシミのある老人をお飾りにして、何の安全性だろう。第一、現場に総理が飛んできて大いに邪魔にになった、という事例が起きたばかりではないか。
そう思っていたら、副大臣はおひとりではなく、実に20人からの行政官、技術者を引き連れて「現場に乗り込む」のだ、と発表された。関電はなぜ怒らないのか?あなた方にはキンタマあるのですか、と言わざるを得ない。関電に問う。そのような人々に来てもらわなければならないほど、再稼働は危険なのですか?(Yesならすぐに再起動は止めて下さい。)
このチームが無用の長物となり、ただでさえ加重な負担を強いられている現場のよけいな負担になることは目に見えている。20年以上も前、サッダームフセインのクウェート侵攻で湾岸戦争の勃発が懸念された時、日本政府はサウジに大量の右ハンドル救急車と「医療団」を送った。もう時効だから言うが、これらはサウジ政府の受け入れるところとならず、何の役にも立たなかった。(後始末に派遣された私が言うのだから間違いない。)役人は常にこういうばかげた対策を捻り出す習性があるし、そうさせているのが本質を報じないマスメディアなのだ。安全性を高めたいなら、20人の派遣費用でパイプのひとつも新品と交換することの方がよっぽど効果がある、と思う。
再度確認したい。
副大臣派遣を受けなければならないほど安全対策が出来ていないのであれば、再稼働などしない方がよい。
独自に安全対策が出来ているのなら、くだらないチームは送らない方がよい。そして、政府も電力会社も、堂々と訴えるべきだ。「電気は必要なのです。それを必要としているのはあなた方自身なのです。」と。
コメント
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日本人は「エネルギー音痴」というか、「安全保障音痴」のような気がしますね。
特に原発と米軍基地は、それぞれ悪意のぶつけ方がほとんど同じですよね。そんな物騒なモノはなくしてしまえ、と威勢の良い一方で、どっぷりと依存しているところまで…
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とおりすがり 様
-エネルギーは安全保障問題の重要な一翼を担っております故、エネルギーが分からない限り安全保障問題に正しくアプローチできないということは言えると思います。
-ご指摘の類似は、面白い比較だと思います。ありがとうございました。(ただ、背景の構図が異なるため、単純に比較はできないと思います。)
-私が、国民の間にエネルギーに関する基本的な知識と意識が普及していないと思う理由はたくさんあって書ききれませんが、
①戦後一貫して他地域よりも高い価格で石油(ガス)を買い続け、世界でも飛び抜けて高物価の住みにくい国を作ったことへの反省がないこと
②「耐乏生活」をすれば原発のない社会を今日からつくれると思っている人があまりに多いこと
などは、原発をどうするかという問題に直接関係のある愚かさであろうと思っています。