エジプトの安定

大統領選とりあえずの評価
(サッカーの日本VS豪州戦をさばいたサウジ人審判。驚きの判定の連続だったが、出てきた1-1という結論に妙に納得したのは私だけか。同じように、奇妙な妥協の産物として、軍と同胞団という天敵同士のコアビタシオンが始まるのだろうか。中東は実に奥が深い!)
185018_327039737377526_1282442057_n[1]
©ロイター
開票率97.5%の段階で、ムスリム同胞団出身のムルシー候補が勝利宣言をした。得票率で、5%のリードがある由であり、その情報が正しければ、勝負はついたのであろう。
国民の代表でなく、何ら「革命」後の政治的権能を有さないはずの憲法裁判所が先の人民議会選挙結果を無効と判じたり、逆に人民議会の制定した法律を憲法違反として旧体制の人物の大統領選出馬を容認したりと、エジプトを実質的に支配している旧政権エリートはあの手この手を使って「革命」の骨抜きに取り組んだ。その集大成は、投票結果発表の1日前に軍最高評議会が出した「憲法補足宣言」であって、選出される大統領の権限が大幅に制限されるという。
ムルシー氏はそのような中で、新大統領に就任する。これは、旧体制にとっても、米国はじめ諸外国にとっても、また、急激な変化と治安の大混乱を望まない、善良な多数のエジプト国民にとっても、もっとも望まれた結論になりそうだ。その逆にシャフィーク候補が勝利していたら、同胞団は第二革命を起すと宣言していたし、おそらく、収拾の着かない大混乱が待ち受けていたことであろう。
「大統領になったら、副大統領にはキリスト教徒を任命してもよい」と公約していたムルシー氏の手腕が注目される。冒頭の勝利宣言でムルシー氏は「すべての人が平等な権利を有し、専制を許さない社会。市民的、愛国的、民主的で憲法を守る、近代的な国家を創る」と発言した。しかし、その言葉をどのような政策として実現していくかによって、支持母体であるイスラム主義者の反発を買うであろうし、そうでなければ、彼が同盟を期待している世俗主義者にもソッポをむかれるだろう。
アルジャジーラが報じた「統計」によると、エジプトの「腐敗」(賄賂額)は年間60億ドルに上り、世界で112番目(きれいな順)に位置する腐敗国家だという。その額が実際より多いか少ないかは別として、旧体制が如何に甘い汁を吸い、彼らよりアンラッキーであった同胞に迷惑をかけ続けてきたかは、はっきりとしている。「革命」はそのことへの怒りが爆発したものだったが、その結果旧体制を倒すまでに至らず、旧体制と新しく台頭する宗教勢力という2つの腐敗体制の連合体に鎮圧されてしまった。おそらく、これでしばらく次の幕が開くことはあるまい。腐敗のない国づくりなぞ、所詮無理と諦めるか。

コメント

  1. 中東ウオッチャー より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    次の幕が開かないかどうか、わかりませんよ~
    そもそもムバラクが追い落とされるなんて、高名な専門家の方々の誰も予想してなかったんですから。何だってありでしょう。公式結果でまさかのシャフィーク勝利とか、憲法裁判所が大統領選挙無効判決とか…
    何にせよ、諦めずにエジプトの民衆パワーに期待したいです。適度に腐敗している新興国の方が、過剰コンプライアンスで窒息している先進国よりも経済に勢いがありますしね

  2. jaber より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    中東ウオッチャー 様
    貴重なご意見、ありがとうございました。
    今後ともどしどしお願いします。

  3. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    知り合いの議員さんが、「クリーンにしていたら、だれも寄って来なくなった…」と言う言葉を思い出しました。

  4. 中東ウオッチャー より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    来た来た! 公式結果発表が延期!
    今ごろ、シャフィーク逆転勝利の筋書きを必死に書いてますね、きっと。
    いざ! 第二革命へ!

タイトルとURLをコピーしました