4月1日は金曜日だった。
アラブ世界全体に広がった「民衆革命」のツナミは、依然勢いを和らげることなく各国を襲い続けている。しかし、以前も指摘したように、国ごとにその態様は大きく異なってきている。
◆シリア◆
アサド大統領が期待を裏切る演説で譲歩を示さなかったことから、フェイスブック等で「殉教者の金曜日」と名づけられたこの日、各地で集団礼拝後にデモが繰り広げられた。報道では死者3~4人で、当局側の規制は抑制されたものであったようだ。
82年のハマの大虐殺の再現を誰もが恐れている。それが、長期に独裁政権が維持されている理由のひとつだろう。しかし、今の流行は、軍が国民を撃つとその政権は失脚を余儀なくされる、というものだ。アサド政権が大虐殺を敢行しても、それは自らを絞首台に送るためにしか役立たない可能性もある。「治安部隊が大規模に展開しているにも関わらず、人々はこれを恐れずにデモに参加している」という表現がアルジャジーラで使われていた。
シリアのデモの特色は、エジプトやイエメンのように「大統領出て行け」ではないことだ。シリアに政治的自由は一切なく、行政機関は汚職にまみれている。しかし、悪いのは取り巻き連中であり、若いバッシャール(アサド)は愛すべき指導者、という認識がある。デモのスローガンは「自由」とか「国民はひとつ」というものに限られている。
賢明なシリア人は、独裁の圧政はイヤだが、重石がとれてイラクやレバノンのように混乱するのはもっとイヤ、とも考えている。アサドを追放したところで、代替すべききれいな民主主義権力など育っていないし、育つ可能性も小さい現状では、現体制が多少の改革を受け入れることで混乱を収拾することがベストなのだと知っている人が多いようだ。
◆バーレーン◆
淡路島ほどの小国であるこの国の民主化運動の特色は、多数のシーア派住民をスンニ派の外来国王(祖先はカタールを追われて移り住んできた)が支配しているという構図に尽きる。このため、職をよこせ、自由をよこせという本来民主的な要求が、宗派間対立だと自動的に解釈され、スンニ派連合たるGCC諸国の介入を招いている。サウジ、UAE軍の装甲車がコーズウエーをわたって進駐した。これを見た住民は、これ以上の反乱を当面あきらめた様相である。
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