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第二次オバマ政権下の中東

このブログのタイトル「global middle east」は、「中東の動きは世界に影響を与え、世界の情勢は中東に影響を与える」という、いわば当たり前の原則をリマインドしている。当たり前ではあるけれども、絶海の孤島に住む日本人が忘れがちな基本原則を繰り返し想起してもらうのに都合がよいのでこう付けた。
そもそも世界情勢とリンクしていない地域情勢などないのだが、中東はよりその度合いが強く、また直接的に現れる点で非常に分かりやすい。1年ぐらい前から、イスラエルとイランの問題はどうなるか、アラブの春はどうなるかと聞かれる度に、私は「今年は選挙の年。選挙結果を皆が待っている。選挙までは動かない」と答えてきた。
その選挙(大統領選)が大方の予想通りに終わったその瞬間から、中東は大きく動き出した。イスラエルがガザ地区への攻撃を始めたのは、ネタニヤフ首相がオバマに祝意を述べてから24時間も経っていない8日のことだった。ブルドーザー等とともに侵入したイスラエル防衛軍兵士が銃を乱射してパレスチナの子ども1人を殺害している(アルジャジーラ報道)。
イスラエルにとって、もっとも嬉しい路線である「武装抵抗」を「飯のタネ」にしている愚かな指導部(ハマス)は、相手の意図を知りながら「思う壷」に落ちることしかできない。その日から対決はエスカレートの一途をたどり、軍事的最高幹部とされる「カッサーム部隊」のジャアバリ副司令官がピンポイント爆殺されるに至って、カッサーム部隊は虎の子のイラン製高性能中距離弾「ファジュル5」をテルアビブめがけて撃ち込んでしまった。これで、ネタニヤフは1月に予定されているクネセット(国会)選挙での優位と、イランの神権政治への更なる国際的締め付けの確保という二鳥を落とした。アラブ諸国や世界中の「市民団体」が如何に「イスラエルの自衛権」の欺瞞を憤慨したところで、この論理に理解を示してイスラエルのガザ侵攻を支持するという欧米の立場は保障されたのである。
それにしても一体、どうやってそんな飛び道具を密輸したというのだろうか!!
パレスチナ(ハマス)側の「武力抵抗には正当性がある」という「大義」の訴えは百も承知だが、大義で飯を食っているのは自分たち一部だけであり、民は飢えながら殺されている。この矛盾に答えを出すことができるのは、おそらくパレスチナ人自身をおいて他に、ない。(蛇足を言えば、ハマスはイランとアサド政権を頼っていたが、今般、アサドに徹底的に嫌われてダマスカスを追放された。)
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fajr 5 とされる資料写真 「初めてテルアビブに届いた!」
ファジュル5がガザ地区に搬入されるためには、シナイ半島からの密輸以外に方法がないが、イランはいったんスーダンに輸出、そこからシナイ半島の武装勢力経由密輸されるルートがあるのではないかという情報がある。いずれにしても、イスラエルの情報網はこのミサイルの存在をかなり前から掴んでいて、それを使わせる機会を狙っていたと思われる。
オバマ政権のこれからの4年間は、極東にも、また中東にも、静かに危機のタネを貯めていく4年間となる。熱い戦争に関与するのではなく、熱い戦争の危機を煽る人と、それをなだめる人が芝居を演じる間に、着実に武器販売と軍備関連の売上を伸ばしていかなくてはならないからだ。それが欧米、露、中というグローバル・プレーヤーの全ての利益に一致している。属国日本も実はそうである。もちろん、熱い戦争が絶対に起きないという保障はないが、起きても拡大する状況にはないと言っていい。
地域のメジャーなプレイヤーの利益にもそれは一致している。この点については、匿名で発表している記事に連載で優先権を与えたいので、きょうは書かない。ご関心のある方は、そちらをお読みいただきたい。とにかくこれからの数年間、シリアの人々の苦難は続き、それはガザ地区もイラクもレバノンも然りである。抗しがたい新たな「冷戦構造」が中東を支配している。(敬称略)

ペルーの料理文化

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ディーブの大使館めぐり「ペルー共和国編」(公開中)
今回ペルー編を制作するにあたって、私にも、また、プリゼンターのディーブにも、ペルーの予備知識がありませんでした。ペルーの豊かな食文化を採り上げよう、というアイデアは、エスカラ大使閣下に取材して初めてご提案を頂きました。調べてみて驚きました。本当に大使閣下をはじめ、関係者の皆様には感謝です。
じゃがいもも、トマトも、かぼちゃも、とうもろこしも、もし、これらの食材が無かったら、私達の現代の食卓はどれほどつまらないものになるでしょうか。ペルーの人々は、これらの素材の原産国として数千年前から美味しい食事をしていただけでなく、インディオの文化に欧州と、移民してきたアジアの諸文明がfusion(融合)して、時代の最先端を行く食文化が展開していたのでした。これを知らなかったのは不覚でした。
その真髄を知るには、ペルーに行ってみる必要があると思いますけれども、まずは私共の番組でそのきっかけを掴んでいただければ望外の喜びです。
ディーブの大使館めぐり(ペルー共和国編を選んでください)

犠牲祭

イスラム教徒の皆さん、犠牲祭おめでとうございます。
「犠牲祭(イード アルアドハー)とは何?簡潔に説明してくれないか?」
今年もまた、報道の現場で質問を受けました。言ってみれば奇妙な話です。イードは何も昨日今日始まったわけでなく、1400年もの間繰り返されてきた訳だし、毎年同じ報道をしているのですから、質問者も去年同じ質問をしたか、少なくとも疑問に思ったりしたのではないでしょうか。私も30年近く、毎年同じ質問を受け、飽きずに同じ説明をしています。「羊が降りてきたんです!」
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  野町和嘉さん撮影「メッカの聖モスク」
イブラヒーム(アブラハム)の不思議な経験については皆さんWikiなどで調べて下さい。私が今日提案したいのは、「イード」に適切な和訳を充てよう、ということです。実はこれが信じられないぐらい難しい…というお話です。
イスラムの暦にはイードが2回あります。一番大きいとされるイードが犠牲祭、次にイード アルフィトル(=断食明けの祝日)です。国によってお休みになる日数が違いますが、通常前者が4日間、後者は3日間です。ここまで書くと、イスラムのことを知らない人でも大体分かるでしょう。ああ、盆と正月みたいなものか?と。
その通り。イード(=Feast)は宗教的な理由に基づく大きなお休み、祝祭のことです。「おめでとう」という挨拶を交わし、ご馳走を食べ、きれいな服を着て祝います。子供はお小遣いを貰います。それは本当にお盆や正月に似ています。しかし、正月ではない…。「Feast」です。「Feast」とは何でしょうか?日本語で、何と言えばよいのか、なかなかぴったりとした言葉がないですね。辞書には、(宗教上の)祝祭,祭日,祝日,祭礼…とあります。(もちろん、他に祝宴、ご馳走といった意味もありますが)
私が間違っていたら教えて頂きたいのですが、少なくとも現代語にはFeast(=イード)にぴったりくる日本語がありません。そこで「お祝い」です、とか「祝祭日」です、とか「宗教的なお祭り」です、と説明します。このあたりが、いつまでたっても日本で「犠牲祭」が市民権を得ないひとつの理由と睨んでいます。
「お祝い」と言えば、還暦の祝いもお祝いだし、就職した姪にあげるお金もお祝いです。「祝日」は、みどりの日も祝日ですし、長い休みのことを言いません。その日一日を言います。「祭り」に至っては、御神輿を想像してしまうのは、日本人として仕方のないことでしょう。
marriage の意味は何ですか?と聞かれたら、99%のひとは「結婚」と答えるでしょう。これは、昔、日本には契約概念のマリアージュという考えがなかったため、嫁入りとか祝言という言葉で表すには不便、ということで新しく作られた(明治維新時の造語)と聞いています。逆に今では祝言と聞いても理解できない若い人が増えています。言葉とは、このように必要に応じ、時代に応じ変遷するものです。
そこで私の提案は、イード(=Feast)に日本語を!ということです。新しい言葉を作ります。
祭節 はどうでしょうか。(さいせつ、と読みます)
「正月も、お盆も日本人の大切な祭節です。」どうでしょうか。ようやく、外国人に日本語で日本のことを正確に表せるようになりました。正月や盆がありながら、Feastに当たる言葉がないのは、日本語が閉鎖的な文化のままでいられたからに他ならないのです。

イラク戦争から10年

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時の流れは信じられない速さです。来年3月で、イラク戦争開戦から10周年ですね。先程、ある原稿を書いていてイラク戦争の細かいところを思い出さなかったので、本書に手を伸ばしました。実は、ほんの見開き1頁だけ、小生にも出稿依頼があったので拙文が載っているのです。何年ぶりかで、久しぶりに自分の書いたものを読んでみて、ふと面白いことに気がついて嬉しくなりました。それは、原稿の一番最後に書いてあった次の一文です。
「変革できない多くの政権は、交代の時期が近づいている。そして、徐々にではあるが、イスラム過激主義の欺瞞性が暴かれていくことを推理する。」
2003年6月頃に書いたものですが、ちゃんと予言してましたね。
イラク戦争 検証と展望

2013年イスラム暦付カレンダー

今年も、残すところあと2ヶ月余となりました。皆様のご愛顧にお応えして、来年のイスラム暦付カレンダーを発売します。11月20日までにネットでお申し込み頂きました方には送料無料サービスがあります。また、好評の10部購入でおまけ1部進呈キャンペーンも実施します。お世話になった方への贈り物、グリーティングカードに代えたプレゼントとしてご利用頂いております。ぜひ、この機会にお求めください!
イスラム暦付カレンダーのご紹介とご購入案内へ
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2013Ma’lumat Calender (来年のラマダンは7月9日より)
「マアルマート」(Ma’lumat)カレンダーの正式名称に採用しているマアルマートとは、アラビア語で「情報」という意味です。この名を冠した文化探訪ツアーはお陰様で今年20回目を数えました。カレンダーでは、このツアーの最中に撮影された中東の文化遺産の写真が散りばめられています。中東と一口に申しますが、私の理解する中東は大きな広がりを持った大中東(Greater Middle East)です。イスラムがユダヤ教とキリスト教の強い影響を受けて成立したことと、その後の歴史を振り返れば、この大中東で三大宗教が折り合って発展していくことが、人類にとってどれほど大切なことでしょうか。そんな願いを込めた風景の選定をしています。毎月の美しい風景をお楽しみ下さい。(Special thanks to SQUADD)
イスラム暦付カレンダーのご紹介とご購入案内へ
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2013Ma’lumat Calender (イスラム暦は毎年11日づつ太陽暦を追い越して行きます。「犠牲祭」10月15日より)
今年もご購入金額のうちから1部につき500円をNGOの日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)を通じてイラクの小児ガンに苦しむ子どもたちの医療支援に寄付させていただきます。JIM-NETは、鎌田實医師が代表を務める特定非営利活動法人(NGO)で、米軍が使用した劣化ウラン弾による放射線障害が原因と思われるガンを患った子どもたちに対する医療面での支援を続けています。
残念なことですが、米軍が完全に撤退した後もイラクの政情は不安を極めており、最大の被害者である南部の開発の遅れた地域に住む子どもたちへの政府の支援は十分行き届いていません。皆様から頂きます支援は、それだけでは決して十分でありませんが、彼らの命を支える、重要な浄財として活かされています。もうしばらく(30年ぐらい!?)、支援が必要です。どうぞよろしくお願い致します。
<故・山本美香さんにご愛顧いただきました>
8月にアレッポで凶弾に斃れた山本美香さんにおかれましては、ずっと、このカレンダーをお買い求め頂いていました。発売とほぼ同時に、お申し込みを頂き、代金を送って頂きました。私が映像の中でしか知らない子どもたちと現場で接してきた山本さんのご支援をとてもうれしく、心強く思っていました。今年も、ご霊前にお届けしようと思っています。
<手作りのカレンダー>
このカレンダーは企画に始まり、材料集め、デザインと版下作り、広報と販売、すべてを弊社でまかなっています。(外注は印刷と製本部分のみ)
イスラム暦の監修は小生が務め、その他のほとんどをIT戦略部長の沢田が担当しています。弊社のような零細企業にとって、これは大変な重責かつ、大きなコストとなっています。しかし、ひとりでも多くの方が中東の広がりと奥深い文化に触れていただき、この地域が抱える問題と大きな将来性に目を向けていただくことが、小社の存在目的であると考え頑張っております。どうか、これからもご愛顧をよろしくお願い申し上げます。
イスラム暦付カレンダーのご紹介とご購入案内へ

Vive la France!

職業柄、中東からの絶え間ないニュースの中に身を置いているが、28日、「これは?」と注目した2つのニュースがあった。ひとつは、「仏内相、モスク落成式でイスラミストは追放すると宣言」というものであり、もうひとつは「預言者侮辱の映画製作者逮捕」のニュースであった。
1.「ヴァル内相、大モスク落成式で過激なイスラム主義者は追放すると演説」
ストラスブールにフランス最大のモスクが竣工した。27日、その落成式があり来賓のヴァル内相が歯に衣着せぬ演説をしたのだ。こういう発言をできる政治家が日本にいるだろうか。報道から、重要部分を2箇所だけ抜き取る。
「イスラムはフランスに居場所を有する。フランスのイスラムは、フランスの一部であるからだ。」
「憎しみ合うことを扇動する者、蒙昧主義の徒、原理主義者、我々の価値観と制度を破壊する者、女性の権利を否定する者、そういう人々の居場所はフランスにはない。我が国にいながら、法律を破り、社会の根源に敵対する者たちが国内に留まる必要はない。イスラム教徒であると主張しつつ公共の秩序に重大な脅威を与え、国の法律と価値を尊重しない者共は容赦なく追放する。」
モスクの落成という祝典に臨んで、いくら「過激派は…」と断ってもイスラム教徒は追放するぞという強い言葉を堂々と発することができるというのはどういうことか?それも、平時ではない。預言者ムハンマドを侮辱した米映画問題で世界中のイスラム教徒の感情に火がついているタイミングであり、その上に仏風刺漫画誌の掲載した預言者風刺画の問題が追い討ちをかけていた。
Manuel Valls Inaugurates Stras_ mosque
French Interior Minister Manuel Valls in the Grand Mosque of Strasbourg
その秘密、というよりきちんとした理由はフランスの世俗主義にある。それがどのようなものであるか、小生の講義を聞いた多摩美の学生はよく理解しているところだ。日本のような消極的政教分離主義では、モスクに内相が招かれる、ということ自体が禁止され得ることであるが、フランスやトルコのような積極的政教分離(≦世俗主義)においては、世俗的価値を優先させ、日常生活における「宗教的行動」をしっかりと禁止することができるのである。
仏週刊誌の問題では、在外公館に最大の警備警戒措置を尽くしても、表現の自由擁護の立場を貫いた。イスラム諸国では一部騒ぎとなったが、フランス国内では目立った抗議行動は起きなかった。その自信が内相の言葉の奥に込められていたに違いない。Vive la France!
2.「預言者侮辱の映画製作者逮捕」
近年稀にみる「傑作」をYouTubeに流し、世界を大混乱に陥れた男が逮捕された。しかし、それは映画出演者を騙し、稚拙な方法で吹き替えをして醜悪なイスラム冒涜映像を作った罪ではなかった。元来、人を騙して財産を奪う詐欺罪で刑を受けている人物だったから、保護観察違反で再収監されたのである。
男は逮捕されたが、この男の作った作品は今もYoutube上にある。先ほど覗いてみたら480万view以上を記録していた。
ほとんど精神異常に近い、ふざけた犯罪であった。しかし、それがもたらした重大な結果に責任を有するのは誰か?「アメリカが悪い」、「イスラエルが悪い」というイスラム過激主義政権の主張は、われわれ異教徒だけでなく、真のイスラム教徒も受け入れることはできないだろう。

ブラボー!リビア

BBCなど複数の報道機関によると、21日リビアのベンガジではイスラム過激主義組織「アンサール・シャリーア」が拠点としていたサハティ駐屯地など複数の軍事基地を軍治安部隊と一般民衆が取り囲み、武装集団を追い払ったとのこと。
この対決の際、発砲もあり計4人が死亡、数十人が負傷した。この犠牲は貴い。武装グループは当初、空に向かって発砲するなどして威嚇していたものの、最終的には武器を持って逃亡した由。
「アンサール・シャリーア」は11日にベンガジの米総領事館を襲撃して米国大使ら4人を殺害する犯行を犯した中心的存在のサラフィー主義者の集団である。
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武装集団の横行に反対のデモを行うリビアの人々(Photo:AP)
今朝、偶々「政治的イスラムが蔓延る中東の今後は、イスラム教徒自身の覚醒と行動に期待する他ない」という趣旨の原稿を書いていたときに飛び込んできたニュースであった。未だに大使館の襲撃を正当化したり、暴徒化する抗議デモを容認する政府や論調がある中、単に軍・政府に刀狩を任せるだけでなく、市民ひとりひとりが立ち上がって「武装民兵拒否」の行動を起したリビアの国民はすばらしい。心からエールを送りたい。

イスラム過激主義の行方

次の話は、FBに出回っていたアラビア語の小話です。出回っているということは、エジプトの人の中に、少なからず共感する人々がいるということでしょう。引用されている故シャアラーウィ師に直接お会いしたことはありませんが、TVでよく彼の説教を見聞きしたものです。他のウラマーとは違い、エジプト口語で分かりやすい話をするイマームとして大変人気のある人でした。
著名な説教師、故シャアラーウィ師は言った。
私はある狂信的な若者と議論し、「イスラムの国でナイトクラブを爆破することは宗教的に許容されるか、それとも禁忌か」と聞いた。
すると彼は、「もちろんそれは許容され、人々を殺すことも許される」と答えた。
そこで私はこの若者に聞いた。「では、諸君が彼らを殺し、その者達はアッラーに背いていたとすれば、彼らの(死後の)行き先はどこか。」
「もちろん地獄だ」と若者は言った。
「では、悪魔は彼らをどこへ連れていこうとするか?」と私は尋ねた。
「もちろん、地獄です。」
そこで私は言った。「では、諸君は悪魔と目標をひとつにしているのだね。人間を地獄に落とすという目標に。」
そして私は彼らに預言者の言行録(ハディース)のひとつを教えた。
ある日、預言者ムハンマドの前をユダヤ人の葬列が通過したとき、彼は、すすり泣きを始めた。
人々は尋ねた。「アッラーの使徒よ、なぜ泣いているのですか。」
預言者は言った。「一人の魂が私の元を離れ、地獄へ行ってしまったからだ。」
そして私は若者達に言った。「見よ、諸君とアッラーの使徒の違いを。彼は人々を導き、地獄から救おうとされているのだ。諸君とアッラーの使徒は、まるで別々のワジ(涸れ川)にいるかのようだ(別々で、出会うことがない、の意)。」
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故シャアラーウィー師
預言者を侮辱する映画に激昂して米国大使館を襲った人々の行為の延長線上には、かつてシナイ半島やジャワ島で発生したナイトクラブ爆破テロのような、無実の人々を巻き込む「ジハード作戦」があります。しかし、上記のような話がFBで取り上げられ、また、庶民に人気のあるイマームによって語られているという事実は、実はデモに参加して暴動に加わるような過激派(サラフィスト)は少数であり、また、多くのイスラム教徒の心情を代表したものではない、ということを証明していると言ってよいでしょう。
ところが、ムスリム同胞団という過激主義集団出身のムルシー大統領は、暴徒の行為に対し、はっきりと拒否の姿勢を示さず、むしろ同情的な言動をしました。このことに、オバマ政権は相当不快感を強めているらしいというのはもっともな話です。また、大統領は、イスラム教徒たる一般市民の心情を十分に代表しているとも言えないのではないでしょうか。
中国の愛国主義、デモと暴動の話に置き換えても理解できる話です。

尖閣へのプレス・ツアー

FBにアラビア語でコメントしたことで、当然ながら幾人かのアラブ・メディアの友人たちからの反応が直ちにあった。
中でも、この欄で時々話題にするパンオリエントニューズ(Panorientnews)のアズハリ代表と有意義な意見交換をすることができた。同氏によれば、国際メディアの報道が北京寄りになるのは自明のことであり、その理由は国際ニュースは主要英字メディアが独占しており、その翻訳に頼らざるを得ないこと、そして、各社の北京発のニュースが、共産党独裁政権下で配信を許されたニュースであるため、中国政府の立場を反映したものとなってしまうことであるという。確かにその通りだと私も思う。そこでせめて東京からアラブの主要メディアにニュースを配信している貴殿は中立的に、日本の立場を正しく伝えてほしいと頼んだら、こんな記事を書いたと見せてくれた最新記事には「係争地」という言葉がしっかり入っていた(笑)。
Pan Orient News の記事(アラビア語)
それはないだろうと意義を唱えたところ、彼自身が「中立」であり、「日本政府のラッパ」でないことを示すためにも、それは絶対に取り去ることのできない表現だという。冗談のようだが、日本の新聞が「イスラエル」と書かず、「占領されたパレスチナ」と彼の国を呼ぶようになるなら、喜んで「係争地」呼ばわりはやめてもいい、とまで。これは、裏返せば、日本政府が国内向けに勝手に主張してきた、「領土問題は存在しない」という立場は、国際的にまったく信用されてもいなければ、認識すらされていない、ということを意味している。それが係争地だ、という認識は、「イスラエル」のように根付いているというのだから!
アズハリ氏からは、「一度尖閣への東京駐在記者のツアーを求めたが政府に拒否された。(日本の領土だというなら、一般国民も含め)記者の渡島を制限するようなことはすべきでなかろう。」という指摘もあった。政府は、これまで問題の棚上げ方針、という役人にとっては一番都合のよい方法で問題を先送りしてきたが、この件についての立場をきちんと表明するということと、問題をプレイアップすることとは全く別物である、ということにもっと早く気付くべきではなかったか(おそらく、気づいていながら放置していたのだが)。
おびただしい漁船がうんかのごとく押し寄せようかという今、日本の実効支配の実情と中国側の言いがかりの根拠のないことは、しっかりと国際社会に訴えなければならない。その方策として、外国プレスツアーを実施することは、極めて効果的だと膝を打った次第である。検討に値すると思う。

海外広報という仕事

以前、この欄でご紹介したように、尖閣の問題については国際報道がこの諸島を「係争地」としており、係争地を国有化するとはけしからん、という中国のナンセンスな主張が国際的にまかり通るという奇妙な事態になっています。私共は、仕事上、アルジャジーラのアラビア語チャネルを注視していますが、ここでも15日、要旨次のような報道がありました。
―日中間で係争中の尖閣諸島を日本政府が国有化したことを受けて、中国の北京など10都市で大規模な抗議デモが行われた。…
北京特派員の報告要旨:在北京日本大使館前で数千人規模の抗議デモ。中国政府は、「中国人民が虐げられる時代は終わった」と過激な声明を出し諸島に対する正当な領有権があることを確認した。中国外務省報道官:「日本政府の措置によって、諸島に対する中国の歴史的な領有権が失われることはない。主権を侵害する如何なる行為も許さない。今後の状況を見守り必要な措置を講じる」。尖閣諸島は小さな無人の岩島であるが、周辺海域に石油や天然ガスなどの資源が埋蔵されている可能性が確認されている。中国側は「諸島は6世紀も前から中国人が発見し利用してきた」、日本側は「200年前に清王朝が領有権を放棄した」と主張している。
百歩譲って、それが係争地であるなら、両当事者のコメントを出すのが報道に求められる姿勢と思いますが、北京のアルジャジーラ支局が当局の厚い保護を受けているのに対して、東京には支局が存在しない、といった事情も影響していると言えるでしょう。これはいけません。ペンの戦争は、真の戦争以上に負けると大変なことになるのです。
偶々連休で、急ぎの仕事が入ることもなかったので、下記のようなコメントをアラビア語でFBに掲載してみました。こういうことをしなければならない義務は、そのことに気づき、表現できる力があるなら、単なる一市民であっても、この私にもあるだろうと思ったからです。ただ、それは、国のトップである総理や、外交の責任者である外務大臣に、より重い責任として求められることです。官僚組織の下のレベルや、有識者の論文のレベルでやっても、あまり意味がないのです。普通の国は、どこもきちんとやっていることが、どうして我が国にはできないのでしょうか。これはすぐにでも変えることのできる我が国政府の許されざる不作為だと思うと、少し憤りも篭ります。
◆小生がFBで友人に知らせた意見(アラビア語)の和訳
1.アルジャジーラ・ネットの以下の報道にコメントしたい。
「アルジャジーラの特派員によれば、北京の日本大使館に数千人の抗議する中国人たちが侵入を試みた。またこの日の朝、中国各都市の日本の公館前では同様のデモが行われた。日本政府が東シナ海で両国間で係争中の島を国有化したことへの抗議である。」
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この島々は係争中ではなく、第二次世界大戦後の一時期(1945-72)、米国に占領された時期を除いて歴史上ずっと日本の領土であった。中国も台湾もこの島々が日本に返還されたとき異議を唱えなかったが、その後何年も経って、石油・ガス田の存在の可能性が言われると領土主張を始めた。戦前は、後に台湾政府となる中国政府も、また「人民政府」も日本のこの諸島の領有権を認めていた。そのことを証明する公文書が存在している。中国人はこの諸島に手をつけた歴史がない。なぜなら、日本の施政権が常に及んでいたからである(実効支配)。したがって、この文脈で「係争中」の言葉を使用することは誤りである。
一方、日本政府が「国有化」した、という点についてはこの諸島の国際法上地位に特別の意味のあることではないのであり、中国政府の反応は適切でない。この背景は次のようなものである。日本国民であるこの諸島の所有者は、個人的な資金の問題のため島を売りたいと考えていたが、日本の官僚機構はこの所有者に支援の手を差し伸べなかった。そこで東京都知事が購入の申し出をした。東京都には太平洋上に多くの離島があり、その行政経験があるので、この諸島も都の行政区域に入れるという計画であった。すると、中央政府の官僚が動いた。国ではなく、地方自治体によってこの諸島が買われることになると自分達が恥をかくことになるので、これを嫌がったのである。中央政府は、十分なカネを出し、売買契約が成立した。
2.アルジャジーラ・ネットは、ロイターを引用して次のように伝えている。「数百人の中国人は日本大使館に向け様々なものを投げつけた。一方、警官隊はこの阻止に懸命であった。」
デモは平和的なものではなかった。それどころか、ずっと危険なものであり続けている。日本の商店や工場、施設が攻撃され、火を放たれた。中国北部、青島のジャスコでは略奪があり、すべての商品3000万ドル相当が消えたのはその一例だ。
中国の立場に偏ったアルジャジーラ・ネットの記事は次のように言う:「日本の海上保安庁によると昨日、中国のパトロール船6隻が両国間で係争中の諸島近くの日本の領海に入った。これはアジアで最大の2つの経済大国間に長年横たわる紛争の新たな局面だ。」しかし、両国の間にはそもそも領土紛争は存在しない。存在しているのは、貪欲で、違法な領土要求が、アジアの隣人に覇権を押し付けようと画策する国によって突きつけられていることだけである。
3.日本はなぜ暴力で国境を侵した中国人活動家を罰せず、中国のパトロール船に弾の一発も発射しないのだろうか?
日本は平和的な国家であり、その国民は暴力を好まず、たとえ相手が犯罪者であってもそれを傷つけることを好まない。多くの漁民、一般市民が北方領土を違法に占拠しているロシアによって殺されたり、連行されたが、日本は、その隣人との関係において、この国のように振る舞うつもりがない。国民の大体半分はこのように考えているが、もう半分は、日本の弱腰の姿勢は問題を更に複雑化させ、熱い戦争を招くことになりかねないとみている。腐った官僚主義に支配された日本政府は、断固とした措置を取ることも、確固たる立場を表明することもできない。このことが、東京都知事のイニシアティブのような愛国的な運動が起きる背景であり、これには国民の幅広い支持がある。