No.22 / 2002.07.09

***** global middle east ************* issue No.0022 **********
グ ロ - バ ル  ミ ド ル イ ー ス ト
*** From Erico Inc. Editor/Ken-ichi Matsuoka **** 09/07/2002***

こんにちは。日増しに暑くなる今日この頃、いかがお過ごしですか。

【コンテンツ】
1.所謂「テロリズム」を肯定するものでないが
2.チュニジア代表?チーム応援記
3.【お知らせ】APS(アラブ・プレス・サービス)とは

==========================================================
1.所謂「テロリズム」を肯定するものでないが by 新谷 恵司==========================================================

先の本欄で、9月11日に米国がイラクへの攻撃を開始するかもしれないという観測があるとご紹介したが、更に9月11日にアル・カイーダがテロを起すかもしれないという情報も報道されている。先日4日の独立記念日にもテロ発生の危険がある、というので米国では厳戒体制が敷かれた。9月11日といい、7月4日といい、米国の人達にとっては特別な日かもしれないが、「テロリスト」達にとってはさして特別な意味はないし、警戒体制が強化されるのであれば、むしろテロは起こりにくい日と考えてよいだろう。

ところが7月4日、実際にロスアンジェルス空港でエルアル航空のカウンターが銃撃されたから、大変な騒ぎとなった。報道によれば、現場で射殺された容疑者は、エジプト人で、個人的な怨恨による犯罪につき、「テロとは無関係」という。そんな短時間に犯行の背景・全容がわかるものでもないだろうに、かなり気の早い報道だな、と思った。警備当局は、米国社会の不安感の広がりを心配したのかもしれない。面白かったのは、同じ日の共同電が、イスラエルの運輸大臣が「エルアル航空のカウンターがアラブ人に攻撃されれば、それはテロだ」と述べたと報じたことであった。

日本のマスメディアで、テロ(リズム)の定義をきちんと定めて使用している例はなく、それは政府においても同じであることは、いつかの小泉総理の国会答弁でも明白であった。だから、今更日本の新聞が同じ紙面でこの異なる二つの見解を報道して、ところでテロとは何か、という疑問に全く答えていなかったとしても、何ら不思議ではない。(*)

賢明な読者はお解りのように、米警備当局がここで言う「テロ」とは、アル・カーイダのような組織的背景のある国際テロリズムの意味であり、個人の犯罪である以上、相手がイスラエルの権益であっても、被害者が無実の一般市民であっても、それは一般犯罪だ、と言いたいらしい。他方、イスラエルにとっては、アラブ人は何も西岸・ガザ地区のみならず、世界中どこへ行ってもアラブ人であって、例え米国に永住している人間であっても、アラブの血が流れている者はれっきとしたアラブ人である。アラブ人がどんな理由にせよ、イスラエルの権益に対して、またユダヤ人に対して攻撃を行った場合は、全てテロである、というのは、イスラエルの一般的常識を代弁しているように思う。

イスラエルの人々が、またユダヤの人達が、このように常にテロリズムの危険を背負って生きなければならなくなった原因はひとつだけである。それは、イスラエルという国家が、欧米の植民地主義を引き継ぎ、違法かつ非人道的な手段によってパレスチナを占領し、原住民を抑圧し続けていることにある。 占領地の情勢を見ると、和平への道のりは遠く、従って、イスラエルに対する「テロ」の動機は、増しこそすれ、減ずることはない。またブッシュ大統領の演説はヘブライ語で起草されていると噂されるほど、米国の中東政策はイスラエルの政策に盲従しているし、数多くの無実の市民の命を奪ったアフガニスタンで、今も結婚式に爆弾を落して百名以上を死傷させても平気な顔でプレス発表してはばからない米国政府に対する国際テロリズムの怒りは充満し、作戦実行上の正当な動機付けが累積していると言ってよい。

今後も、米国とイスラエルを巡るテロリズムの脅威は軽減されることなく、米国の対テロ戦争は早晩曲がり角を迎えるほかはないと思われる。(了)

(*)「テロリズム」を定義することは困難ですが、幅広い概念を分類している好著をご紹介します。

加藤 朗 著 テロ-現代暴力論 中公新書1639

**********************************************************
■保険のことなら何でもご相談ください。ファイナンシャル・プランナー保険代理店 オフィス中村 http://www.dairitenhp.com/officenk/
==========================================================
2.チュニジア代表?チーム応援記    by 松岡 健一==========================================================
チュニジア代表と言ってもFIFAワールドカップの話ではありません。去る6月27~28日、日本在住32ヶ国の人たちを対象にしたフットサル(ミニサッカー)イベントを川崎市とどろきアリーナで観戦してきました。

チュニジアチームは大学留学生からお腹の豊かな世代のほか、モロッコ出身の人たちも助っ人で参加していました。言うなればマグレブ(北アフリカ)連合チーム?

興味深かったのは、試合中の彼等の言葉。チュニジアとモロッコは共にアラビア語圏ながら、応援や掛け声、合図、悪態、野次などなどアラビア語、フランス語、英語を織り交ぜて口々に叫んでいました。

FIFAワールドカップと同じ予選リーグ組み合せで、チュニジアはベルギーとロシアに快勝、日本に負けてH組2位で決勝トーナメントに進出しました。しかし、初戦ブラジル戦を5-0で敗退。結局、このフットサル大会もブラジルチームが優勝して幕を閉じました。

==========================================================
3.【お知らせ】APS(アラブ・プレス・サービス)とは==========================================================
Arab Press Service (APS)について、時折ご照会を頂くので、簡単にご説明致します。

APS は、ニコシアに本部を置くエネルギー問題と中東カントリーリスクに関するシンクタンクで、この分野に深い識見を有する PierreShammas ピエール・シャマス(61、キリスト教レバノン人)が代表を務めています。

APS には、毎週末に発行になる英文ニュースレターがあり、主要なエネルギー関連企業、政府機関、研究所などで多数ご購読頂いております。ニュースレターはEメールによる配信と航空便によるものの2種類がありますが、内容は同じで、配達にかかる時間(一週間程度)だけEメールによる配信の方が役に立ちます(同一料金)。Diplomat と呼ばれる主に政治情勢主体の情報のパッケージと、 Review と呼ばれる主にエネルギー関連の情報パッケージがあり、その両方を購読する場合は割引になります(購読料等詳しいことはお尋ね下さい)。

APSでは、年に1~2回、エネルギー戦略会議を現地(昨年はテヘラン)で開催し、多くの要人による貴重な近未来展望の機会を提供すると同時に、世界のエネルギー関係者に集いの場を提供しています。

ピエール・シャマスは過去約30年間に渡って毎年5月に講演活動のため来日しており、その識見はわが国のエネルギー産業の発展に深く貢献しています。エリコ通信社では、過去約10年間、同氏のエネルギー関連コラムを翻訳し、主要産業紙を通じて日本の読者にお届しております。

下記ウェブサイトにてAPS社概要及びピエール・シャマス略歴(日本語)とAPS社ウェブサイト(英語)へのリンクを設けております。

URL: http://homepage1.nifty.com/erico/sub1.html

==========================================================
<編集後記>所謂「テロリズム」については、議論してもし尽くせませんが、中東のきな臭い風を嗅ぐにつけ、一度は話題にしておく必要があるように思いました。ある当事者がある行為を「テロ(リズム)」と非難するとき、それはその行為が絶対的な悪であって、だれもその行為を是認してはならないのだ、というメッセージが込められています。その辺に、テロという言葉が安易に使われ、しかし決して定義できない、という理由があるように思います。多くの場合、テロリズムを非難する当事者がもっと大きなテロリズムを実行しているものです。(Jaber)

ご意見・ご要望をお気軽にお寄せ下さい。

タイトルとURLをコピーしました