アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
14日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ 湾岸でイスラエル船が攻撃される。イランは「60%のウラン濃縮開始」を発表し、米はこれを注視。ロウハニ大統領、カタール首長に「域内でのイスラエルの軍事プレゼンスは、問題解決にならない」と述べる
■イスラエル・イラン間の応酬がエスカレート。公然、水面下の「戦争」をめぐり、いくつもの問いが浮上
■アフガニスタン和平プロセスの行方、見通せず。米大統領は9月11日までに駐留部隊を撤収する方針。タリバンは「米軍の完全撤退まで、一切の会議に参加しない」と強調
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―中国は、放射性物質を含む約100万トンの処理済みの水を太平洋に放出するとの日本の決定を批判し、「当事諸国やIAEAとの合意成立までは水の排出を控える」よう呼びかけた。福島で原子炉解体を担う企業は、貯水タンクが近く満杯になるため放出を決めたと発表。地元の漁業者や近隣諸国を懸念させている。
北京特派員の報告要旨:中国外交部の報道官は、日本の処理水放出の決定を「無責任だ」と批判。「核の廃棄物質への対応は、近隣国の重要な利益に関わる」として「適正な対応」を求めた。また「日本の意図に疑念を有している。日本の決定には、日本国内でも強い反対がある。中国はこの問題を黙認しない」と語った。
東京特派員の報告要旨:菅総理は、処理済みの汚染水の太平洋への放出にゴーサインを出した。この水は、2011年の地震と津波以来、蓄積されてきたもので、現在約125万トン。放出は2年以内に実施する。日本は「プロセスは安全に行われる。放出する水の放射性物質の濃度は、WHOが認める(飲料水)基準の7分の1だ」としている。だが日本は、この安全をめぐり、中韓などの近隣国を納得させられていない。また、日本の海産物の評判に影響するとして、地元漁業者からも反対されている。
○ イラン・イラク・シリア情勢
―イスラエルの船舶が13日、UAE沖で攻撃された。船の損傷は軽微で、負傷者はいない模様。イスラエルのメディアは、イランによる攻撃だとのイスラエル高官の見方を伝えた。一方、NYタイムズ紙によると、イスラエル高官は「域内の緊迫を緩和するため、イラン船に対する攻撃で応じるつもりはない」と述べた。イスラエル政府はコメントしていない。米中央軍は、イスラエル船への攻撃を報道で把握しているとし、「状況を注視している」としている。
―レバノンのメディアによれば、攻撃された船は、イスラエル企業「pcc」所有の「Hyperion」が、オマーン湾のフジャイラに近い海域で攻撃された。イスラエルの公共放送KANは、「攻撃は、イランの部隊が船上から発射したミサイルまたは無人機によるもので、13日朝に発生した」と報道。一方、イディオト・アハロノト紙によると、船の所有者はラミ・ウンガー氏で、攻撃発生時、船はフジャイラ港外を航行していた由。
―アルジャジーラの取材では、今回攻撃された船を所有する実業家は、約1か月半前にペルシャ湾で攻撃された船の所有者と同一人物。イスラエルの貨物船への攻撃は、この1か月半で3度目。
―イラン核合意をめぐるウィーンでの交渉再開を翌日に控えた13日、イランの交渉責任者アラグチ外務次官はウィーンに到着直後、「60%の濃縮度のウラン製造を開始する」と述べた。また「先日の攻撃で破壊されたナタンズの施設内の遠心分離器を取り換えるだけではなく、施設内に千台に追加設置する」とも語った。イランがこの水準のウラン濃縮を宣言するのは初めて。米はこのイランの決定を「挑発的」と批判。仏は「危険な展開」と評した。
―ロウハニ・イラン大統領は、タミーム・カタール首長との電話で、「地域のイスラエルの軍事的プレゼンスを認めることは、問題の解決にならない」「域内の危機の解決は、域内諸国の建設的な対話を通じてなされる」と述べた。また「米の核合意復帰の唯一の道は、全ての制裁を解除することだ」とした。
―イラクの「抵抗運動」武装勢力に近いメディアは、武装集団がクルド地方アルビル市にある「モサドの監視・作戦拠点2か所」を攻撃したと報じた。「拠点の複数を死亡させた」としている。ただ、同市内で治安緊急出動などの様子は確認されていない。クルド地方政府、イスラエル政府とも、現時点でコメントしていない。
テヘラン特派員の報告要旨:「ウラン濃縮60%」は、ナタンズの核施設に対する攻撃への、イランの「報復」の一環とみられる。イラン政府報道官は、「報復はより幅広いものになるだろう。ナタンズの施設を攻撃した国の領土にも及ぶ可能性がある」と述べている。またザリーフ外相は、露外相との会談で「イランの報復は断固としたものになる」と語った。核合意をめぐるウィーン交渉での、イランの態度硬化も予想される。
テルアビブ特派員:イスラエル国内では、イランの核施設や船舶に対する攻撃について、その実行を政府筋が国内メディアに認めたことをめぐり、ネタニヤフ首相への批判が出ている。それは、「『非常事態内閣』をつくることで組閣の危機を脱し、同時に自身の汚職疑惑からも逃れようと、イランとの戦争を煽っている」というものだ。こうした中で、ガンツ国防相は「イスラエルとして対イラン攻撃を認めれば、イランの報復を促し、安全を損なう」として、メディアの報道官制違反の調査を指示した。
テヘラン大学のハーミド・モサビ教授(政治学)の話:イスラエルは、ロウハニ政権末期のイランが報復に出ないとみて、読みを誤ったのではないか。トランプ米政権期から何年にもわたるイスラエルの挑発に、イランは自制してきたが、ここで報復しなければ、更なるイスラエルの攻撃を生むとの考えがある。イランとしては今回、何らかの報復をする以外に選択肢はなかった。その対応の第一段階が「ウラン濃縮60%」だ。イスラエルは、イランが米と真剣な交渉に入る度に、攻撃を行って事態を混乱させようとしてきたが、今回もその例に漏れない。ナタンズの核施設への攻撃は、米国防長官のイスラエル訪問時に起きたことから、イラン側では米に対する憤りがあり、攻撃が米との調整の上で行われたと疑う者もいる。イランが期待する、欧米によるイスラエル批判がなされなければ、米・イランの交渉に影響するだろう。船舶に対する小規模な攻撃の応酬は今後も続く可能性がある。ただ、イランは交渉中であり、沈静化に利益がある。深刻なナタンズの攻撃に対する深刻な報復は、直ちには行われないのではないか。
レバノンの軍事専門家エリヤース・ハンナ氏(退役准将)の話:イスラエルとイランによる船舶に対する攻撃の応酬は、ペルシャ湾、オマーン湾、紅海のバーブルマンデブ海峡周辺という、いずれも戦略上の重要海域で起きている。イラン、イスラエルの海軍はともに、全面戦を行う能力がない中、海上での影響圏を主張すべく特殊作戦を行っている状態だ。船舶への攻撃の応酬が高じれば、域内諸国の対イスラエル関係正常化と、その程度に影響が及ぶ可能性がある。この「正常化」には政治や治安などの様々なレベルがあるが、イラン大統領がカタール首長との電話で「イスラエルの潜水艦を地域の海域に入れないこと」を問題としたのは、「イスラエルと関係正常化する者は(航路不安定化等の)間接的な負の影響を被る」との論理を、間接的に語ったものだ。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―特になし
○ エジプト情勢
―ラビーア・スエズ運河庁長官は、先月運河で座礁した大型コンテナ船「エバー・ギブン」について「イスマイリヤの経済裁判所の決定に基づき、グレートビター湖で差し押さえる」と述べた。座礁事故と運河の一時閉鎖による損害賠償問題が議論になる中での発言。ラビーア長官は、運河側に座礁事故の責任はないと主張し、船の所有企業が賠償金支払いを引き延ばしている非難した。日本の所有企業は、運河庁からの賠償請求があり、船の出港が認められていないことを確認した。運河庁の事故原因調査結果は、今週末に公表される見通し。
―ハムドゥーク・スーダン首相は、エチオピアとエジプトの首相に対して、「10日内に首脳会議を開き、行き詰まっているルネッサンス・ダムの交渉についての評価を行い、交渉進展に向けてとり得る選択肢を話し合う」ことを呼びかけた。
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―米メディアによると、バイデン政権は「9.11事件」から20年にあたる今年9月11日までに、アフガニスタン駐留部隊を完全撤退させる方針。これに対してタリバン広報担当者は「全ての米兵が撤退するまで、和平についてのいかなる会議にも参加しない」と述べた。今月末に、トルコでアフガン和平会議が予定されている。
―米政府高官は、「全ての米軍部隊を、無条件でアフガニスタンから撤収させることになる」「米軍が撤退する際にタリバンからの攻撃があれば、強力に反撃する」と述べた。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―NYタイムズ紙は米情報筋の話として、「ナタンズの核施設で起きた爆発は、電源施設に仕掛けられた爆発物を遠隔で起爆したもの」と報じた。メインと予備の電源設備に甚大な破壊をもたらした由。(RTアラビア語)
―12日、アンカラで署名されたトルコ・リビア二国間の協定は、「リビアにおける発電所建設に関する議定書」「リビアにおける3つの発電所建設に関する覚書」「トリポリ国際空港新旅客ターミナル建設に関する覚書」であるとアナドール通信が伝えている。(アッシャルク・アルアウサト紙)
中東の新型コロナ動向
―国別感染状況(オマーン)
累計新規感染者数:174,364人(33,486人)、累積死者数:1,798人(345人)(カッコ内は人口百万人あたり)
13日の新規感染者数は1,335人、死者9人でクウェートと同じように年初以来、継続的に感染拡大が続いている。
4月5日、オマーンの保健当局は居住者を除く外国人の入国を8日より禁止すると発表した。また、国民と居住者に対し、真に必要な場合を除き、出国しないよう求めた。同国では3月28日より夜間外出禁止令が出されているが、ラマダン期間中も、時間を夜9時から朝4時までに短縮してこの措置を継続する。(RTアラビア語)
<特記事項・気付きの点>
―特になし