アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
18日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ IAEA、イランが濃縮度60%ウランの製造を開始したことを確認。ウィーン協議では、イランが「意見の相違はあるが克服可能」とし、EU代表は「困難な任務で進展があった」と見る
■ イエメンのマアリブとタイズで政府軍とホウシー派が激戦を展開。同派は「サウジのキング・ハーリド空軍基地内の軍事拠点を攻撃」と発表
■ 露とウクライナ、互いに外交官を国外追放。ドンバスではウクライナ軍と分離派の間で戦闘
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―日本は、新型コロナウイルスの大流行への対策で世界の多くの国々と異なる手段を取った。日本社会の文化的価値観が、国民が自発的に予防措置に従うことに寄与した。日本の保健省(ママ)によれば、このことが日本での感染者数の低減に反映した。(日本国内の映像や市民・専門家のインタビューをまじえた東京特派員レポートと共に報道)
レポート要旨:日本が新型コロナウイルス大流行への対応で取った戦略は報われたようだ。日本の当局は、厳格な治安措置や都市封鎖、外出禁止といった措置は取らず、個人への罰金も科していない。国民に義務ではなく自発的に、閉鎖され混雑した場所を避け、閉ざされた空間での密接したコミュニケーションを行わないよう求めた。緊急事態も、リモート業務や企業への強制的でない一時休業要請に留まった。にもかかわらず国民は、新たな感染拡大の波が来る中で、他の国々のように対策を強化するよう求めている。
保健省の統計によると、総人口1億2,600万人超の日本で、感染者数は50万人超、死者数は約9千人だけだ。感染率や死亡率を低減させるに至った日本人の自発的な社会的規則順守の秘密は何なのか。
社会問題の専門家:「海外ではマスクを着用しない人々や閉鎖措置に従わない人々を罰する法律があるが、日本では、自発的な順守と他者への思いやり、社会的ルールの順守が日本の文化の一部とみなされている。」
日本ではこれまでのところ、自発的順守の成功が証明されているが、変異株の拡大による感染者の増加によって、この自発的順守のみに頼った感染抑制手段の有効性の見直しが促されるかもしれない。
日本は今後3年間に感染拡大の波が繰り返されると予測している。しかし政府は、憲法の規定により、人の移動を制限する拘束力のある措置(に関する法律)を制定することができない。そのため、現在および将来的な緊急事態における自発的順守の政策を立法化した。
―上記に関し、在ボストンの日本人医師フナト・マサフミ氏との掛けあい。
Q:他の国々では国民が拘束力のある措置でさえ守らないのに、日本人はなぜ自発的に順守するのか。
A:これは日本のユニークな点だが、我々には「他者を尊重し思いやる」という文化がある。つまり日本人は国民の規範や政府が求める規則を尊重・順守するということだ。こうした社会規範の中には「他人に迷惑をかけない」というものがあり、我々はこれを子供のころから教えられている。これが感染症対策で有効に機能している。例えば社会的距離を取るように求められれば、人々は疑うことなく強制されなくても自発的にこれを守る。
Q:世界では人々のコロナ対策疲れが見られるが、日本でもあるのか。
A:日本でも他の国々と全く同様に人々が疲れを感じている。季節は春で、人々はもっと外出をしたがっている。(コロナ対策で)疲れを感じる状況は懸念すべきものだ。
○ イラン・イラク・シリア情勢
―ウィーンで続くイラン核合意の救済に向けた中・仏・英・独・露とイランとの協議に参加しているモーラEU代表(同協議の議長)は、「簡単ではない(交渉の)任務において進展があった」と明らかにした。
―アラグチ・イラン外務次官(交渉責任者)は、「核合意をめぐるウィーン協議で、新たな共通理解が形成され始めた」とし、「最終的な目標に関する見解に一致が見られ、道筋がより明確になった」「制裁の解除と核(開発に関する)措置を含む新たな(合意の)共同草案の作成を開始できる段階に至った」「イランは自国の見解を文書にして提出した」と述べた。ただし、「まだいくつかの深刻な意見の相違があり、次の協議で解消する必要がある」と指摘した。
ウィーン特派員:ウィーンでの核合意をめぐる今回の集中協議の後、当事諸国の間に新たに楽観的なムードが漂い始めた。今回の協議は以前から計画されていたものではないが、成果があったことが関係者らの楽観的な発言から分かる。外交筋によると、次の段階では交渉の任務は作業部会に任せられ、詳細な課題を検討することになる。詳細検討には困難が伴うため、露の代表は「これらの作業部会は今後数日間、成果が早く得られるように、止まることなく作業を続ける」としている。今後の会合で議論されることになる詳細課題は、米が解除すべき制裁とイランが行うべき措置に関するものだ。当事諸国が行き詰まりを回避することに成功したのは明らかだが、合意に至るまでの道のりはまだ長い。
―IAEAは、「イラン高官が先に発表した通り、同国がナタンズの核施設で濃縮度60%のウランの製造を開始したことを確認した」と発表し、「検証のためにそのサンプルを入手した」「濃縮作業は、IR-4型とIR-6型の遠心分離機を用いて行われた」と明らかにした。
―イラン国営TVは、「情報省が、ナタンズの核施設攻撃の容疑者を特定した。この容疑者は、レザー・カリーミーという名の同施設の作業員の1人(43歳)で、攻撃の数日前に国外に出ていた」「治安当局は、同容疑者の追跡・逮捕に向けて必要な措置を講じた」と伝えた。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―イエメンの軍事関係筋によると、ホウシー派がマアリブ県西部サルワーフ郡マシュジャハにある政府軍の拠点複数に対し大規模な攻撃を仕掛け、両者間で激しい戦闘となった。戦闘では戦車や大砲など様々な武器が使用された。政府軍は同派のこの攻撃を阻止した上、反撃して同派に制圧されていた多くの拠点を奪還した。
―イエメン政府軍は、タイズ県西部のテッラ・ムーシキーとズベイダ村の制圧に成功した。軍事関係筋によると、同軍は同県マクバナ郡でホウシー派の集結拠点に奇襲攻撃を仕掛けた後、前進した。この際の戦闘で、同派の35人が死傷した。一方、同派は「タイズで(政府軍の)大規模な進軍を食い止めたが、その際に多数のメンバーが死傷した」としている。
―サリーア・ホウシー派軍事広報担当は、ツイッターで「サウジ南部ハミース・ムシャイトのキング・ハーリド空軍基地を無人機で攻撃した。『デリケートな軍事拠点』を標的としたもので、正確に命中させた」と発表した。
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―4月17日は「パレスチナ人囚人の日」だが、イスラエル当局は今年、「新型コロナウイルス対策のため」として、囚人らへの面会訪問を禁じた。(イスラエルの刑務所に収監されている)パレスチナ人囚人の数は4,500人超で、その中には女性や子供、高齢者も含まれており、医療ネグレクトなどに晒され続けている。
―在イスラエルUAE大使館が「イスラエル独立記念日」を祝ったことを非難してパレスチナ人がSNS上で始めた「#彼らの独立は我々のナクバ(大災厄)」と題したハッシュタグ投稿がアラブ諸国の大半に拡大。活動家らは、この中で「イスラエルがパレスチナ人に対して侵害行為を続けているにもかかわらず同国との関係拡大を継続しているUAEをボイコットするよう」呼びかけた。また、イスラエル外務省がアラビア語のSNSページで公開したアラブ諸国の若者たちが「イスラエル独立記念日」を祝う発言をしている映像が、パレスチナのSNSプラットフォーム上で怒りを呼んでいる。
○ 国際テロ・過激主義情勢
―特になし
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―露外務省は、駐サンクトペテルブルク・ウクライナ総領事に国外退去を求めた。露連邦保安庁(FSB)が、「露法執行機関のデータベースに関する機密情報を入手した」との理由で同総領事の拘束を発表した後のこと。ウクライナはこの措置を「露による新たな挑発だ」と非難し、露の大物外交官(氏名やポストは明らかにしていない)の国内追放を決定。
―新型コロナウイルス感染症による世界の死者数が3百万人を超えた。前世紀から今世紀のウイルス感染症による死者数としては、スペイン風邪とエイズに次ぐ3番目となっている。
エリコの目
―「ハアレツ紙」の安全保障問題解説者ヨシ・ミリマンは、ネタニヤフ首相は長年、米国がイスラエルの代わりにイラン核施設を攻撃することを夢見ているが、米国政府はその「ゲーム」を理解し、乗ってこない、と述べた。その上で「バイデン大統領は『イラン核合意』の問題を終わらせたいと思っている。イランも同じだろう。現在の対立を続けるより、矛盾がいっぱいあっても合意を成立させておく方がよいと考えているのでは」との見方を示した。(アルマヤディーン・ネット)
中東の新型コロナ動向
―国別感染状況(レバノン)
累計新規感染者数:499,839人(73,490人)、累積死者数:6,738人(991人)(カッコ内は人口百万人あたり)
ベイルート港の爆発、首相のなり手がいない政治、といったイメージ通りの破綻国家であるが、PCR検査数(百万人当たり)は約55万回で、日本(8.4万回)の6.5倍。累計新規感染者数の人口比(上記)は、英国以上、米国以下で欧州の流行国に並ぶ水準。年始のピークよりは下がったものの、新規感染者数、死者数ともに高い水準のまま。16日の新規感染者は2,008人、死者45人。
―チュニジアは、新型コロナのパンデミック初期における感染率は低かったが、現在では主要な「被害国」である。最近は、「英国型」変異株の流行が急速に進み、新規感染者数、死者数ともに拡大している。保健衛生当局は国民の感染防止意識向上を呼び掛け。(アルマヤディーン)
<特記事項・気付きの点>
―特になし