アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
21日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ チャド大統領死去。軍は議会・政府の解散、軍事評議会設置、国境閉鎖を発表。反政府勢力は「暴力によって権力を行使する組織への服従を一切拒否する」と表明
■ ウィーンでの核合意をめぐる協議、各代表団の本国との調整のため来週まで延期へ。イランは「非論理的な要求の方向に進めば協議を停止する」と警告。米は「一方的なイニシアチブも譲歩も提供しない」と表明
■米英ウクライナ、露の対ウクライナ国境付近での前例のない規模の軍事演習と兵力結集を警戒。露は「米とNATOが黒海の海上と上空での挑発的活動に関与」と非難
■欧州スーパーリーグをめぐる対立が過熱。政治家らがスポーツの領域に介入
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―EUは、「ウィーンでの核合意をめぐる協議は来週続ける」「協議の当事諸国は、代表団に本国との調整を行う余地を与えるため、会合を1週間延期した」と発表した。これら諸国は、協議で進展が見られたことへの安堵の念を表した。イラン外務省は、「米の制裁解除と核合意復帰に必要な実際的措置の見極めを担当する第3の技術委員会の設置で意見が一致した」と発表。同国代表団を率いるアラグチ外務次官は、「非論理的な要求の方向に進んで時間が浪費されるようなら、イランは協議を停止する」と警告し、「多くの問題が存在し、プロセスは簡単ではない」と指摘した。
―プライス米国務省報道官は、「マレー米イラン特使は、核合意への復帰に向けた限定的な措置を内容とする計画を検討している」「イランに一方的なイニシアチブや譲歩は提供しない」と述べた。
―ロウハニ・イラン大統領は、「ウィーンでの協議で70%の進展がみられた。米が誠実なままであれば、短期間で成果が出るだろう」「米が『最大の圧力をかける政策』に失敗したことが、ウィーンでの交渉でイランの立場を強くした」と述べ、「イランはウィーンでの協議を急いでおらず、自国の立場に拘るが、制裁解除のためにあらゆる機会を利用する」と強調した。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―バーレーン内務省は、アルジャジーラが「バーレーンの刑務所で、収監者とその家族らが収監状況に対する抗議を行い、緊張が高まっている」と報道したことに対して不快感を示す声明を出し、「完全に誤った情報に基づく報道で、全く根拠がない。バーレーンが人権分野等でのイニシアチブで達成した物事を意図的に侮辱するキャンペーンの一環だ」と主張。アルジャジーラの報道は、ロイター通信の記事に基づいたもので、ロイターはバーレーンの活動家らの話として、「バーレーンの治安部隊は、収監状況に抗議を行った人々を投打した」「同国のジャウ刑務所で先月新型コロナウイルスの感染が拡大して以来、緊張が高まっているが、当局は、感染は収束したとしている」と報じていた。アルジャジーラは、ニュースについてのあらゆる立場からの説明を歓迎するが、職業的基準を守る世界的な通信社が伝えるニュースを報じることは止めないと改めて明言する。また、バーレーンでの人権問題に関する新たな情報や意見を提供しようとする同国高官の出演を歓迎する。
―団体「バーレーンでの民主主義と人権のための米人ら」と「権利と民主主義のためのバーレーン研究所」は、「バーレーンのジャウ刑務所で、多くの政治犯が未だ独房に収監されており、今月17日に機動隊の攻撃を受けた後、家族と連絡が取れない状態だ」と発表した。機動隊は第13号棟に入って、刑務所内での状況に抗議したことを理由に、少なくとも35人の収監者を攻撃したという。目撃証言によると、攻撃を率いたのは大物将校らで、その様子は監視カメラに収められた。事件に関し、バーレーン内務省は「機動隊に対する騒乱・暴力に関与した収監者らに対し、治安・法的な措置を取った」と声明していた。
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―ウォール・ストリート・ジャーナルによると、IS(「イスラム国」)はリビアからナイジェリア北部、サヘル地域へと勢力を拡大し始めた。モザンビーク北東で戦闘が発生し、(3月下旬に)ISの戦闘員らが町を制圧した。このため、仏石油大手トタルは、160億ドル規模のガスプロジェクトに従事していた職員を退避させざるを得なくなった。ISのアフリカでの勢力拡大が懸念されている。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―チャドのデビ大統領(68)が死去。軍によると、北部で反政府勢力と戦っていた政府軍の部隊を視察していた際に負傷し、死に至った。これを受けて軍は議会と政府の解散を発表し、大統領の息子マハマト氏率いる移行軍事評議会を設置。また、夜間外出禁止令を発し、当面国境検問所を閉鎖するとした。大統領はチャドを約30年統治した後、6期目の勝利を発表していた。モーリタニアの首都ヌアクショットから中継で出演したアフリカ問題専門の評論家は、今回の軍の動きを「暗殺の気配のするクーデター。議会解散がその明白な証拠」と分析した。
―軍の声明の要旨:国の統治と安定確保、国家機関のテロ対策継続のため、移行軍事評議会が設置された/20日以降、いくつかの措置が取られる/同評議会は国際的な条約や憲章を順守し、18か月の移行期間の保障に取り組む/14日間を国を挙げての服喪期間とする/議会と政府は解散される/評議会議長は後に発表する/夕方6時から朝5時までの外出を全国で禁ずる/次に通知するまで、陸空の全ての国境検問所を閉鎖する/公正で透明性のある選挙実施を担う暫定政府・国家機関を樹立する/国内、国外を問わず、全ての国民に包括的対話を呼びかける。
チャドの反政府勢力「変革のための合意戦線」(FACT、国内メディアの表記は「変革友愛戦線」)報道官のカリ・バシール氏(ロンドン):大統領の死後の展開は、独裁政治の延長上であり、権力の「相続」のための芝居だ。憲法上では、大統領の死後、権限は議会に移行することになっている。我々は腐敗した政権とは交渉しない。我々はイスラム教徒も非イスラム教徒も含む、全ての勢力を包括する公正な政治を求めている。
ランカスター大学付属センター研究員ナタニエル・パウエル氏(ロンドン):仏は、そして米もいくらかは、チャドの新たな指導者がマハマト氏であることに、ある程度安堵していると思われる。これは仏にとって、チャド政府がサヘル地域や仏の「バルカン作戦」、ジハード系集団との戦い継続への支持に関して、これまでの政策を踏襲することを意味するからだ。歴史的に見て、チャドでいかなる人物が権力の座に就いたとしても、最終的に仏に支援を求め、仏はその権力強化に大きな役割を果たしてきた。基本的に、仏は非民主的な独裁政権を支えているのだ。なぜなら、それによってチャドの安定が実現され、仏がサヘル地域の他の国々で自国の安全保障政策を実行できるからだ。
―(上記事件に対する)各方面の反応:米大統領報道官、「チャドでの暴力を非難し、憲法に基づく権限の平和的移行を支持する」と表明。仏やEUも同様の趣旨の発言を行う/ファキAU委員長、デビ大統領を「偉大な国家元首」として、哀悼の意を表す/カタール、「チャド国民の安全で尊厳のある生活への要望に応え、地域の安定を維持するものを支援する」と表明/シーシー・エジプト大統領とスーダン統治評議会、アフリカの課題のためのデビ大統領の努力を称賛。
エリコの目
―新華通信社によると、20日習近平主席はムハンマド・サウジ皇太子と電話会談し、中サの戦略的パートナーシップ関係を新たなレベルに押し上げたいとの中国の意向を表明した。新華社は、「ム」皇太子が中国を「信頼できる同胞国」と呼び、サウジアラビアとして、サウジビジョン2030と一帯一路の戦略的連携を強化する用意があると述べたと伝えた。(アッシャルク・アルアウサト紙)
―電話会談では「緑のサウジアラビア」「緑の中東」構想が話し合われ、サウジとして毎年地球環境問題を取り扱う国際首脳会議をホストしたいが、中国はそのメイン・パートナーになるだろう、と「ム」皇太子は述べた。(RTアラビア語)
中東の新型コロナ動向
―エジプト医師組合は保健省に対し、過去2週間で50人もの医師が死亡したとして、医療関係者のワクチン接種を緊急に進めるよう要請した。元保健省幹部のガウィシュ氏によると、保健省は医療関係者、高齢者の順にワクチン接種を進めるという方針だが、医療関係者の接種は20%程度に留まっている半面、政治家、スエズ運河関係者などが優先接種を受けている。ソハーグ県では、医療関係者のみならず全県的に感染が拡大しているとして地元医師会がロックダウンを求めたが、知事・政府は「事態はアンダーコントロール」であるとして応じていない。(地元ニュースを投稿したツイッター)
<特記事項・気付きの点>
―特になし