アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
18日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ アフガニスタン国内で軍事行動の激化が続く中、ドーハでアフガン政府とタリバンの協議の1日目が前向きな雰囲気の中で行われ、対立のある問題を協議する合同委員会の設置で合意
■ イスラエルのNSO社幹部、自社製スパイウェアのシステム閉鎖を決定したとNYタイムズ紙に明かす。同スパイウェアがアルジャジーラ記者らの携帯電話のハッキングに使用されたことが暴露されたことを受けての対応
■ イラン、収監者交換問題と核合意協議を切り離すよう求め、「政権移行が完了するまで同協議には戻らない」と表明。米国務省は、協議への用意を改めて示す
■ リビア首相、「軍の統一は困難な任務」と述べ、「政府は決められた期日に選挙を実施することを約束する」と強調
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―東京2020五輪組織委員会は、「五輪(選手)村で海外から来た選手(ママ)の1人が新型コロナウイルスに感染していることが明らかになった」と発表した。(画面下の字幕ニュース)
○ イラン・イラク・シリア情勢
―イラン核合意をめぐるウィーン協議でイランの交渉責任者を務めるアラグチ外務次官は、ツイッターで「イランは権限移行段階にある」として、「ウィーン協議は、イランの新政権が発足するまで待つべきだ」と述べた。また、「米と英は、人道的な収監者交換と核合意とを結びつけることを止めるべきだ。収監者10人の交換は、両国が必要な真剣さを示せば実施される可能性がある」と強調した。
―米国務省報道官は、アルジャジーラに対し「米はイラン核合意をめぐる協議を継続する用意がある。イラン側は、移行期間への対応のため更なる時間を求めて来た。ウィーン協議に戻る計画は、イランでの政権移行が完了し次第、開始することが可能だ」と述べた。
―ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ウィーン協議参加者らの話として「協議参加者らは、イランの備蓄ウランを露に送ることを規定する合意に至る寸前だった。しかしイランは、自国が所有する最新型の遠心分離機の破壊は認めないと主張した」「イランの交渉戦略をめぐり、欧米の外交官らの意見が分かれている。『イランは核合意の復活を望んでいるが、米からの譲歩を得るために協議を遅らせている』との見方がある一方、『イランは恒久的に残る核技術を得るために、協議を遅らせている』との見方もある」と伝えた。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―独通信社によると、ムハンマド・アブダビ皇太子が19日にサウジを公式訪問し、ムハンマド・サウジ皇太子と会談する予定。アブダビ皇太子には閣僚代表団が同行し、OPECプラス内での産油政策を筆頭とする様々な課題について協議する。また両皇太子は、サウジの輸入に関する最近の決定事項がUAE経済に及ぼす影響について協議する。同決定には、イスラエル産の原料の入った商品の排除、イスラエル人投資家が全面あるいは部分的に所有する企業やアラブの対イスラエル・ボイコット合意の対象企業が生産した商品の排除が含まれる。
―サウジ国営通信によると、サルマン国王は、エルドアン・トルコ大統領から電話を受けた。両首脳は、共通の利益に資するために両国間関係を再検討した。
○ エジプト情勢
―スーダンの専門家らは、「エチオピア高原から青ナイル川とスーダンのロセイレス・ダムに流入する水量が変動している原因は、同高原の降水量の変動とルネッサンス・ダムの貯水の第2段階実施にある」との見方を示した。エチオピアが第2段階で目指している貯水量は推定130億立方メートルとされ、これは昨年の第1段階の約3倍に相当する。
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガニスタン政府とタリバンの両代表団がドーハで新たな協議を開始した。政府側の代表団長を務めるアブドラ国家和解高等評議会議長は、「紛争の政治的解決に至るにふさわしい雰囲気になった」と述べた。タリバン交渉団長のバラダル政治事務所代表は、「平和的解決に至るための努力を倍増させる」と述べた。両代表団は、意見が対立する問題に関する合同委員会の設置で合意した。同委は14人(双方7人ずつ)のメンバーからなり、協議のスケジュールや議題について話し合う。
―アフガニスタン国内では、政府軍とタリバンの間の戦闘の激化が続いている。タリバンは、「この2か月間に194郡を制圧した。このうち5郡を政府軍に奪還された」と発表。一方、政府軍は、カンダハル州のパキスタン国境にあるスピン・ボルダックと戦略的な要衝であるテシュミン検問所の奪還に向けた作戦を3日連続で実施。国防省は、「過去24時間に多くの郡で実施した軍事作戦により、タリバンの戦闘員284人が死亡した」と発表。
アフガン問題に精通するタイシール・アッルーニー記者の話:ドーハ協議での「前向きな雰囲気」はまだ言葉の上だけのことで、何ら進展はない。国内の現状はこうした発言と矛盾している。タリバンは軍事的前進を続けており、政府も防御・攻撃を行い、軍事行動が続いている。アブドラ国家和解高等評議会議長は、この軍事的エスカレートについて双方を非難した。双方が(発言以上の)実際的行動に出るには、犠牲祭の祝日を待つ必要がある。犠牲祭の祝日には、双方が合意に至るものと予測される。期間は分からないが停戦の見返りに、政府が拘束しているタリバンのメンバーを釈放するというものだ。
○ マグレブ情勢
―ドベイバ・リビア首相は、ロイター通信のインタビューで「リビアからの部隊(戦闘員)撤退に関する露・トルコ間の合意については全く知らない」とした上で、「こうした措置は歓迎されるものであり、政府は撤退に関してあらゆる関係者と話している」と述べた。また、ハフタル元少将については、「ハフタル氏はタフな軍人だが、やり取りはしている。ただし、事は簡単ではない」とし、「軍の統一は非常に困難な任務となるだろう」との見方を示した。選挙については、「自分が大統領に立候補するかどうかはまだ決めていない」とし、「政府は決められた期日に選挙を実施するよう全力で取り組んでいるが、立法権限を有する者を含む一部の人々が権力に固執する可能性がある」と警告した。
―ドベイバ・リビア首相は、(NYから帰国して)トリポリに到着した際に「リビアに関する国連安保理の会合で、国家機関の統一を妨害する者たちや戦争を煽る者たちに対して制裁を科すよう呼びかけた」と明らかにし、「リビア国内には、いかなる外国軍も傭兵も残らない」「リビアで再び戦争を引き起こすことを拒否する」と改めて強調した。また「政府は今年末の決められた期日に選挙を実施することを支持する」と述べた。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―NYタイムズ紙によると、イスラエル企業NSO社は今月、自社で開発したスパイウェア「ペガサス」のシステム閉鎖と販売停止を決定した。このスパイウェアは、アルジャジーラの複数の記者の携帯電話へのハッキングに使用されていた。アルジャジーラは昨年12月に放送した調査番組「The Hidden is More Immense」で、このスパイウェアによるハッキング行為について詳細に伝え、大きな反響を呼んでいた。
―メッカ巡礼者らは、巡礼の儀式開始に備えて(カアバ神殿の周りを回る)「到着の回礼」を行った。今年の巡礼者はサウジ国民とサウジ居住者に限られ、約6万人となっている。
エリコの目
―「OPECプラス」は本日18日に会合し、原油価格上昇を抑えるための増産を協議する。同会合はサウジアラビアとUAEのあからさまな対立のために中断していたが、両国が中間案で妥協したと伝えられていた。情報源によれば、UAEは22年4月より日量365万バレルに増産することが認められる。(アラビー21)
中東の新型コロナ動向
―チュニジアでは、全国的にデルタ型変異株を主流とする新型コロナ感染が前例のない規模で進展している。16日には、1日の死者数が初めて205人を記録、200人の大台を超えた。新規感染者数、現在感染者数も過去最高を更新中。人口百万人当たり累積死者数は1,441人に上昇した。
(参考:この国際比較:ペルー 5,828 ブラジル 2,528 米国 1,876 イスラエル 691 インドネシア 262 UAE 189 日本 119 /人)
<特記事項・気付きの点>
―特になし