アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
16日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ 国連安保理がルネッサンス・ダム問題に関する声明を発表。エチオピアは「同声明に基づくいかなる要請も承認しない」と確認、エジプトは「声明はAUの取り組みを促す」と述べ、スーダンは新たな交渉方法を望む
■ イエメンの複数の県で生活状況の悪化に対する抗議デモが再開、ハドラマウトとアデン両県で治安部隊の発砲により2人死亡、複数負傷。南部移行評議会議長は「緊急事態」を宣言
■ アフガニスタン暫定政府の内相代行、国連代表団に暫定政府の承認と全ての制裁の解除を求め、「タリバンはドーハ合意を順守して履行する」「各国との相互尊重の関係を望んでいる」と発表
■ 米、「イランとの外交的な歩みこそが最良の選択肢だ」と述べ、イランは制裁解除をウィーンでの核交渉に戻るための条件とする。イスラエルは「条件付きであれば、イラン核合意への復帰を理解する用意がある」と発表
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―サキ米大統領報道官は、「バイデン大統領は今も、イランとの外交的な歩みこそが最良の選択肢であると考えている」と述べた。こうした中、EUはイランが濃縮度60%の高濃縮ウランの製造等の核合意に反する開発計画を加速させていることに懸念を示し、イランに対し「このような行動を改め、国際原子力機関(IAEA)に完全な透明性を持って協力するよう」呼びかけた。
―ウリヤノフ在ウィーン国際機関露常駐代表は、IAEAに対して「イラン新政権との対話を継続するよう」呼びかけたほか、「露は各当事者に対し、核合意に早急に復帰するよう改めて呼びかける」と述べた。
―ガリババディ・イランIAEA大使はアルジャジーラのインタビューで、「核合意の順守をイランに求める前に、米はまず制裁を解除すべきだ」「米が書面上だけではなく、制裁の解除を実行に移せば、イランは核合意の履行に戻る用意がある」と述べた。また、「イランは交渉に戻ることに抵抗はないが、『交渉のための交渉』を望んでいない」と強調したほか、「IAEAの定例理事会は前向きな雰囲気の中行われている」とした。
―イラン原子力庁のエスラミ長官は閣議で、「イランは平和的な核開発計画を法的枠内で透明性を持って継続することを重視している」「核開発計画で成し遂げられたことはイラン内部の尽力の成果であり、誰にもこの発展を止めることは許されない」と述べた。
―イラン外務省は14日夜、核合意をめぐる交渉のイラン代表団代表を務めるアラグチ外務次官を解任し、ライシ大統領の側近で強硬派の上級外交官アリ・バゲリ・カーニ氏を後任に指名したことを発表した。外務省は、同氏が交渉団の代表を務めるかどうかについては明らかにせず。
―米誌フォーリン・ポリシーによると、ガンツ・イスラエル国防相は「条件付きであれば、イスラエルがイラン核合意への(欧米諸国の)復帰と共存することは可能だ」「イランとの交渉が頓挫した場合には、米は真剣な一歩を踏み出すべきだ」「イスラエルの高官らは、米の(核合意)代替計画はイランに対する広範な経済制裁が含まれることを予想している」「イスラエルは、イランに対する武力行使を含む計画の準備するよう米政権に圧力をかけている」と述べたほか、イスラエルには軍事行動を含む「第3の計画」を有していること示唆した。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―イエメンの各地で生活状況・サービスの悪化に対する抗議デモが広まる中、南部アデン県クレーター地区で15日に治安部隊の発砲により2人死亡、複数が負傷した。これに先立ち、地元住民はロイター通信に対し、「14日夜に抗議デモ参加者の1人死亡、数十人が負傷した」と明かした。また、ハドラマウト県では1人死亡、4人が負傷した。
―UAEの支援する南部移行評議会(STC)のズベイディ議長は、イエメン南部の各県で「非常事態」を宣言し、「アデンの安全と安定を揺るがす意思を有する全員を鉄拳で制する」「各地での抗議行動が、政治的思惑や国の利益に資することのない方向へ向かい、混乱や破壊の発生に繋がることを警告する」と述べたほか、同評議会傘下部隊に対し「アデンの抗議行動へ『外部から送られてきた者たち』に容赦なく対処するよう」呼びかけた。
○ エジプト情勢
―ルネッサンス・ダム問題をめぐり、国連安保理は15日に声明を発表し、エジプト、スーダン、スーダンの3か国に対して「アフリカ連合(AU)の主催する交渉を再開して建設的且つ協力的に進めて、ダムの貯水・稼働に関する法的拘束力のある合意案の最終調整を全員が納得する形で行うよう」促し、各オブザーバーに対して「技術的・法的懸案事項の解決に向けた交渉の支援を継続するよう」呼びかけた。
―エチオピア外務省は、「安保理の声明に基づくいかなる要請も承認しない」と述べた。またエチオピア国連大使は、「安保理の声明には法的拘束力がないが、ダム問題をAUに付託した点では正しい立場を取った」「安保理は自身が同問題を扱うのに相応しい場所ではないことを確認した」とした。
―スーダン外務省は、「AU議長国のコンゴ民主共和国は、同国大統領府とAU委員会の合同専門家チームの用意した、ダム問題の当事者間の一致及び相違点をまとめた文書をスーダンに渡した」と述べた。マハディ・スーダン外相はコンゴ外相とハルツームで会談した後、「スーダンは、AUの主導する仲介の受け入れを改めて呼びかける」と述べ、「法的拘束力のある合意に達するために、各当事者には高レベルの政治的意欲が求められる」強調した。
一方でルトゥンドゥラ・コンゴ外相は、「コンゴ大統領はダム問題の解決に達するための取り組みを継続する」と述べ、ダム問題の当事3か国への自身の訪問は「交渉を継続すべく協議を行い、各国の立場を探るためだ」とした。
―エジプト大統領府は声明で、「安保理の声明とその拘束力のある性質は、交渉の成功に向けた取り組みを促し、法的拘束力のある合意に達するために、エチオピアを真剣な政治的意欲を持って交渉に参加させるものだ」として歓迎する意向を示した。
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―カタール機に搭乗した国連の代表団がカブール国際空港に到着した。代表団はアフガニスタン暫定政府と会談し、国連諸機関の代表団が同国へ戻り、とりわけ人道活動を再開することに向けた段取りついて協議する見通し。
こうした中、パキスタン首都イスラマバードを出発した国際赤十字委員会に属する航空機がカブール国際空港に到着。
―アフガニスタン暫定政府のハッカーニ内相代行はライオンズ国連事務総長特別代表(アフガン担当)らとカブールで会談した。タリバンの声明によると、ハッカーニ内相代行は国連代表団に対し「新政権の承認に向けた行動を取り、全ての制裁を解除してドーハ合意を実行するよう」求め、「タリバンはドーハ合意を順守して履行する」「我々は各国との相互尊重の関係を望んでいる」と述べた。
○ マグレブ情勢
―特になし
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―特になし
エリコの目
―アラブの春から10年、「政治的イスラム」は死んだのか?モロッコ総選挙でもその穏健さで政府を率いていた「公正発展党」が大敗し、イスラム政党は全滅の様相だ。米国が支持していたムスリム同胞団の退場やチュニジア、モロッコ他の経験の本質は、イスラム政党が真の民意、ニーズを捉えていなかったことにあるのではないか。大きく変化する世界情勢の中で、経済開発と雇用を充実できる政治でなくては、市民はそっぽを向く。思想・理念を政策として実行できるイスラム主義でなければならぬ。(アルマヤディーン・ネット)
<特記事項・気付きの点>
―特になし