アルジャジーラ・モニタリング
<ニュース・ヘッドライン>
23日0600JST「ミッドナイト・ニュース」
■ チュニジア大統領、議会停止の延長を決定。「大統領令で設置する委員会の補佐で政治体制の修正計画を策定する」と発表。ナハダ党は「憲法を廃止する措置だ」と拒否
■ スーダン統治評議会議長、「クーデターを阻止した」との発表に続き、「軍は国の後見者だ」と発言。内閣担当相は、「政府内で軍人に立ち向かう」と述べる
■ アルジェリア、自国領空からモロッコの民間・軍用機を締め出す。22日から実施
<特定関心項目報道ぶり>
○ 日本関連報道
―特になし
○ イラン・イラク・シリア情勢
―イスラエルのメディアは、「米イスラエル間で先週、イラン核合意をめぐる協議が秘密裏に行われた」「イランが核合意に近く復帰しない場合の代替計画が話し合われた」と報じた。協議は、オバマ米政権下でできた「イランをめぐるイスラエル・アメリカ戦略フォーラム」の場で、両国の国家安全保障補佐官、国防・外務両省の高官が参加してオンラインで行われた由。イスラエル側は、「核合意をめぐるイランとの交渉が膠着している限り、代替計画を進める必要がある」「イランが時間を稼ぎ、核開発計画を進展させていると感じるべきだ」と主張。対する米は、対イラン交渉の行き詰まりに懸念を示し、イランが近く交渉再開に応じなければ追加制裁を科す姿勢を示したという。
―イランのメディアは、革命防衛隊海軍がペルシャ湾で演習を実施したと報じた。「軍艦650隻が参加する大規模な演習」について、革命防衛隊幹部は「湾岸海域はイランの友人には安全な場所で、敵にとってはそうではない」「イランの部隊は湾岸における敵のあらゆる行動を監視している」と述べた由。
○ サウジ・イエメン・湾岸情勢
―米ニュースサイト「アクシオス」によると、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、「来週サウジアラビア、UAE、エジプトを訪問する」と明らかにした。補佐官は「3国はいずれも米のパートナーだが、バイデン政権下で関係が緊張している」と話した由。
○ エジプト情勢
―特になし
○ 中東和平(占領地情勢)
―特になし
○ 国際テロ・過激主義情勢
―アフガ二スタン・カブールで(先月29日に)米軍の無人機爆撃で死亡した人々の遺族は、「殺人者を裁き、公正を実現し、補償を行う」よう米政府に求めた。米国防総省は「イスラム国(IS)構成員と誤認して一般市民を空爆した」と誤爆を認めている。
○ マグレブ情勢
―チュニジア大統領府は声明で、サイード大統領が議会の停止と全議員の免責特権剥奪の延長を決定した、と発表。その詳細を政府公報に掲載した。「議会の全権限を停止し、大統領が立法権と行政権を行使する、7月25日発表のこの例外的措置を継続する」としている。また、「大統領令で設置する委員会の補佐を得て、政治体制を含む改革案を策定する」「立法は大統領令を通じて行う」とし、法案合憲性審査機関(IPCCPL)を廃止するという。
―上記発表によれば、サイード大統領は、大統領令によって立法を司る。条例の承認の他、司法と裁判、軍と治安部隊、メディアと報道、政党・組合・職能組織等の団体結成とそれらの資金管理に関する各種規定の整備を担う。また、地方当局、憲法関連諸機関、予算基本法も管轄するという。行政権に関しては、大統領は「国家を代表」し、「国の政策全般、基本的選択を律する」という。さらには「大統領は内閣を統括し、その議長を首相に行わせる」とし、内閣と協議の上で閣僚等の新任が可能としている。
―チュニジア各党は、大統領府の上記発表に直ちに反応した。ガンヌーシ「ナハダ党」党首は「憲法を廃止する措置だ」と批判。同党幹部は「大統領は『クーデターの疑い』から『露骨なクーデター』に移行した」と述べた。また、「チュニジアの心党」は、大統領の措置を「予謀の犯意あるクーデターだ」(ハリーフィ代表)と評し、「クーデターに対する国民的結束」を呼びかけた。シャウィシュ「民主潮流党」事務局長は、「憲法に背く者は正統性を失う」と指摘した。
―アルジェリア大統領府は、モロッコの民間・軍用全ての航空機および、モロッコの登録番号を有するが機体がアルジェリア領空に入ることを22日から禁じると発表した。国家安全保障会議(議長:テブン大統領)が、「モロッコとの国境情勢、モロッコによる挑発や敵対的行為の継続」について検討した上で決定した、としている。アルジェリアは8月24日からモロッコと断交中。
アルジェ特派員:アルジェリアの発表は、ジュネーブの国連人権理事会でモロッコ代表の発言を受けたもの。モロッコ代表が「レバノンのヒズボラがティンドゥフ(モロッコに接するアルジェリア西部の県)に存在し、ポリサリオ戦線を訓練している」と述べたことに、アルジェリアは「虚偽の発信を続けている」と反発している。この状況は、アルジェリアの関係筋には「西サハラ問題に絡み、人権理事会の場で懲罰を加える『反イスラエル同様のシナリオ』」と映る。アルジェリアは、対モロッコ断交と領空使用禁止に加え、自国からモロッコ経由でスペイン等にガスを輸出する「マグリブ・ヨーロッパ・パイプラン」の契約(10月末終了)の不更新も決めている。今後、更なる追加措置も予想される。
○ トルコ情勢
―特になし
<その他の重要ニュース要旨>
―スーダンのクーデター未遂をめぐり、軍人・文民で構成する同国統治評議会のブルーハーン議長(軍出身)は、「軍がクーデターを阻止した。軍は国の後見者だ」「革命のスローガンは、政治家たちが抗争する中で失われた」と述べ、政治勢力間の「権力争い」を非難。「ポストを追求する者はいるが、選挙や国民の心配事、その解決を語る政治勢力は見あたらない」と述べた。また、統治評議会のダグルー副議長は、「移行期に何度もクーデター未遂が起きるのは、政治家たちが国民の必要を無視していることが原因だ」と主張。「治安当局がクーデターを失敗させた」とし、「(アブドルバーキー)バクラーウィ少将が、将校22人や多くの下士官・兵士を伴ってクデーター未遂を主導した」と述べた。
―スーダン移行政府に参加している諸政党は、ブルハーン統治評議会議長らによる「政治勢力がクーデターの原因」との非難を拒絶。マフディ「ウンマ党」政治局長は、「政治家についての議長の発言は危険で容認できない」と述べた。「スーダン会議党」は「議長の主張は真実ではない」「スーダンの決定権は専ら国民にある」とした上で、「我が党は危機解決のために軍人たちと話し合う」と話した。
―スーダンのユースフ内閣担当相は、アルジャジーラの番組で、「ブルハーン統治評議会議長が政治的な分裂を理由として『軍が国を後見する』と語ることは、クーデターの歴史の繰り返しで、民主主義への移行期を脅かすものだ」と指摘。「我々非軍人の内閣の成員は、そのような(ブルハーン議長による)攻撃を容認せず、立ち向かう」と述べた。
エリコの目
―トルコは、カダフィの2人の息子を支援することで、カダフィ族を味方につけ、ハフタル元将軍らリビア東部勢力から同族を引き離してトルコが支援するトリポリのイスラム主義勢力の側に立たせようとしている。イスラム主義勢力はリビア国民の信を失いつつあり、年末の選挙が予定通り実施されれば、政権から滑り落ちるからだ。一方、エジプトは最近再度、東部勢力への支援姿勢を鮮明にしている。(アルマヤディーン・ネット)
<特記事項・気付きの点>
―特になし