2021年9月30日 (No.21183)

アルジャジーラ・モニタリング

<ニュース・ヘッドライン>

30日0600JST「ミッドナイト・ニュース」

■ チュニジア大統領、先の大統領令に基づいて、ナジュラー・ブーデン氏に新内閣の組閣を委任。議会のナハダ運動会派は、ガンヌーシー議長に議会再開に向けて必要な措置を講じるよう求める

■ 米、スーダンでクーデター行為が繰り返された場合の米議会の支援停止を示唆。スーダン首相は、全パートナーに移行期成功のための行動を求め、統治評議会議長は「軍部は移行段階を守るべく尽力する」と強調

■ 米統合参謀本部議長、下院委員会の2度目の公聴会で「アフガニスタンの戦争が終わったとは思わない」と述べ、「タリバンの政権復帰が過激主義を強化する」と強調

■ ソチでの露・トルコ首脳会談の後、トルコ大統領は同会談を「有意義だった」と評し、露大統領は「両国はシリアとリビアと南コーカサスで調整に成功している」と発言

<特定関心項目報道ぶり>

○ 日本関連報道

―自民党総裁選で岸田文雄氏が新総裁に選出されたことについて、世界の新聞報道を紹介するコーナーで、NYタイムズ紙の「日本は大きな諸問題に直面するも、新指導者は大胆な解決策をほとんど提示せず」と題した記事を紹介した。

○ イラン・イラク・シリア情勢

―パクプール・イラン革命防衛隊陸軍司令官は、「イランは、隣接する諸国の国境を変更することは認めない」「地域の地政学的変化は、イランの安全保障を損なうものとして拒否する」と述べ、「イラン国境でのいかなる間違った動きも、地域に新たな危機を引き起こすことに繋がる」と警告した。これより先に、アゼルバイジャン大統領は、イランが両国国境のナゴルノカラバフ地域付近で軍事演習を実施したタイミングに驚きを示し、「アルメニアが同地域を占領してから30年間、イランがこの地域で演習を行ったことはなかった」と述べていた。アゼルバイジャン当局は先月、アゼルバイジャンからの許可を得ずにナゴルノカラバフに入ったアルメニアに向かう途中のイランのトラックの運転手複数を拘束していた。アゼルバイジャン外務省は当時、イラン大使を呼び出して、抗議文書を手渡していた。

―プーチン露大統領は、ソチでエルドアン・トルコ大統領と会談し、「露とトルコは、シリアとリビア、南コーカサスで成功裏に協力している」と述べた。一方、エルドアン大統領は、この会談を「有意義なものだった」と評し、「トルコと露の間の経済・政治・軍事関係は大きな進展を見せている」と強調、「シリアの平和は、露・トルコ関係に直接的に結びついている」と述べた。

トルコ人政治評論家のグルカーン・ザンキーン氏の話(イスタンブールから):(上記の)会談後、声明は発表されていないが、漏れてきた情報によれば、いくつかの点で合意に至ったとされている。露は、昨年3月にトルコとの間で(停戦)合意を結んだにもかかわらず、今年の初めからシリアのイドリブに対して444回の空爆を実施した。露はこの手段によって「同合意は結んだが、露はイドリブもいつかはシリア政権の支配下に入ることを望んでいる」というメッセージをトルコに送ろうとしていた。今回の会談では、アレッポとラタキアを結ぶ国際幹線道路(M4=イドリブでアレッポ・ハマ国際幹線道路M5と交差する)に焦点を置いて協議が行われた。露は、M4をシリア政権の支配下に置くべきだとして空爆によってトルコ側に圧力をかけ、今回の会談で、声明は出されていないものの、この件について(恐らく、昨年の両国合意の規定通りにトルコ軍と反体制派部隊をM4の北側に撤収させM4を再開させるという内容の)合意に至ったものと見られる。これに対し露は、トルコに何らかの見返りを提供する必要がある。少なくとも一時的に露の空爆は停止されるだろう。

○ サウジ・イエメン・湾岸情勢

―ムハンマド・サウジ皇太子は、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)と会談し、イエメン危機終結のためのサウジ提案を確認した。国連監視下での停戦や危機の政治的解決に向けた国連主導による3つの根拠(安保理決議2216、GCC提案、国民対話の成果)に基づく当事者間協議の開始を含むもの。米とサウジは、「ホウシー派が正統政府との交渉に誠意をもって参加することが重要だ」との点で一致した。またサリバン補佐官は、「米は、イランの支援による攻撃を含む脅威に対するサウジの防衛への支援を約束する」と強調した。

―イエメンでは、通貨リアルの未曽有の下落を受けて、各地に緊張が広がっている。生活状況の悪化に抗議するデモが続くタイズで、「この2週間で最も大規模で激しい」とされる反政府デモが行われ、参加者らは「無力な政府」の退陣を求めた。デモ隊と警官隊が激しく衝突した。アデンでは、デモ隊がUAEの支援を受ける南部移行評議会の部隊から発砲を受け、死傷者が出た。一方、マアリブでは政府軍とホウシー派の戦闘が激化。

○ エジプト情勢

―シーシー大統領は、カイロでサリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)と会談し、「ルネッサンス・ダム問題での交渉路線にコミットする」と確認した上で、「エジプトの水の利益が損害を受けることは容認しない」と強調した。一方、サリバン補佐官は「米は、全当事者の水と開発に関する権利を守る形で、エジプトの水の安全保障に尽力する」と改めて確認した。リビア問題については、双方は「次期選挙の準備や外国軍・傭兵の問題、国家機関の統一に関し、国際パートナーとの協調を強化する」ことで一致した。

○ 中東和平(占領地情勢)

―ロイター通信が米高官の話として伝えたところによると、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、カイロでのエジプト側との協議の際に「バイデン大統領は、パレスチナ問題の解決策として、2国家解決案を支持する」と確認した。

○ 国際テロ・過激主義情勢

―オースティン米国防長官は、下院軍事委員会のアフガニスタン戦争に関する公聴会で「米は、崩壊した先のアフガン政府の腐敗の深刻さと指導力の弱さを理解することができなかった」と述べた。一方、ミリー統合参謀本部議長は「タリバン政権の復活は、アフガニスタンでの過激主義を強化することになるだろう」とし、「タリバンは過去も現在もテロ組織であり、まだアルカイダと繋がっている」と述べた。また、マッケンジー米中央軍司令官は「米は今もアフガニスタンの領空に入ることができる」とし、「アフガン戦争はまだ終わっていないが、米はもはやその当事者ではない」との見方を示した。

―タリバンは、声明で「アフガニスタンの領空を侵犯せぬよう」米に警告した。ムジャーヒド・アフガン職務執行政府情報省次官は、「米の無人機複数が最近、アフガン領空に入った。これは国際規則違反であり、ドーハ合意での約束違反でもある」と述べ、この「アフガン領土の一体性に対する侵害」を非難し、米に「将来的に米に悪い結果がもたらされることを防ぐため、アフガニスタンに敬意を払うよう」求めた。

―WHOは、「アフガニスタンの保健衛生部門は、今年末までに1億ドル以上を必要としている」とし、「国際機関が同部門への支援を停止すれば、同国内の2,200の病院でサービスの全部または一部が停止する可能性がある」と警告した。

―カタールは、個人7人と1団体を「テロ支援者・団体」に指定した。カタール国営通信によると、検事総長が発表したこの決定は、米との協力に照らして行われたものであり、「カタールが義務を履行し、テロとの戦いに絶え間ない努力を捧げ、国内法と国際協定、テロ犯罪との戦いに関する国連安保理決議を実施する枠組み」の中で下されたものとされる。

○ マグレブ情勢

―チュニジア大統領府は、「サイード大統領が、先の大統領令に基づいて、ナジュラー・ブーデン・ラマダーン氏に新内閣の組閣を委任した」と発表した。同大統領は、「同氏は(同大統領が発表した)特別措置の終了まで首相を務める」とし、「同氏と共に汚職と混乱の根絶に努める」と述べた。女性が首相に指名されるのはチュニジア史上初めてのこと。同氏は1958年カイラワーン県アシーラ生まれの大学教授で、高等教育省で世銀プログラムの実施計画を監督していた。同氏には国家機関の運営や政党・政治活動の経験がないとの批判もあるが、(組閣を急ぐよう求めていた)チュニジア労働総同盟や政治諸勢力は組閣が要請されたことに安堵を表明している。

―チュニジア議会のナハダ運動会派は、ガンヌーシー議長と議会事務局に「会合を開き、(大統領による)『反乱』の影響に対処(して議会を再開)するための措置や行動を取るよう」求め、議会内の各会派と国民勢力に対し「共和国と民主主義の価値観を守り、国を分裂の危険や社会平和への脅威から守るために、対立を越えて団結するよう」訴えた。

○ トルコ情勢

―特になし

<その他の重要ニュース要旨>

―フェルトマン「アフリカの角」地域担当米大統領特使は、ハムドゥーク・スーダン首相と会談し、「米はスーダン暫定政府が移行期間を安定化できるよう支援する」と確認した上で、「スーダンでクーデター行動が繰り返されることが、米議会のスーダン支援停止に繋がる可能性がある」と指摘した。一方、ハムドゥーク首相は「移行期の全パートナーが、スーダンの民主化・民政移管を成功させるために結束すべきだ」と強調した。

―ペルテス国連スーダン統合移行支援ミッション(UNITAMS)代表は、暫定統治評議会メンバーのシャムスッディーン・カッバーシー氏との会談後、「スーダン危機の当事者間で、緊張緩和に向けた真剣な取り組みが行われている」と確認し、「今回の会談で、軍人・文民間の対立を克服するための包括的対話が必要だとの点で一致した。解決は対話を通じて成し遂げられるものだ」と述べた。

―ブルハーン・スーダン暫定統治評議会議長は、ノルウェー外相との電話会談で「軍部は、スーダンの民主化を支援し守るべく尽力する」と強調し、「自由で公正な選挙を通じた民主化を成功させるために首相や政治諸勢力と協力していく」と述べた。これより先に、ノルウェーのスーダン担当特使がハルツームでハムドゥーク首相と会談し、「ノルウェーは、スーダンの民主化・民政移管を支持する」と述べていた。

―スーダンの首都ハルツームで、共産党の呼びかけにより「暫定政府における軍人と文民の共同を終わらせるよう」求めるデモ行進が行われ、参加者らはこの共同を「流血の共同」と評して反対する声を上げた。

エリコの目

―欧州委員会の29日の公式発表によると、2014年以来、地中海を渡って(違法に)欧州に入国しようとして死亡した移民の数は2万人を超えた。同「新ヒューマン・トラフィッキング対策報告」は、今年に入ってからの犠牲者数が1,369人に上ったと伝えている。2021年上半期(1-6月)の死者数(1,146人)は前年比で2倍以上、渡航を試みた人の数は58%、それぞれ増加している由。(アルクゥドス・アルアラビー紙)

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<特記事項・気付きの点>

―特になし

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